病院に侵入(改)
俺は、夜、植え込みの陰に隠れて、その人間病院を観察した。
白い車がけたたましく入ってくることもあるが、夜でも人間が
よく駆け込んでくる。扉は、両開きで、立つと自動的に開く。
よし、今夜決行しよう。
夜がふけて、車通りも途絶えてきたような時間に、ある家族が
病院に入る処だ。家族4人のようだけど、男の子が激しく泣いてる。
今だ。病院の人も周りの人もその声に 気を取られてるすきに、
サっと 建物の中に入り込んだ。
よし、後は、ニート君を探すだけと思ってると、
警備員が追いかけてくる。俺は追われるまま、2階に上がって
すぐそばの部屋に入り込んだ。ベッドが6つあって、人が寝てる。
「猫が入ってきたなんて、お前の見間違いじゃないか?」
「いえ、私はしっかり見ました。チャトラの猫が、さっきの夜間救急の患者さんと一緒に入ってきたんです。2階に上がっていくのをみました」
ベッドの下の隅で、俺は体を限界まで小さく縮めて、息をひそめた。
人間が二人、階段を上がってる足音が聞こえる。
破裂しそうになるほど、速くなった心臓の鼓動。
周りに聞こえるんじゃないかってくらい、大きな音を立ててる。
みつかったら、やばいかも。どうも好意を持った人間じゃなさそうだ。
いっそ、部屋から出て駆け足で逃げるか、それとも、
ここでいい隠れ場所を探すか。
頭の中は、パニくりかけたその時、俺はタオルのような物に包まれ、
抱きかかえられた。
しまった。こっちにもいたのか?
俺はくるまれたまま、ベッドに入れられた。
「ちょっと、静かにしててね。でないと、警備員に捕まったらひどい目にあうかも」
敦子おばさんよりは、年若い声だ。それに足に怪我をしてるようで、左ひざが
白い布でグルグル巻きにされてる。
この女性は、なんのつもりで、俺をベッドに引き入れたんだ?
俺は逃げようと思ってる矢先に、警備員とやらが部屋の見回りに来た。
女性は、布団で寝たふりをしてる。横には俺がいるんだけど。
ヤツラは、犬のように執拗だった。
ライトでベッドの下をくまなくてらし、寝てる人達はその光で、目が覚めてしまったようだ。
「なんなの、今頃。何かあったの?」
起こされた人達は、好奇心でワクワクしてるように、きこえるんだが。
「すみません。この部屋にチャトラの猫が入ったのを、見たもので」
「猫?へ~~。おもしろ。でもいないわよ。もしかして、
生きてる猫じゃなかったりして」
「きゃ、やめてよ。怖い話。眠れなくなるじゃない」
騒ぎを聞きつけて、敦子おばさんくらいの女性がかけつけてきた。
「警備員さん、そのライト明るすぎます。患者さんの睡眠の邪魔になりますから。2階は、私が一緒に このペンライトで探しましょう。
音を立てないでください。みなさんも、猫を見かけたら、詰所に連絡してくださいね」
へ!どんなに音を立てないようにして歩いても、猫にはまるわかりだ。
耳もいいし、気配を察知するのも得意だからな。




