第5話・春季キャンプ開始
短いです
春季キャンプ。
それは我等若手選手達が凌ぎを削り、オープン戦出場、開幕1軍と言う黄金の切符を奪い合う聖なる戦い。その戦いで敗れた者は開幕2軍を余儀なくされ、勝利した者は開幕1軍、数々のチャンスを与えてくれる。
今日は、その聖なる戦いが幕を開ける日、即ち春季キャンプ開始の日である。今年の一次キャンプは岐阜らしい。
「全員整列!」
ここは岐阜県。
「来たか・・・・・・」
「今年も・・・・・・」
「春季キャンプ・・・・・・」
若手達の間では独特の雰囲気が漂う。
「コメ・・・・・・」
「何だ、下中」
「この勝負、貰った」
「それは俺の台詞だ」若手達が熱い火花を散らす中、田栄真監督が全員の前で挨拶兼演説を開始する。
「おう、見たことの有るような面々だな。そういや石切、お前ピッチャーじゃなかったか?何で野手組の、D(捕手組)の所に並んでんだ?」
「いや、俺は3.4年程前にキャッチャーに転向したんで・・・・・・」
「あ、そうだっけ?勿体ない。近鉄の元エースがこのチームにピッチャーとして居ればどんなに心強いか。精神的にも実力的にも柱として頼れる存在になれたのに」
「いや、別にもう近鉄なくなったら引退しようと思ってたんで・・・・・・」
「あ、そうなのか。まあ良い。さて、今季からセントラル・リーグに加盟した2チームの内の1つ、『奈良ドルフィンス』として初めての春季キャンプが今、始まろうとしている訳だが、我が球団の初代選手会長、野辺靖雄を筆頭にそうそうたるメンバー全員がこの春季キャンプに臨むことになる。今年は野辺靖雄、右田知夫、右田隆夫、下中流紺、轆轤建一、福神大吉、石切和興、ダイジョーブ坂地、猿山剛椿、島本政志等々色々な選手がこの岐阜に顔を揃えて居る。今年の目標は『最下位以外』だ。新造チームだけあって厳しい戦いになるだろうが、喰らい付いて頑張って欲しい。何か有ったらコーチ達に聞くなり、先輩に聞くなり、俺に聞くなりしてくれ。では、健闘を祈る。キャンプの日程やメニューは後程配る」
監督の挨拶も終わり、いよいよキャンプ開幕。
まず走り込み。ずっと走り込み。昼飯食っても走り込み。夜になっても走り込み。
「はい、終了」
監督の一声で選手全員が一斉に走り込みを止め、監督の元に集まる。
「えー、本日は初日と言うことで、君達には走り込みをしてもらった。まあここ2、3日は走り込みを中心にやってもらおうと思う。では、明日に備えて今日はぐっすり寝てくれ。解散!」
てな訳で本日は終了。