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ラストスパートです。

 大学は別々になった。


 美也子は英文科に進学し、英語以外にも範囲を広げて勉強に励んでいるようだった。


 明るく優しい美也子は社交性もあり、性別を問わず友人もたくさんいたが、何かある時にはいつも私を優先してくれたので嫉妬をすることはなかった。


 私は一年遅れ、美也子とは違う大学へ進学した。


 将来の職業にも影響するので迷いもしたが、選んだのは経済学部だった。


 私が将来海外を渡り歩くかもしれないから自身は語学を学ぶ、という美也子の先見の明は確かだった。


 大学卒業後、商社へ籍を置くことになった私は本当に海外を転々とすることになったからだ。 


 学生時代はよく学びよく遊んだ。


 旅行にもよく行った。


 美也子の姿を残したくて、カメラの勉強までした。


 写真に映る美也子は、いつも笑顔だった。


 それらの写真は、今でも私の大切な宝物となっている。 


 大学卒業後、美也子は通訳や翻訳の仕事をしていた。


 追って私も学生を卒業し、社会人となる。


 美也子にプロポーズをするタイミングを私は計っていた。


 できればすぐに申し込みたい。


 正直、学生結婚でもよかったくらいだ。


 だが、美也子の将来に責任を持つということは、実際に勤めてその基盤をつくりあげてからの方がいいのだろうか。


 そもそも美也子はこんなことでうだうだ迷う私の求婚にだくをくれるのだろうか。


 情けない男には将来を託せないと思ってはないだろうか。


 美也子に見限られたら、私はどうなるのだろう。


 口にしてないだけで、本当はもう嫌になってるのではないか。


 後から思えば滑稽でしかないことだったが、その頃私は本気でそう考えていた。


 一度マイナス思考に陥ると、なかなか浮上しない、私の悪い癖だった。


 そもそもそんな私が心配だと言ってくれたのが、美也子との最初の始まりだったのに、私はすっかりそのことを忘れていた。


 しかし、美也子はそんな私をちゃんと見ていてくれた。




「学校卒業したら、結婚しようか」


 そう言い出したのは美也子だった。


 何てことはない、カフェでお茶をしながら何の気負いもないふうに、美也子はそう言った。


 まるで、「今日は何食べよっか」と尋ねるくらいにあっさりと。


 とっさに返答できないでいる私に、美也子はにっこりと笑った。


「式は簡単でいいよね。二人で一緒にいることが大事なんだもの。後悔はさせないわよ。きっと、何があっても私が守ってあげるから」


 そう、男前なセリフをさらりという。


 それがとても、美也子らしかった。


「あなたに、幸せな家庭を約束する。だから、結婚しましょ?」

 

 私は一も二もなく頷いた。


 美也子は光輝くような笑みを浮かべた。




 私はあの日のことは一生忘れない。


 あの日の美也子の言葉、美也子の笑顔。


 すべてが輝かしく、美しく、素晴らしいものだった。 


次回鬱展開注意。

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