ソーセージとチクワをもらう(改)
”チャトラちゃん、中に入ってきた理由は、知らないけど、
病院は楽しい処じゃないのよ。
ほら、ソーセージ、少しあげる。又、スキを見て 外へ出るのよ。素早くね。
まさかと思うけど、誰かに会いにきたのなら、
忠犬ハチのように、外で待ってると会えるかも。
じゃあ、車に気を付けてね”
ベッドで一緒に寝た女性が、別れ際に俺への、言葉。
言ってる事は、よくわからなかったけど、くれたピンク色のソーセージは
おいしかった。
その後、ドアを女性が開けてくれ、俺はすばやく病院から脱出した。
建物の側にある植え込みに隠れ、出口を振り返って見たが、
警備員たちは、俺を追ってこないようだ。
そういえば、さっきほんの一口が、今日の最初で最後の、メシになった。
”人間病院の警備員は危険”
ニート君を探すためとはいえ、中には入る事は出来ない。
さあ、朝までどこかで休める所を探さねえと。
街中ってのは、大きな建物が一杯あるが、ネズミの住んでいそうな
木で出来たボロイ納屋がない。
フと横を見ると、荷台に乗れそうなトラックがある。
ゴチャゴチャいろいろ物が置いてあって、寝るには快適そうだが・・・やめた。
もともとは、敦子おばさんの所で、トラックの荷台にのったのが、
この遠征の始まりだったっけ。
夜も更けてきて、人っ子ひとりいなくなると、川の音が聞こえた。
これは、俺が縄張りにしてた場所の側をながれる大きな川の音。
こっからは、お日さんの出る方向にあるようだ。ちょっと遠いかな。
敦子おばちゃんやばあちゃんは、元気なんだろうか・・
寝場所も見つける事なく、ウロウロしてるうち朝が来た。
体が氷のように冷たくて、硬い。腹は減りすぎて、めまいがする。
歩くうちに、明るい店 コンビニってやつを見つけた。
(俺も、ばあちゃんちに来る前は、よくこういう店にたむろしてた。
親切な人間が、たまにエサをくれるからだ)
とにかく、何か食べるものが欲しい。
店の軒下で、手足をかくし、ジっと座って待つ。寒いし腹ペコだけど、
できるだけ、やさしい顔で営業スマイル。ここでは、気の強い猫は人間から嫌がられる。
いい人間は いるもんだな。
仕事帰りらしい若い女性が、俺によってきた、
寒いのに、ピラピラの白い薄い服に毛皮付きのコート。
毛皮は、これは、本物じゃないようだけど、
気の強い”サビ色猫”の毛のようだ。
ねえさんが、俺に チーズ入りチクワを一本くれた。
残りは、自分で食べてる。化粧のニオイをさせ、疲れ切った顔だ。
それに目の白い処が黄色い。こういう人間は大抵は、体の具合が悪い事が多い。
「ありがとさん。助かったよ。餓死する所だった。ところで、ねえさん、
どこか、具合が悪くないのかい」
俺は、精一杯、感謝といたわりの気持ちを込めて聞いたが、
半分しか通じなかった。
「はいはい、どういたしまして、おいしかった?さてと、帰って寝るかな。
まったく、一晩中、酔っ払いのオヤジ相手にするのはともかく、もう、
お酒は、いやだわ。この商売向いてないかも。他に仕事もないんだけどさ。
ね、猫、お酒飲まないで接待する、何かいい案はない?」
何か聞かれた口調だが、なんだろう、考えてみたがわからん。
「キャハハ、首、かしげてかわいい。ま、自分で考えてみるさ。
じゃね、猫。車に気を付けてね」
そういって、ねえちゃんは帰って行った。
”車に気を付けて” この言葉は、覚えた。本当に気を付けなければ




