23、魔王とヤンデレな勇者(妹)後編_調子に乗りすぎると痛い目に合う
内容とタイトルがあまりにもミスマッチなきがしたので
メインタイトル変更します。
………最初考えてたのと大分変わっちゃったなぁ……
迷走した結果がこれだよ!!!
いや、本当に軽い気持ちだった。
数日前の出来事から勇者ッチが城を去ったのは、あの紅い鎧の騎士が関わっているのは解りきっていたんで。
だから、その原因自体に来てもらって話し合うなり、戦うなりして解決を図ろうかな~と軽く思ったのだが
まさか、来るなり問答無用でファーが半殺しにされたり、魔王様が窮地に追い込まれるなんて思ってもみない事態に………。
いや、戦う事自体は予想の範疇にあったが相手の力が強すぎる!!!
あげくの果てに、勇者ッチを気絶させてこの場の全員を皆殺しときた。勇者ッチを気絶させた時点で警戒をマックスにした俺とラーサはその台詞を聞いて出来うる最大の攻撃で相手を迎え撃ちにいった訳だけど……………触れる事すら出来ずに一瞬で弾き飛ばされてしまった。
急激に遠退く意識、
……スンマセン魔王様、
自分の軽率な行動を呪いながら
気絶する直前に見たのは立ち上がる魔王様の不敵な笑い顔だった。…………
______________
膨大な魔力が、収束して黒いオーラとなり魔王の身を纏う、
腰まで伸びた長い黒髪に燃えるように赤い灼眼の少女、魔王が本来の姿を顕した。勇者少女…クレアは始めの方こそ、急に膨れ上がったあまりの力の渦に圧倒されたが……
冷静に観察し、その力が自分の力と同程度であることを認め
今はそれよりも自分が手加減されていた事に怒りが先立った。
「女だったとはね……まさか……その体で、誘惑でもしたのかしら?……この売女」
ビキリと血管が浮かび上がる
「誘惑?……あいつが勝手に此処に居着いただけだろうが」
魔王にとっては事実を述べただけで別に他意のある発言ではなかったのだが向こうはそうはとらなかったらしい
「…………殺す」
頭上に幾千もの剣が現れ
魔王のもとに容赦無く降り注いだ
「ア?ここまで好き勝手やっといて、逆ギレか?……上等だ!!」
手を翳した途端に剣の雨を尽く砂よりも細かい微粒子に変えてしまう
瞬間、足元に黒い影が現れ闇で作り上げた槍が次々と突き上げていく
それを曲芸のようにかわし後ろにさがる
壁際まで追い詰められ床に手を添えると床に幾重にも線が伸びてボコボコと影もろとも床石を押し退けて木の根が魔王を縛りつけるが…
途端に魔王の全身を炎が包み、木の根を焼き払った
木の根で遮られていた視界が開けたと同時に魔王へ向けて剣を振り落とされる
魔力を篭めた一撃を魔王は手元の槍を強化し、軽々と防いだ。
「この雌豚が!!」
「は!!、じゃあその雌豚にも劣るお前は一体何だろうなぁ?」
飄々とした態度で剣を跳ね退け、次から次へとやって来る高速の攻撃を捌き返事を返す。
直接的な力に関していえば二人の間の実力に大きな差は無い
……攻撃を受けている魔王に実際はそれ程余裕など無いのだが
余裕があるフリをすることで相手の精神を削り戦闘の優位性を保っているのだ。
精神的優位性を示す事はそれだけで相手の体力を削り自滅を誘い、その分自分の体力を温存できる
そしてクレアは知らぬ間にそれにまんまとはまって、完全に魔王のペースに乗せられている。
「お兄様は、私だけを……私だけを見ていれば良いのに!!お前が余計な事を!!」
攻撃する手を緩める事無く叫び声を上げた。
「俺は何もしていないが?原因があるとしたら単にお前に魅力が無かっただけだろう?」
