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今回の内容に人が亡くなる描写があります。不快に思われる方は注意ください。
それからの美也子との日々は宝石のきらめきのような日々であった。
いずれ年を経て仕事をリタイアしたら、どこに住もうか、何をしようか、いっそ世界一周旅行なんていうのもいいね、とよく話し合い笑いあった。
だから、それは本当に突然のことだった。
もうすぐ還暦を迎え、仕事も一段落する。
具体的な計画を練ろう、と相談していた、その矢先。
美也子が病に倒れたのだ。
病床の美也子は、こんなはずじゃなかったのにね、と苦笑した。
ずっとあなたを守っていってあげると、約束したのに。
せめてそれだけは絶対にと、そう強く思っていたはずなのに。
美也子は泣いてはいなかった。
しかし、その震える肩は消えそうなほど小さく見えた。
私は美也子の手をとって言った。
美也子は昔も今もずっと私を守っていてくれている。
そして、これからもずっと。
弱い私を、美也子がいつも支えてくれた。
いつもそばにいてくれた。
その存在が、私に強さをくれた。
ありがとう。
こんな私のそばにいてくれて、力をくれて。
本当に、ありがとう。
たとえ。
たとえ、この手を直にふれることが出来なくなっても。
ずっと君は私とともにある。
この君と過ごした記憶も。
この想いも。
ずっと、いつまでも、消えることも薄れることもない。
美也子。
美也子。
私の美也子。
君をとても愛おしく想う。
君に出会えたことに、感謝する。
君といられたこの時間に、君がこの世に存在してくれたそのことに。
美也子。
君と私はずっと一緒だ。
これまでも。
これからも。
永遠に……。
私に手をとられた美也子は、静かにほほ笑んだ。
それはこれまで見た中で、本当に、一番美しい美也子の笑みだった。
それからしばらくして、美也子は永遠の眠りについた。
次回で最後です。