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愛があれば、何をしてもいいとでも?  作者: 篠月珪霞


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5/5

5 終幕

私の救出と同時刻に、ノースボルド元侯爵令息も拘束されたという。

近づいたのは、ガネーシュ公子からだったとか。

何でも私の残り香を、市井で彷徨っていた元令息から感じ取ったとのことだが、身体的接触があったわけでもないのにと、感心するやら呆れるやらだった。

学園の見取り図は元侯爵令息から入手と、そちらは予想通り。でなければ、馬車止めを的確に狙うことは難しかっただろう。

──元令息と、公子は処刑になった。




その後はというと。

私の誘拐の報を聞き、皇国の兄たちが駆け付けようとしたのを止めるのに苦労したと、妹からの愚痴なんだか嘆きなんだかの手紙が届いたり。

改めて学院に編入した日は、歓迎と心配の声であふれてたり。

ちなみに、醜聞になるので誘拐自体は表沙汰になっていない。セレスリアが学院に着いた時間が早く、目撃者がいなかったのも幸いした。

心配は、予定より編入日が数日遅れたことへの、配慮の声だった。

留学期間は、貴族的な表面上の付き合いもあり、信頼できる友人ができたり、王太子妃の教育のおさらいなど、充実した日々を送り。

緩やかに日々は過ぎていった。




──そうして迎えた、結婚式当日。




「綺麗ですわ、素敵ですわ、まるで女神のようですわあ!!!!」


精緻な刺繍と、幾千もの宝石が施された純白のドレス。デザインは何故か、皇国の母と妹まで案が出され、なかなか決まらなかった。着るのは私なのに、と苦笑したのもいい思い出だ。

ドレスに身を包んだセレスリアに、惜しみない賛辞を送ってるのは妹のユーディリエである。


「落ち着きなさいな、ユーディリエ。美しいのは当然よ。わたくしの娘なのですから」

「そうですわね」


控室には、母と妹。男性陣は準備が完全に終わるまでは入室を禁じた。母が。


「さて、あの人たちに声をかけてこようかしら。あまりうろうろされても、迷惑だものねえ」


そう言うや否や扉を開くと、待ちかねていたと言わんばかりの兄2人が突撃の勢いで入室してきた。続いて父も。

兄2人から交互にあらゆる角度から賛辞を贈られ、幾分か照れながら、父と向かいあう。


「セレスリアももう結婚か。感慨深いものだ…」

「まだまだ、わたくしたちの元にいてもよかったとは思いますけれど」

「まあ、子はいつか巣立つものだ。これからは、隣国としてお前たちを見守ろう」


穏やかに微笑む両親に、じわりと嬉しさがにじむ。


「リア、結婚おめでとう。エラルドに泣かされたら、いつでも帰ってきていいからな」

「ありがとうございます、フェリオスお兄様。たぶん、そんなことにはなりませんわ」

「まあその場合は、私自ら制裁、いや存在を抹消してやろう」

「イグリードお兄様…お手柔らかにお願いしますね」

「すまない、リアに話があるので、少しばかり2人にしてもらってもいいだろうか」


イグリードの言葉に、仕方ないなと両親、兄、妹は退室する。

改まって話とはなんだろう。


「忙しいときにすまないな、リア。…ああ、座ったままでいい」

「はい」

「本当に綺麗だ。今日のこの日を迎えられて私も嬉しい」

「ありがとうございます、お兄様」

「──お前が5歳のとき、エラルドと初めて逢った交流会を、覚えてるか?」

「? 覚えてますわ」


唐突に何を言い出すのだろう。

兄の意図が読めず、疑問符が頭の中を巡る。


「あの日は、お前の婚約者選びも兼ねていたが、該当の年齢の貴族子女も来ていた。友人や側近になるべきものの選別もあったからね。挨拶を済ませたお前は、真っ先にある子爵令嬢の元に行き、侍女にしたいと言ったね」

「はい、…覚えてますわ」


今はベリエラまでついてきてる、忠実な侍女だ。ずっと私に仕えるのだと。


「お前が我儘めいたことを言ったのは、あれが初めてだった。それまでは、どこか遠慮というか、何をしてももらっても、居心地の悪そうな顔をしていた。私たちは家族なのに、どこか距離を置いていたね」


気付かれていたのか。


「そんな顔をするな。責めてるわけではない」

「申し訳、」

「謝罪も必要ない。リアは何も悪くないからな」

「…はい」


兄は優しい。いつも、いつだって。私は何も返せてはいないのに。


「珍しいお前の我儘に、まずはその子爵家に調査を入れた。調査結果を知った私たちは、お前の望み通りにすることにした。もちろん、その令嬢の希望も聞いてからだったが」


調査対象になった子爵家の家族構成は、父母と令嬢、そして妹。ただし、母は母でも、実母ではなく義母、妹も義母の連れ子だった。前の私と、同じだった。


「お前が、何故そこまでしてあの令嬢を…今はお前の侍女を、気にかけたのかは分からないし、聞く気もない。お前は、生まれたときからずっと、私の可愛い妹だ。守るべき、慈しむべき存在だ。それは変わらない。ただ、望み通りに侍女にすると言ったときの、お前の顔が忘れられない。なんだろうな。何かが、救われたような顔をしたんだ」

「…お兄様」

「それから、余計にお前を甘やかしてやりたくなった。何でも遠慮して、ろくに自分の望みも好きかも言わないお前を、何もお前を脅かすものはないと、教えてやりたかった」


そんな風に思ってくれていたなんて、知らなかった。

愛されているのは十分わかっていたけれど。


「これからは、不本意ではあるが、それをエラルドが受け継いでくれるだろう。私たちも、もちろんこれからもお前を愛している」


十分です、お兄様。


「ああ、泣くなよ。メイクが崩れる」

「だったら、泣かせないでください」

「はは、そんな顔も綺麗だ」

「お兄様ったら…!」


「──…幸せにおなり。私の可愛い妹。ずっとお前を愛しているよ」















「──義兄上に泣かされたって?」


式が終わり、今はパレード中だ。国民の祝福を受け、馬車で移動している。


「お兄様がなんだか、お父様みたいなこと言うから…」

「ああ、なんとなく分かる気がするな」


2人して、笑顔で手を振りながらの台詞である。


「セレスをもし悲しませたら、2人、いや3人は飛ぶ勢いで来るだろうな。そして私の命は風前の灯火に」

「笑いながら言うことじゃないし、そんな予定があるの?」

「いいや? あるわけない」


私たちは、お互いに、お互いを選んだのだから。自分の意思で。運命など関係なく。



「私は、私のすべてで君を愛してるからね。セレス」


「わたくしも、わたしくの意思と心のすべてで、エラルド様を愛しております。今までも、これからも」


くすりと笑い、キスを交わすと、周囲が歓声に沸いた。


















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― 新着の感想 ―
獣人国スビアナイト側がどうなったのかも知りたいです!
獣人国のその後はかなりヤバそうですね。 どう足掻いても国際問題ですから。 まともな人とクズの格差がエグいですが、公子も侯爵令息も1度は温情的措置を受けてアレなので処刑も当然ですね。 番という設定は個人…
獣人国の王太子が可哀想だねぇ…。多分彼も国内から突き上げられて大変なんだろうなぁ。外国からの圧力があったとて、国内にいるものはそんなに気が付かないからね…。 獣人国では外国の処分の重さに改めて身を正し…
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