「!!!っ」
痛いところを突かれて思わず顔を歪め、攻撃する手が止まる
「っ…お兄様は私の物……誰にも渡さない!!魔族の畜生ごときに……渡してたまるか!!」
再び動き出した手が怒りに呼応して、剣の速さが上がっていく
「たかだか十数年そこらしか生きていない人間の餓鬼がよくいうなぁ!!」
突然突き出された魔王の槍の柄が
攻撃する剣の間を抜い、懐に潜り込み
腹を突き、身体が勢い良く後ろに吹っ飛んだ
頑丈に出来たハズの紅い鎧が凹む
怒りで血走りはじめた目をギラギラさせながら立ち上がった彼女は
『断空の……歪み!!』
そう言って剣を大きく縦に振り落とすと
空間に黒い割れ目が生まれとてつもない速さで魔王に迫る
断空の歪み……
次元を越えて物質、空間という概念を断ち切る究極の刃、存在そのものを断ち切るこの技の前にはいかなる防具もどんなに高位の防御魔術も無意味だ
防ぐ手だてはただ一つ
「はっ!」
衝動する寸前、魔王は指で目の前の空間を切り裂いた。ポッカリと空間に穴が空き、断空の歪みを飲み込む。断空の歪みを防ぐ唯一の手だて……それは相殺
同じ或はそれ以上の力で創られた断空の歪み、それを衝突させる事で互いに互いを飲み込み対消滅を起こすのだ
「今ので終わりか?随分とお粗末な攻撃だな?」
本当はお粗末所か並の人間なら一生かかっても習得するのも難しいかなり高等な技であるが
内心ちょっとビビったのを隠すように
あくまでも余裕な態度で高圧的に言葉を並べた。
「その程度でそいつ(勇者)を自分の物だと?……はっ………寝言は寝て言うんだな……阿婆擦れが」
ぷつり
と今の言葉が彼女の精神に完全に止めをさし彼女の中で“切れてはいけないなにか”が切れてしまった。
儡の人形のように突っ立ち、顔から表情の完全に消えうせた少女はそのままゆっくりと手を頭上に挙げて……ぶつぶつと長い詠唱を始めた。
次は何をやるのだろうと面白そうに(半ばドキドキしながら)眺めていた魔王の顔は少女の手に現れた部屋全体を隈なく白く照らし輝く丸い球を見て
瞬く間に青く変わっていく。
「おいおい………」
光り輝くのは偽りの太陽の光
絶えず核融合を繰り返す恒星の破片だった。
´死ね死ねしねシネしねシネしね死ね`
ぶつぶつと今度は怨嗟の言葉を呟き続ける少女…………
もはや怒りで完全に周りか見えていない
或はアレがどういう物なのか解っていない。もし“アレ”を解放させようものなら、ここに居る全員、城どころか、この周囲一帯数十キロの範囲が完全に焦土と化すだろう
「……消えて……失くなれ」
彼女がそう叫ぶと同時に
魔王は頭で考える間もなく、出来る限りのスピードとあらん限りの力を使い瞬時に異次元空間を作りだし
光の球が解放されるまさにその瞬間、膨大な熱を放ち光り輝く塊を覆い被せ、封じ込めた。
空間を閉じる直前に漏れた僅かな光が突き抜け、当たった石の壁を一瞬でバターのようにドロリと溶かすのを見て
「………」
本当に危ない所だったと滝のように冷や汗をかいた。
あと数秒でも、封じ込めるのが遅れていたら絶対に間に合わなかっただろう
本当にギリギリの死線をくぐっていた事を実感した。
なおも魔王に立ち向かおうとする少女は………今ので最後の力を完全に使い果たしたらしく、その場に倒れ込んでしまった。
戦いは魔王の勝利に終わった……
しかし、魔王にはまだやるべき事があった。
「後片付け……どうするか……」
再び穴だらけになり、朝の……本物の日差しが城の奥まで届いてるのを見て
ゲンナリと呟いた。