第四話 「名前」
心地よいまどろみの中で、誰かが私の髪を撫でてくれている。
その優しい手つきに応えるように、意識かゆっくりと覚醒していくのが分かる。
(……だれ……?)
頭を一撫でされる毎に、身体の感覚が少しずつ戻ってくる。曖昧だった手足が、馴染みの形へと整えられていく。名前を持たなかった"私"が、"アズマリア"へと還っていく。
それと同時に、さっきまで見ていたモノが、だんだんと氷が溶けていくようにあやふやになっていく。
(ああ、ダメ……)
なにがダメなのかは分からない。分からないけど、ひどく懐かしいものがまた消えていってしまう。あの青い空から遠ざけられていく。
『……■■■っ』
どこかから、誰かを呼んでいる声がする。でも優しく頬を撫でる感触に身を浸す私には、肝心のその名前が良く聞き取れなかった。
さらり、さらり
髪を梳かれ続けるいる感触に、私は不思議な安らぎを覚えていた。その手に導かれながら、目覚めの時が近づいている事がなんとなく分かった。
ぼんやりとした暖かい光を目蓋に感じて、私が今まさに目を開けようとしている時、まどろみの奥からもう一度あの声が小さく聞こえてきた。
本当に微かな音だったんだけど、それだけは不思議と耳に残った。
その"声"が伝えたかった言葉はきっと――
「……ゆうり」
無意識にその名前を呟きながら、私はゆっくりと目蓋を上げていった。
「……」
そうして目に飛び込んできた光景に、私の頭の中は一瞬で真っ白になりました。
私の目と鼻の先には、不機嫌そうな顔をした侍女さんが居りまして。
彼女の右手は何故か、私の頭に置かれてありまして。
さらにはその青い瞳と、ばっちり目と目が合ってしまいまして。
(……)
うん、まあなんだ。先ほどの王女様に続き、その御付の侍女さんの顔までがいきなり目の前にどアップで現れたのだ。これには誰だって驚く。驚くはずだ。だから――
「はにゃあああああああーーー!!」
……ユーリ殿下の御前で奇天烈な悲鳴を上げちゃったのも、しょうがない事のはずなんだ。うん。
○ ○ ○
人間の心とは不思議なもので。
此のところ驚かされる事の連続だった私には、なんというかある種の耐性が出来たのかもしれない。思い返してみると王都に着いてからの短い間に、泣いたり怒ったり落ち込んだりと気絶したりと、自分でもビックリするような事をやらかしてきたのだ。それを思うと
(悲鳴を上げただけで済んで良かったよぉ)
……今のがまだ軽い方だと言えてしまう所が悲しいけれど。
今だ暴れる心臓を宥めながら、私はそんな事を考えていた。
「もう大丈夫かな、マリアちゃん?」
ユーリ殿下が心配げにそう問うてくる声に、私は無理やり笑みを浮かべて返事をした。顔の筋肉を動かすために、なけなしの気力を振り絞ったので、若干引きつったものになってしまったのは勘弁願いたい。
そうやってなんとか誤魔化している間に、胸の動悸も大分落ち着いてきた。首もとの銀の首飾りに右手を当てながら、深呼吸してお腹にためた空気を全部吐きだしていく。よし、もう大丈夫だ。
「……殿下にたいし重ね重ねの無礼、誠に申し訳ありませんでした」
意識が正常に戻ったのを感じると、姿勢を正して改めて殿下に頭を下げた。世が世なら問答無用で処刑されても文句は言えなかっただろう。
もっとも――
「うん。私は別に気にしてないから、心配しなくていいよー」
――この王女様はそんな事はしなさそうだけど。
案の定あっさりと私の謝罪を受けいてるユーリ殿下。まだほんの短い付き合いだけど、この殿下ならそう仰る気がしてた。
そんな殿下が相手だからこそ……
「いえ、そういう訳には参りません。殿下」
だからこそ私は、誠意をもって謝らないといけないと思うのだ。
直に話をしてみて判った事なんだけど、なんというか、この方は身に纏う空気が非常に緩いのだ。それは普段王宮に居られる時からそうなのかは分からない。あるいは私が殿下のご学友になったから、素の部分を見せてくれているのか。
