初登板初打席
「あーあ、1軍に上がれたは良いが登板機会無いんじゃ意味ねー」
「仕方ないだろ、右田」
右田知夫は1軍に上がれたのだが、4月12日に1軍登録されてから4月28日まで1回も登板が無い。対横浜戦は相変わらず乱打戦である。大竹と吉見の先発で始まったのだが両者滅多打ちにされされ、5回終わって10―10の同点だった。
『6回表、ピッチャーの交代をお知らせ致します。ピッチャー、林に代わりまして、佐竹。ピッチャー、佐竹。背番号、13。今季8試合目の登板、0勝0敗0S、防御率2.33でございます』
ピッチャー佐竹がコールされ、佐竹健太がマウンドに上がる。今まで大竹→長谷川→佐藤→林と繋いで来たのだが、横浜の乱打は止まらず結局佐竹さんが上がっている。残っている中継ぎと言えば高橋さん、横山さん、永川さん、広池さん、俺。
「おい広池、右田、お前らそろそろブルペン行け。7回に上げる」
「はい」
広池さんがブルペンに向かう。広池さんは良いなーと思いながら広池さんの後ろ姿を眺める。
「おい」
「あ、ん、何ですか清川コーチ」
「お前もだよ、ブルペン行け」
「え?俺も?」
「当たり前だ。さっさと行け」
「は、はい」
それを聞いた途端興奮しだした。念願の広島市民球場のマウンドに上がれるのだ。
「ウィース」
ブルペンは来たことがある。良い場所だ。
「おう」
松本隆ブルペン捕手が挨拶してくる。広池さんの球を受けてるのは水本さんだ。
『スパアン!!』
『ドワアアアア』
『あー、あー』
『ドワアアアアアアアアアアア』
『はあああああああああああ』
『何してんだ佐竹ー!!』
あーあ、佐竹さんが満塁弾を浴び、一気に10―14になっていた。しかも打ったのが佐伯さんだったので最上段に持って行かれ、勢いは完璧に横浜に持ってかれた。
『5番、セカンド、種田』
出たがに股種田。マウンドに内野手が集まり、離れて行く。佐竹さんが投じた第1球、
『パコォン!!』
『ドワアアアア』
『あー、あー』
『ドワアアアアアアアアアアア』
『はあああああああああああ』
あーあー、入っちゃった。
『広島東洋カープ、ピッチャーの交代をお知らせ致します。ピッチャー、佐竹に代わりまして、広池。ピッチャー、広池。背番号、28。今季13試合目の登板、1勝0敗0S、防御率5.22でございます』
途中から代わった広池さんがピシャッと抑えてチェンジになったものの、この試合展開はまずい。しかもこの裏は7、8、9番と下位打線なのだ。
『6回裏、広島東洋カープ、バッターの交代をお知らせ致します。7番、末永に代わりまして、代打、森笠。バッターは、森笠』
一気に沸き上がる球場。しかし森笠さんはセカンドゴロに終わった。
『8番、キャッチャー、石原』
石原さんも結局セカンドゴロに終わり、流れはいよいよ横浜に。
『広島東洋カープ、バッターの交代をお知らせ致します。9番、広池に代わりまして、代打、浅井。バッターは、浅井』
そして球場は今まで以上に沸き上がる。代打の神様の登場で応援にも熱が入る。浅井さんはライト前ヒットで出たが、続く東出は三振し、あっさり6回裏は終わった。
『7回表、広島東洋カープ、ピッチャーの交代をお知らせ致します。ピッチャー、広池に代わりまして、右田。ピッチャー、右田。背番号、70。今季初登板、0勝0敗0Sでございます』
「きたー!!出たー!!」
やっと来た初登板。やっと来た1軍のマウンド。
マウンドに行くと、清川コーチが立って居た。
「おう右田、お前初登板だったな。まあ頑張れよ。緊張するな」
「はい」
さあ打席には代打吉村。第1球、マウンドを踏みしめて、投げた!・・・・・・スパァン!150キロ!おお、俺ってスゲー!さあそして波に乗った俺は吉村のバットをへし折りピッチャーゴロ、石井琢郎を3球三振、小池相手に156キロをド真ん中にぶちこみ空振り三振。
「うし!」
ベンチに駆け足で戻る。
「うしうしうし!」
「よう右田、良いじゃねえかお前。あの直球持ってて何で今まで2軍に居た」
「知りませんよそんな事」
「まあ山内のあの自信が分かったぜ。次も頼むぞ!」
「次はいつでしょうね」
「8回に決まってんだろ」
「え・・・・・・あ、はい」
8回表、横浜の中軸を3者三振に打ち取りチェンジになった。
『8回裏、広島東洋カープの攻撃は、5番、レフト、前田』
ここから
前田 ライト前ヒット
栗原 三振
森笠 センター前ヒット 栗原三塁へ
石原 三振
で俺に回って来た。ベンチは代える気がないらしい。俺も打つ気満々だし。
そして迎えた第6球、フルスイングで振った所たまたま当たってそのままバックスクリーンへ・・・・・・
入ったー!!入っちゃった!!スリーランホーマー!!俺ってスゲー!!マジでスゲー!!
そして俺のホームランで火が着いた広島打線はこの回打者一巡の猛攻で6点を挙げ、永川さんが締めて勝ちました。どうせなら9回も投げたかった。




