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書いていて砂を吐きそうになる……。
それから私は本当に週に一度、美也子と会うことになった。
待ち合わせをしては一緒に図書館に。
公園に。
プールに。
買い物に。
サイクリングに。
映画館に。
川に。
美也子といて、退屈するということは決してなかった。
それどころか、ハラハラすることも多々あった。
図書館へ行けば、美也子が大騒ぎして注意された。
公園に行けば、美也子が突然木登りをしだして、途中で落下しかけ大騒ぎになった。
プールに行けば、驚異的な肺活量で潜水時間が長すぎおぼれたのかと思って肝を冷やした。
買い物に行けば、その買い物センスから美也子の独特な趣味がわかって苦笑いした。
サイクリングに行けば、どんどん知らない方向へ進んでいき道に迷い途方に暮れた。
映画館に行けば、恋愛ものでもホラーでも関係なしに馬鹿笑いするので恥ずかしくて身を縮ませた。
川に行けば、未知の生物を発見するのだと深いところまで入って行こうとするので止めるのに忙しかった。
私は美也子に振りまわされていた。
しかし、疲れたとか大変だと思ったことはあっても、嫌だとは一度も思わなかった。
美也子はいつも笑顔だった。
いつも笑顔を私に向けてくれていた。
いつの間にか、私の中からモヤモヤするような息苦しい感覚は消え去っていた。
美也子がそれを消してくれたのだ。
無謀で強引で、無茶ぶりがひどくてハチャメチャな少女。
だけど、誰よりも明るくて優しい、美也子。
いつの間にか、私は美也子を好きになっていた。
人の感情はとても不思議だ。
それはいったいどこからくるものなのだろう。
最初は渋々付き合っていただけなのに。
気がつけば自分から進んで君を追いかける自分がいる。
美也子、君を好きになった私がいた。
私は、美也子の小学校卒業式の日に、小さなブーケを持って告白した。
卒業おめでとう。
それから。
好きになりました。
だから。
どうか、これからもずっと一緒にいてください。
美也子は大きな目を丸くして、驚いたような顔をした。
そして、少し目線をずらすとポリポリと頬をかいた。
その間、私の心臓は壊れそうなほどドキドキとしていた。
やがて、美也子は私の差し出したブーケを受け取ると、少し照れたように笑った。
そして言った。
「うん。こちらこそ、これからもよろしく」
後に美也子は言った。
あの時はびっくりした、と。
確かに私のことは好きだったけど、恋愛の意味の好きではなかったから戸惑った、と。
だけど、断ってそれまでの関係がなくなるのは嫌だった、と。
だから、私の告白を受け入れたのだ、と。
そしてそれは、正解だった、と。
美也子、私の妻よ。
私と出会ってくれて、ありがとう。
私の想いを受け入れてくれて、ありがとう。
君を生み出してくれたこの世界よ、本当にありがとう。
次回もよろしくお願い致します。