納屋で休む 1(改)
雪はとっくにとけているのに、寒い。
俺は、ばあちゃんちを、出て来たことを少しだけ後悔した。
雨でもない霧でもない、小さな雨が、俺の体を濡らしていく。
こんな、汚いナリになったけど、俺は濡れるのが大嫌い。
それに、体が濡れると、後で具合が悪くなることもあったからだ。
俺は、とりあえず、ぼろっちい小屋に入り込んだ。
おいしそうな”ネズミ”のニオイと、鳥のフンのニオイ。
それよりも、なにか、ノドがイガイガするような、頭がクラクラするような
ニオイがする。
まあいい。とりあえず、天気がよくなるまで、ここでじっとしてよう。
俺が、小屋の隅においてあった木箱に入り込み、ウトウトしてると、
ガラっと戸があき、明るくなった。
俺は、ちょっといるつもりが、一晩、ここで寝てたらしい。
「あらまあ、ネコだわ。大きい事。ここでネズミの見張り番してて。
今、朝の残り物を、もってくるから、まっててね」
顔も隠れるような大きな帽子をかぶり、ズボンをはいていた。
その女性は、ばあちゃんより若い”おばさん”
足は、ばあちゃんが庭仕事をするときに履く”長靴”を、そのおばさんは
履いていた。戻って来た時、じっくり観察した。
”悪い人じゃなさそうだ”って思ったのは、手に俺のためらしい、ご飯を
持ってきたからかもな。
「奮発して上に鰹節かけたから。ちゃんと納屋の留守番、お願いね。
それと、あそこにあるのは、農薬と除草剤だから、近寄ったらダメよ。
わかった?」
人間の言葉は殆どわからない俺だ。
鰹節って言葉と、留守番。
あと、おばさんが、奥の棚を指さして”ダメ”っていうのが、わかった。
指さしたのは、あの頭がクラクラするニオイの元だ。
そばによっちゃいけないのは、わかった。
いわれないでも、あんなニオイの側にはいきたくないけどね。
留守番っていわれたけど、ちょっとだけなら、外に行ってもいいか。
日向ぼっこしないと、俺らネコは、栄養不足になることもあるからな。
外は、いい気持・・じゃなかった。
ゲホゲホゲホ。思いっきりむせた。頭がクラクラ。
なんか白い粉を、あのおばさんまいてる。おばさんは大丈夫なのか?
俺は、このニオイ(白い粉からくる)が、しない所を探した。
が、結局、納屋の中が一番ってのがわかって、一日、ウダウダすごした。
夜も、もちろん、おばさんから、ごはんをもらった。