そのどちらであっても、私はそれに甘える事はしたくなかった。
「非礼は非礼。公爵家の娘として、また殿下の友となる身として、謝るべきことはきちんと謝りたいのです」
背筋を伸ばしてもう一度頭を下げる。なにより初めての友達になる人なのだ。きちんと謝罪を受け取ってもらいたかった。
そんな風に意固地になる私を見て、その真剣さが伝わったのだろう、殿下がお困りになっているのが伝わってくる。一度は謝罪を受け取ったのだから当然だ。謝るほうが困らすってダメだろとは思うけど、私だって妥協しちゃいけない事はあるのだ。
「……恐れながらユーリ様に進言いたします。この件に関してはアズマリア様もお引きにならない御様子です。そこで、ここはユーリ様からのお願い事を一つ叶える事で決着となさってはいかがでしょうか」
そんな心情を敏感に感じ取ってくれたのか。いつの間にか殿下の後ろに下がっていた侍女さんが助け舟を出してくれた。
その提案を受けて、ユーリ殿下の顔つきが真剣なものに変わる。この辺りの切り替えの素早さは、さすがは王族の一員だと魅入ってしまう。
「……分かりました。アリサの進言を取り、私の願いを一つ叶える事で貴女の謝罪とする事を受け入れましょう。しかしそれは王族と臣下のものではなく、友と友との間のものであると理解しなさい、アズマリア・シュタットフェルト」
王女様としての威厳の篭もった声で、私の我侭を聞き入れてくれるユーリ殿下。そのことへの感謝の意味も込めて
「ありがとうございます、ユーリ殿下」
私はもう一度だけ頭を下げた。
そうして一連のやり取りが終わった後。次に殿下の顔を見たときにはもう、彼女の顔には親しげな表情に変わっていました。
「それにしても、マリアちゃんって頑固なんだね。イリスさんから聞いていたけど、ちょっと意外かな」
そういってちょこっとだけ苦笑いを浮かべる殿下。私としても反論できない事だったので視線を横に逃がしておく。
しかし、殿下の言葉の中に気になる事があったので、すぐに顔を戻したけど。
「あのユーリ殿下。殿下はイリス姉さまの事をご存知なので?」
聞き間違えでなければ、イリス姉さんの名前が出てきていたのだが。
殿下は一瞬キョトンとなさると、「あぁ」と頷かれる。
「えとね、マリアちゃんが私のお相手に決まった後に何度かお会いしたんだ。その時にマリアちゃんの事もいろいろ聞いたんだよー。ちょっと体が弱い所があるから、疲れたら少し眠る癖がある事とかね」
だからさっきの事も気にしなくていいんだよ。
そう締めくくられる殿下。
体が弱いという点は反論したかったけど、殿下の前でやっちゃった後では説得力は無いだろう。私自身がどう思っていようと、他人から見たらそのように映るのもしょうがないと思うし。
(……それにしても)
げに恐ろしきはイリス姉さんの交友関係のその広さです。『眠り姫』の事といい、私の話っていったいどれだけの範囲に広がっているんだろう。その事に内心慄いている私を、首をかしげて眺めておられたユーリ殿下だったが、次の瞬間には悪戯を思いついかれたようなお顔に変えられていて
「それじゃあマリアちゃんに聞いてもらうお願いだけど、何にしてもらおうかなー」
そういって楽しそうに笑われたのだった。そのニヤニヤと嬉しそうになされた顔を見て、早まったかなっとちょっぴり後悔。一体なにをお願いされるのか。まったく予想がつかないのですが……。
「ユーリ様。その事も大事な話ではございます。ですがアズマリア様の顔色を拝見しますに、少しばかり疲れが残っておられるご様子です。お願い事の件は次の機会に回されるとして、今は本題へと移られてはいかがでしょうか」
王女様のニマニマ顔に不安が募ってきたところに、三度侍女さんのから助け舟が入った。場の空気を読むのが上手いのか、さっきから絶妙なタイミングで声を掛けてくれるよねこの人。
(なんてお名前なのかな……?)
