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白猫と俺(改)

「夏江さん。この猫かね。預かってるってのは。

カギシッポ猫だ。お金を集めてくれるぞ」


そうか。おばさんは、夏江さんというのか。話し相手は、隣の家の人だ。

もっとも、隣といっても、かなり離れてるけどな。

つい三日前ほど、スキをみて外に出て遠征したとき、畑で見かけた。

家に帰った時、夏江さんは、かなり心配してたらしく、俺はおばさんに、

しっかり説教された。”あんたは大事な猫なんだから云々・・”と


「チャトラさんは、ご主人を待ってるんです。

消防署にもこの間、飼い主と思われる方に

 迎えにいてくれるよう伝言を頼みました。」

「それにしても、大きな事故だったな。なんだか、大型トラックの運転手が

運転中、心臓発作で意識不明になり、対向車線にとびだしたとか。」

「ええ、そう聞きました。残念な事に、トラックの運転手の方は、亡くなったそうです。

衝突された車の家族の方たちは、若い方を除いて退院したそうです」


そういうと、夏江おばさんは、すまなさそうな顔をした。

それは、俺に”迎え”が来ないからだ。

おじさん、おばさんは、俺の事どころでないのかもしれない。

ニート君は、かなりの大けがなのか?


夏から、木の葉が色づいてくる季節になり、俺は待つ事に、イライラしだした。

夏江おばさんは、俺をあまり外に出してくれない。

わかってる。思いやりからだって。迎えが来たときに、すぐ俺を渡せるようにだ。

だけど、季節のせいか、俺は無性に恋人がほしい。外に出られないので

余計 ストレスがたまる。大声で”外に出してくれ”って何度もないた。


その夜も、イラついて、家中で爪とぎして、気分を紛らわしてた。

おばさんは、とっくに寝てる。

そこに俺に後ろから声をかけてくる 女猫がいた。


「こんばんわ、チャトラ。ちょっと落ち着いて。

あーあ。ソファをこんなにしちゃって。」

「だれだ。お前は猫のようだけど、何かへんだ。第一体が透き通ってる。

そうか。おまえが病気で死んだ”前の猫”の、”ソラ”だな。おばさんが話してくれた」


その猫は、白猫で目がサファイアのように青い。美猫だ。

ただ、恋人がほしくても幽霊猫は、俺の趣味じゃない。


「チャトラ。飼い主を待ってるんだって?それって、迎えがきたら

ここからいなくなるって事?」

「そうだな。俺はニート君と家族を、町へ行くのを止められなかった。

責任も感じてるし、それに一緒にくらしてる青年は、頼りなくて

俺は心配でしょうがないんだ」


俺は、白猫ソラに 同居していたニート君の生活と、俺の役目を説明した。

彼は、俺に話をすることで、少しか気分がよくなって、食欲も出てきたんだ。


「それはそれで、厄介ね。おかあさん。私の夏江母さんは、

明るい母さんだったけど、私が死んだ後、しばらく泣き暮らしてた。

だいぶ元気にはなったけど、まだ、寂しそうに写真を見たりしてるでしょ」


そういえば、棚の上には、この白猫ソラの写真があったな。

おばさん、ソラの事、忘れられないんだ。


「もう私も心配でね。本当は虹の橋のたもとで待ってなさい

 って言われたんだけど

母さんが 寂しくて泣いてるじゃないかって、心配だった。

だから、ここにいるの。私の姿は母さんには見えないけどね。

あなた、チャトラがここにいてくれれば、お母さんも少しは

寂しくなくなるでしょうけど、でも・・・」

「でも、俺は迎えがきたら、ここを出ていくから」

「そうなのよね。それなら、あなたがいなくなった時、

母さんまた寂しがるかも。

いづれ出ていくつもりなら、早く出て行って。」


かわいい顔をしてるけど、俺より年上なんだろう。上から目線にカチンときたが

ハッキリものをいう性格は、キライじゃない。ソラちゃん。

幽霊じゃなかったら、あんたの召使になってやってもいいんだけどな。


「迎を待たずに出てけと・・」

「まあ、お母さんが寂しくないよう代わりの猫が来れるよう、

私も努力するし。心配しないでいいから」



この家は居心地がよかったよな。

暖かくて、ゆっくり寝る場所があって、おいしい食事も出た。

おばさんは、俺が失敗しても怒らなかったし

ソラちゃんの一言は おばさんを思えばこそだろう。

おばさんには、とても感謝してる。

でも、迎えがきたら 俺はかならずここを出ていく。

その後、あの優しいおばさんは、寂しい気持ちになるのも俺には予想できた。

世話になったからこそ、そんな思いはさせたくない。


その夜のうちに俺はおばさんの家を出た。

ソラちゃんが秘密の抜け穴を教えてくれた。

お礼をいっていくのが筋ってもんだろうけど、おばさんの顔をみると、俺の決心が鈍る。



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