毒ネズミ(改)
それからの俺は、その納屋で、昼間は昼寝、夜になって
縄張りのパトロール。そして気が向いたら、ネズミを遊ぶって日々が
続いた。ごはんはもらってるので、ネズミは、気が向いたときしか
食べない。まあ、きっちり退治はする。
ある日、俺は納屋に戻ったとき、異常なニオイを感じた。
ネズミが数匹、納屋の床で死んでる。
なにかおかしい・・そう思いながらも、ちょうど小腹のすいた俺は、
近くにあった、ネズミの死骸をパクリと味見した。
しまった!!これ あの頭の痛くなるニオイのもとかも。
飲み込まずに、すぐに吐き出した。
でも、遅かった。俺は、すぐ頭がグラグラした。横になっても、強烈な
吐き気で、オエっと何度も胃液を吐いた。
俺は水を飲みに外に出ようとしたが、元気がでない。
ばあちゃん、おばちゃん、俺、どうしたんだろう?
「まあ、チャトラちゃん、どうしたの?具合悪い?。
あ、ネズミの死骸が。これ、チャトラちゃんの仕事じゃない。
噛みあともないしね。
義母だわ。きっと殺鼠剤をまいたのね。言ってくれないと。危ないのに」
おばちゃんは、僕を抱いて、家の中に入れた。
玄関のところに、ゲンボールに布を敷き、そこに僕を、そっと下した。
俺は、もうダメかもしれない。
足先の感覚がなくなってきた。目も開けられない。
かろうじて、耳は聞こえる。おばさんと、おばさんより年上の女の
言い合う声が聞こえた。
「義母さん、殺鼠剤を使うときには、あらかじめ言っておいてください。
ネコが、薬で死んだネズミを食べたのか、死にそうなんですよ」
「はん。ネコだっていうのに、グータラねてばかりじゃないか。
やっぱり、オスは役にたたんね」
「ネコだけじゃないですよ。もし息子や娘が間違って納屋に入ってら
って、考えなかったんですか?」
おばさんの口調は、いつもと違って、怖い。
そう、ちょうど、母親猫が威嚇すると、ああいう感じになるな。
まだ、争いは続いてた。おばちゃん、お願いだ。
水を飲ませてくれ。
俺の必死の願いが通じたのか、おばちゃんは、お椀に水を入れて
もってきてくれた。でも、残念。もう、俺、立ち上がれないよ。
体だるいし、もうどうでもいいやって気分だ。
「まあ大変。動物病院へ行かないと」
「母さん、ストローで水やってみたら」
おばちゃんの声のあとに、男の子の声が聞こえた。
ここんちの息子かな。。まだ小さい感じだ。
これはたしかに、あの”危険なネズミの死骸” に、近づいたら危ぶない