そういえばこの人とはまだ自己紹介してなかったよね。
(たしかアリサさんだっけ?)
先程殿下がそう呼んでいた気がするけど自信はあまりない。そんな私の内心さえも見抜かれたのか「こほん」と軽く咳払いをされると、彼女は「名乗るのが遅くなりましたが」と前置きして自己紹介をしてくれた。
「私はユーリ殿下の近侍を拝命いたしております、アリサ・エッジワースと申します」
そう名前を教えてくれる侍女さん改めアリサさん。
「――それと未熟ながらも私も魔法士の一人ですので、先程は診察のためお体に触れさせて頂きました。ご不快な思いをさせてしまい申し訳ないのですが、念のためにもう一度診させて頂いても宜しいでしょうか」
ああ、さっき頭を撫でられていたのはそういった訳だったのか。
「いえ、そういった事情でしたら遠慮なくお願いします」
魔法士を名乗れるっていうは優秀さの証みたいなものだ。神殿系か、国軍系かの違いはあってもおなじ魔法士なんだし、身体の診察くらいはお茶の子さいさいだろう。
「では失礼します……」
そう言ってアリサさんは懐から手袋を取り出しながら近づいてくる。白い生地の表面に小さな石や文様が縫いこまれているから、手袋の形をした魔法具なのだろう。
「そういえば私ってどれくらい寝ちゃってましたか?」
手袋型の魔法具越しにアリサさんに頭を撫でられながら、ふと思い出したので聞いてみた。
「うーんと、10分くらいかな?」
その私の質問には、アリサさんではなくユーリ殿下が答えてくれた。
「なんかね、わたしと話してる途中でね、すーって目を閉じてから寝入っちゃたんだよ。マリアちゃんって王都に着てから日が浅かったって聞いてたし、あんまりにも自然に寝ちゃったから、疲れてたのかなって。だらかアリサにお願いして、軽く診てもらってたんだよ」
なるほどそんな感じだったのか。少なくとも乙女にあるまじき醜態を晒していた訳ではないみたいたし、その点はまず一安心だ。あと気になる事といえば
「……ちなみに、なにか寝言とか言ってませんでしたか?」
不用意な事を口走ってなかったかと言う点なんだけど。
そんな私の問いかけに、ユーリ殿下はアリサさんとちらりと視線を交わすと
「うーん、何も言ってなかったよ?」
そう答えられた。その視線のやり取りに、なんだか引っかかりを覚えたんだけど
「でも眠っている時のマリアちゃんってすっごく可愛いかったよっ。 イリスさんが『眠り姫』って呼ぶ気持ちが良く分かったもの!!」
直後に飛び出したこのセリフに、私の意識を全て持っていかれてしまいました。
(イリス姉さーんっ!!)
ユーリ殿下に『眠り姫』って名前を教えたのはやっぱり貴女でしたか。
ちょうどそのタイミングでアリサさんが私の頭から手を離したので、彼女の手と入れ替わるように頭を抱えてしまう。
そんな私の事などお構い無しのアリサさんは
「……幸いお体に異常などの問題はございませんでした」
相変わらず表情の乏しい顔を向けながら、診察の結果を教えてくれた。私もいつまでも落ち込んではいけないし、出来るだけ素早く深呼吸をすると、「ありがとうございました」と彼女にお礼を告げた。
これでもう終わりかなって思ったんだけど、アリサさん的にはまだ続きがあるそうで。
「ところでアズマリア様。先程眠りに着いておられたとき、何か夢などは見られませんでしたか?」
唐突にそんな質問を投げかけてきた。
(夢?)
「夢、ですか?」
「はい、夢です」
うーん夢かぁ。どうだっただろう?
