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十話以内で終わるかな、な感じです。
懇々と命の尊さを説く彼女を、突然のことになかなか状況が呑み込めなかった私は、ただ茫然と尻餅をついたまま見上げていた。
聞いているうちに、どうやら彼女は私が自殺すると勘違いをしたらしいとわかった。
それを私が理解するまで、そしてそれを彼女にわかってもらうまで、かなりの時間を要した覚えがある。
やっとのことで意思の疎通ができると、彼女は今度は平謝りに謝った。
彼女の突然のタックルにより、逆に歩道橋から落ちるところだったのである。
しかし、彼女に悪気があったわけではない。
彼女は彼女の誠意により、私を救おうとしたのだから。
たとえ、それが勘違いであったとはしても。
だから私は当時、苦笑するより仕方なかった。
私の許しを得ると、彼女は弁明した。
それほどに、私が思い詰めているように見えたのだと。
このまま放置しては危ない、と思えたのだと。
早合点な子だな、と私は思った。
また、当時はもちろんそんなことは考えもしなかったが、もしこの時彼女、美也子と出会えていなかったら、と後年私は思った。
この頃からすでに息苦しい感覚を覚えていた私は、もしかしたら、もう数年もすると、本当に美也子の危惧したとおりになっていたかもしれない。
私を蝕もうとしていたのは、どうしようもない厭世観だ。
自覚はなかったが、当時確かに私はその初期症状にあったと思う。
その結果自ら自分の命を絶つことになっていたかもしれない。
振り返ってみると、確かにそう思える自分がいた。
この時、美也子と出会えたその偶然は、後の私にとって本当に僥倖なことであった。
美也子は、そんな私の気鬱な部分をすべて吹き飛ばしてくれる存在となったのだから。
一通りの和解と、謝罪と、弁明が終わった後、彼女は自己紹介をした。
それにより、彼女が近隣の学校の生徒で、自分より一学年上の女の子だと知った。
私も軽く自己紹介をした後、「もう気にしないでいいから」とその場を離れようとした。
が、そんな私の手を美也子はつかんだ。
驚く私に、美也子は言った。
でもやっぱりどこか心配だ、と。
こうしてせっかく知り合ったのに、もし何かあったらきっと後悔するから、と。
そして、美也子は週に一度顔を見せるようにと私に命じた。
知り合ったばかりの女の子に、そんなことを言われ、当然私は拒否をした。
しかし、美也子は諦めなかった。
心配だ。
どうしても、なぜか気になる。
だから、様子を見なければ気がすまない。
様子を見るのは会って、顔を見るのが一番だから、と。
何度も心配ない、必要ないと拒んだが、結局折れたのは私だった。
週に一度会うだけで満足するなら別にいいと。
そう約束した。
約束しなければ、勝手に好きな時に突撃するからいいと言われれば、そうするしかなかった。
美也子は、まるで台風か嵐のような女の子であった。
当時はどうしてこんなことに、と嘆いたが、その嘆きはすぐに撤回することになる。
美也子、私の未来の妻になる少女。
君と出会えた奇跡に、私は感謝する。
次回もよろしくお願い致します。




