27、ケンカをするほど仲が良い?
駄文&内容短めです
城中に響き渡っていた破壊音が収まった事を確認し、結界を解除し部屋から出た
勇者ことクリスが見たモノは
「はぁ、はぁ……」
「……ぜぇ……ぜぇ」
半日に及ぶ激しいバトル&チェイスの末に疲れ果てて、息も絶え絶えに汗を滝のように流し
土まみれで中庭の地面に横たわる魔王とクレアの姿だった。
「………馬鹿?」
お前ら馬鹿だろ?馬鹿なんだな?、と冷たい視線、その顔には多少の怒りが交ざっていた。
普段は、感情をあまり表に出さない勇者だが半日もの間辺り構わず魔術や武器をぶっ放され、その騒音と壁を突き抜けて飛来して来る流れ弾にずっと曝され安心して満足に城の中を歩く事も出来ないでいたのだ、そりゃあ怒りたくもなる
「……煩い……」
自分でも馬鹿な事をした事を判っているのかそう一言述べるだけでそれ以上何も言い返して来ない魔王
一方で
「……お兄ちゃまにばかっていわれるならほんもうれふ……」
全く違う反応を示す人(変態)が此処に一人……完全にキャラ崩壊してますよ?
自分の兄に若干蔑むような視線を向けられて落ち込む処か寧ろ喜んでいるそぶりさえ見せる勇者妹クレアちゃん
今までの駆け引きで判りきっていた事だが、このブラコンぶりは完全に末期である
ってか別の何かにも目覚めつつある彼女の言葉に怒りよりも兄として妹の将来が不安になってきた。
にしても、この二人は……
病人が居るのにも関わらず、こんな大掛かりなケンカをするなんて……
クリスが結界を張っていたから良かったもののそうでなければ治療室は三回程消し飛んでいただろう、
最も彼が対処する事を予め予想した上で遠慮無くケンカをしていたのかもしれないが、それでもやり過ぎな感じは否めない。
なんでこう血の気が多いのか……
……まぁ、本気を出さなかっただけでもよしとしよう……
この二人が本気を出したら
この城が消滅するだけでは収まらないだろうから……
「……風呂に…入るか」
流石に汗まみれで、身体に服が張り付いて気持ち悪くて敵わないと風呂に向かおうと魔王が立ち上がるが
それを聞いたクレアが肩からむんずとつかみ掛かり
「何言ってるの?先に入るのはわたし!」
と魔王の風呂行きを阻止する
……つかみ掛かっている限り自分自身も風呂に入れない事を知ってか知らずか……
「このっ…城の主は俺だぞ!!」
魔王はそんな妨害に屈せずにクレアを引きずり足を進める
また飽きもせずにまたケンカをおっぱじめようとする二人
あれだけ暴れておいて、いったいその元気は何処からやって来るのだろうか
勇者はため息をついて言った。
「…………一緒に入れば?」
見兼ねた勇者がそんな事を二人に呟いたのだが、それを聞いた途端、まるで鏡に映したように全く同じ仕種で両の眉毛を吊り上げて。
「「誰がこんな奴と!!!」」
完全に台詞をハモらせて叫び声を上げる二人、実はこの二人仲がいいんじゃないのか?等と考えるが間違っても口には出さない
そんな事をしても火に油を注ぐだけだ。
女って面倒臭いのな…………
勇者クリスはそんな事を心の中で思った。