5
お待たせしました。
同じ高校に通って美也子と同じ環境で生活できるようになった。
もちろん学年は異なるのであまり一緒にいられる時間はとれなかったが、それでもこれまで知らなかった美也子の一面を見られることは、私の喜びであった。
美也子は学生生活を満喫しているようであった。
生徒会にも所属し、学校の為になる活動も精力的にこなしていた。
男女問わず友人も多くいる。
面倒見の良い美也子なら当然のことだろう。
不思議と嫉妬するような気持ちにはならなかった。
あの美也子の人柄であれば、他人に慕われることは当たり前のことであるから。
美也子は人を眩しく照らす光のような女性だった。
私にも多くの人が集まってきたが、美也子と違い私のは慕われるほどの中身がない。
見た目や成績の優だけを見て寄ってくる人間には興味がないので、あたりさわりがない程度にかわしていた。
それを見て、美也子は困ったような顔をして言った。
「やっぱりあなたは、自分に自信がないんだね」
自信?
自分が優秀であるという自覚ならあった。
親の遺伝子を受け継いだ見た目と、一度聞けば大体理解できる頭脳、恵まれた身体能力。
ただ、その内面はとても他人を惹きつけるものなどないという、平凡で矮小なものであるという自覚も。
私は、私の中身はつまらない、面白みのない人間でしかない。
「あなたは決してつまらない人間なんかじゃないよ。私はちゃんと知ってるから」
そう、君はそう言ってくれる。
美也子がそう思ってくれているだけで、私は十分だった。
美也子、君がそばにいてくれるだけで、私はそれだけで幸せだ。
私が繰り返し「君がいればそれだけでいい」と言うたびに、美也子はいつも困ったような、嬉しそうな、だけれどもそこか寂しそうな顔をしていた。
美也子、君は本当はどう思っていたのだろうか。
また、高校に入ってから美也子は英語の勉強に力を入れるようになった。
よく参考書やノートを広げている。
よっぽど好きなんだね、と尋ねた私に、美也子はだってあなたは優秀だから、と応えた。
意味がわからなくて首を傾げた私に、美也子は言った。
「だって、あなたは頭が良くて、将来どんな仕事に就くかはわからないけど、もしかしたら海外転勤とかある職に就くかもしれないでしょ。私、あまり成績はよくないから今から真剣に勉強しておかないと。万が一そうなった時、日常生活に支障が出ないようなくらいにはしておきたいじゃない?」
私は驚き、歓喜した。
美也子は、将来私と一緒になることを前提に考えてくれていた。
実際に美也子は私の妻となるわけだが、早くからそう思っていてくれたことに、私は望外の喜びを感じていた。
美也子、私の愛おしい妻よ。
誰もが君に惹かれるなか、君が選んでくれたのが私だということに、私は誰に、何に感謝を捧げればいいのだろう。
美也子、誰よりも、何よりも、君を愛おしく想う。
次回もお願いします。