納屋で休む2(改)
昼間は、グータラな俺も、夜は働き者さ。
まず、爪を木の柱でといで、ウォーミングアップ。
納屋の中の、”近づいてはいけない棚”をよけて、歩き回った。
途中で、ネズ公を追いかけた。
別にお腹が空いてるわけじゃなかったけど、あいつら、チョロチョロ動く
から、俺も、じっとしてられないんだ。
そのあと、例によって、縄張りのパトロール。
遠くに来たと思ったけど、ばあちゃんち が小さくだけど、見えるくらいなんだな。
途中、かわいい女猫に合ったけど、向こうは家の窓から、こちらを見てるだけ。
俺はみえるように、彼女にアピールしたんだけど、何が気に入らなかった
のかな?威嚇された。それでも、窓の側にいると、彼女は窓からはなれた。
ちぇ、やっぱ、茶トラのまだらは、流行おくれの毛色なのか?
(ばあちゃんは、”茶トラのネコは、かわいい”ってほめてくれたけど)
俺は、自分の縄張りの境界を歩く時は、注意深く歩く。
で、素知らぬふりで、境界を広げていくんだけど、そこで”敵”に出会った。
と、思ったんだけど、違った。
俺が「お前、俺の縄張りになんの用だ?」
って質問に、「僕、迷子みたいなんです。僕の家、どこでしょう?」
だとよ。黒白まだらの男猫は、もう、人でいうと若者猫だ。
まったく、迷子かよ、近頃の若いもんは。
俺は、その猫のニオイを嗅いだ。
わかんねえな、でも、かすかに、ばあちゃんちのニオイがするから、あっち
から来たのは、間違いないだろう。
迷った時は、元来た道を戻るが、鉄則なんだ。
「お前、迷わない目印、つけながらこなかったのか?」
「そうするもんなの?でもぼく、こわいボスに追いかけられて、
そんな余裕なかったから」
縄張り争いは男の仕事だ。でも、こんな弱っちいのを、迷子にさせるような
ヤツは、後で懲らしめてやる。
俺は、一晩かけて、その”マダラ”をばあちゃんち近所まで、送っていった。
飼いネコのようだけど、俺はマダラとは初対面だし、まして家を見つけるのは無理、
俺に出来る事はここまでだ。
不安そうな”マダラ”をおいて、俺は、寝床の納屋に戻った。
やれやれだぜ。
朝、おばさんが 来てくれた時には熟睡してた。
朝ごはんをもってきてくれたのに、気づかなかった。
お礼も言わず、ちょっと後ろめたかったけど、しっかり頂いた。
食べるときに食べておかないとな。




