今度こそ殺す。絶対。
甘ーいのを目指した。
私は妖怪だ。
泣く子は黙り、誰もが恐れる大妖怪。
人を殺めたこともある。
脳髄を食らったこともある。
暇つぶしのためだけに子供を潰したことも。
何人も、何十人も。
それこそ、数えきれないほどに。
なのに…
あいつだけは、食べれなかった。
出会ったのは夏の日。
ちょっと話すだけのつもりだった。
殺す前のただの暇つぶし。
それ以上でも、それ以下でもないはずだった。
なのに。
――――『もし、私が妖怪だったらどうする?』
――――『ん?なんだそれ。俺食われちゃうのか?』
――――『―ねえ、どうするの?』
――――『どうもしない、かな。妖怪だろうと何だろうと、
ここにいてくれるんだろ?それでいい』
――――『……ふーん』
――――『聞いてきたくせに…』
いざあいつの前に立つと、
不思議と体が動くことを拒否をして、
声を聞くと頬が熱くなって。
そして――――
――――『それでな、そしたら先公の野郎、チョーク投げてきやがってーーー』
――――『……ふーん』
――――『でさ、自分が投げたくせに「拾え!」とか言ってきてーーー』
――――『……ふふ』
――――『だからさ……おっと、もう時間か』
――――『……ぇ』
――――『じゃあな!またここで!』
そして、いつも別れ際に見せる笑顔で、私は我に返るのだ。
…明日こそ食ってやる。
絶対に。
もう何度目になるだろうか、思いを新たに、今日も私は眠るのだ。
ご視聴ありがとうございました。
『聴』はしてねえよって方は
アイポッドで曲を聴きながら
もう一度読み返しましょう。
上記の台詞の意味が解るはず。
この話は少なからず『夏目友人長』を参考にしています。
ほとんど別物だと割り切りました。
きっと大丈夫。
もちろん指摘以外の感想も待ってます。
恋愛系は初めてなので、どう感じたかぜひ!
では、また会えることを願って。久遠でした。