何か夢を見ていた様な気もするし、何も見てない気もする。
(……というか)
目覚めたとき貴女の顔が目と鼻の先に迫ってた事に驚いてたもんで、仮に夢を見ていたとしてもその内容なんて丸ごと綺麗に吹っ飛んでるんじゃないかと思います。さすがにご本人に対して、面と向かってそんな事を言うわけにはいかないので。
「うーん、ごめんなさい。何も見てなかったと思いますよ」
そう言ってお茶を濁しておいた。
そんな返答をどう思っているのか、アリサさんはしばらくじぃーと私の目を見詰めてきたけれど
「……そうですか。ならばよいのです」
そう言われると、殿下の傍へと下がってしまった。
何だったんだろ?と首を傾げていると。
「う~。アリサばっかりマリアちゃんと楽しそうにしてずるいー」
いつのまにかユーリ殿下がむくれていらした。「私も仲間に入れてよー」と文句を言われる殿下。いや、今のやり取りはそんなんじゃなくね?
「えぇと、別にアリサさんは私の体の事を診て下さっただけで、ユーリ殿下の事を仲間はずれにしたとか、そんなのではなくてですね……」
そう言って何とか殿下を宥めようと四苦八苦する私。
友達どころか家族以外の人とめったに顔を合わしたことがないので、こんな時どうすればいいのかなんてすぐには思いつかないです。
咄嗟にアリサさんへと助けを求める視線を送ったんだけど、青髪の侍女さんは我関せずとばかりに目を瞑って無視してくれやがりました。
そんな彼女に文句の一つでも言いたいのは山々でけど、私の視線がアリサさんに向いたのに気付いた殿下が
「やっぱりマリアちゃんとアリサばっかり仲良しでずーるーいー!!」
とますます不機嫌になられるので、どうしようもなかった。
「ああぁぁのですね、私はなにもユーリ殿下とアリサさんとで区別してるつもりはもうとうなくってですね、ぇとえと、だからその……」
頭の中が軽くパニック気味になりながらも、なんとか口を動かし続ける私。
そんな私をぶすーとした顔で見詰めていらしたユーリ殿下は、何かを閃かれたのか突然立ち上がられると
「それだよー!!」
私を指差しながら、そう叫ばれた。
「なんか違うなーてずっと思ってたんだ。その理由が今解ったよ!!」
「は、はぁ。理由ですか」
「そうっ。理由がだよっ!」
そういってニコニコと満面の笑みを浮かべられたユーリ殿下は
「ねえマリアちゃん、この子は誰かな?」
そう言ってご自身の後ろに控えているアリサさんを指差された。
誰かなって言われても。
「アリサさんですよね」
そう答える以外に答えようがないのですが?
その私の答えに満足いったのか、今度はご自分を指差しながら
「それじゃあわたしは?」
と問いかけてきました。
これって何かのナゾナゾなのかな。そう疑問には思ったんだけど、聞かれたからには答えないといけないよね……?。
「えぇと、ユーリ殿下です」
なので私はそうお答えした。したのだけれど……
「もう一度言ってみて」
「ユーリ殿下です」
「もう一度」
「ユーリ……殿下です……?」
なんでか同じ質問を繰り返されました。
(え?え?え?)
私なにかまずい事でも言ったのかな?
殿下の意図が判らずにおろおろとうろたえだす私。私の答えが不満だったのか、俯き加減にぷるぷるとしだすユーリ殿下。
そんな私たちの様子など分かっているだろうに、アリサさんは一人目を瞑ったまま傍観を決め込んでいるみたいだった。
アヤ・ソフィアの応接室の中に、なんとも形容しがたい静寂が訪れる。えも言われぬ緊迫感に、冷たい汗が背中伝わっていくのを感じていると
「くふふ、ふふふ……」
そう静かに笑い声を出しながら、ユーリ殿下がゆっくりと顔を上げられた。
「ねえ、マリアちゃん。さっきした約束、覚えているかな?」
「や、約束ですか?」
「そう、一つだけなんでもお願い事を聞いてくれるって約束」
はい、覚えております。確かに覚えているからそんな怖い声出さないで!?
ユーリ殿下から発せられる只ならぬ気迫に、冷や汗がだらだらと流れ出す。これはあれだ、イリス姉さんに本気のお仕置きを受けたときと同じ感覚だ。その時の恐怖を思い出し、内心ぶるぶると震えていると
「うん、決めた。マリアちゃんっ!!」
「は、はいっっ!!」
殿下の気迫の篭もったお声に、私は勢い良く立ち上がると背筋をぴんっと伸ばす。
いったいどんなお願いをされるんだろう。完全に場の空気に呑まれていた私は、戦々恐々とその時を待っていた。
でもユーリ殿下は、そんな私の不安など杞憂なんだよって安心させるみたいに――
「これからは、わたしの事を『殿下』って呼ぶの禁止だからね」
彼女は満面の笑みを浮かべると、そう告げられたのだった。
「えっと、それってどういう……?」
そんな私の疑問に
「うん、あのね。マリアちゃんってアリサのことは名前で呼ぶのに、わたしの事は『ユーリ殿下』って呼んでるよね?」
はい、たしかにそう呼んでましたよね。
「ええと、殿下は王女様なのでそうお呼びしてたんですけど……?」
それがいけなかったの?
そんな思いが顔に出てたのか、殿下は納得顔でうんうんと頷かれると
「臣下の者がわたしを『殿下』って呼ぶのはしょうがないと思うよ。でもね、わたしはマリアちゃんと友達でいたいから、わたしの事をちゃんと名前で呼んでほしいんだ」
だからお願い。
そう言って笑いかける殿下。
(……まいったな)
そんな風に微笑まれながらお願いされると断れないんですが。
(……でもそういう関係になってもいいって事だよね)
昔イリス姉さんが送ってくれた物語を思い出す。あの頃読んだ物語の主人公達は、確かにお互いの事を気兼ねなく呼び合っていた。
その本を読みなながら、家族以外には「お嬢様」と呼ばれていた私にも、いつかこんな仲間が出来るのかなって密かに憧れを抱いてたんだった。
もう一度彼女の顔を真っ直ぐに見る。その黒い瞳に魅入られる。
―私の初めての友達―
そう意識すると途端に恥ずかしくなってくる。顔が真っ赤になるのが自分でもはっきりと分かってしまった。
彼女の願いを叶えようと、何度も小さく口を開けては閉めを繰り返す私。そんな私を、彼女は静かに待ってくれている。
そんな彼女をいつまでも待たせたくなくって
(ええいっ、女は度胸っ!!)
勢いをつけるべくおもいっきり息を吸い込むと
「――ユ、ユーリ」
改めて彼女の名前を呼ぶ。
顔から火が出るくらいに恥ずかしかったけど
「うんっ、よろしくねマリアちゃん」
嬉しそうに笑うユーリを見てると、私まで嬉しくなるのだった。
○ ○ ○
二人でお互いの名前を呼び合った後。
きっと頃合いを見計らっていたのだろう。それまで脇に控えていたアリサさんが、一歩前に出ると口を開いた。
「それでは時間も押していますので、今後の予定を手短にご説明いたします」
初めての友達の名前を呼ぶことに浮かれ気味だった私は、その声に反応して現実に呼び戻される。
「……予定ですか?」
今日は殿下、じゃなくてユーリとの顔合わせとしか聞いてなかったけど?
そんな私の疑問などお構え無しに、アリサさんは「はい」と答えると淡々と"今後の予定"を告げてきた。
「これからユーリ様とアズマリア様のお二人には"大地の巡礼"を行ってもらいます。出発は明日早朝。目的地は王都の東約40リーグの距離にあります聖地ラグランジュ。日数は往復で20日間を予定しております」
……
……
「……はい?」
――王都に来て早6日。ユーリとの対面も早々に、私は王都リシテアを旅立たせられる事になるそうです。
(……神様はもう少し私に優しくしてもいいと思うんだ)
光と闇の二つ神様に対して内心そう思ってもバチは当たらないよね……。
5/15 サブタイトル並びに、誤字と文章の表現を一部修正。




