21、勇者が城を去ったようです
ようやく、伏線回収
シリアスな展開に入ります。
魔王の罰ゲーム(むしろ部下への罰ゲーム)が施行された次の日の朝
勇者はベッドの上で悪夢にうなされるようにウンウンと唸っていた。
「う………う……」
昨日見せられた魔王のニャンニャン体操が頭から全く離れなかった。
あの、輝き、はちきれんばかりの笑顔(作り笑い)
上質な絹糸のように綺麗で滑らかな長い髪
陶器のようにツルツルと触り心地の良さそうな……少し朱のさした白い肌
腹から尻にかけての見事な曲線を描く括れ
勇者の頭の中で様々な想像が頭の中をぐるぐると回っていた。
風呂上がりで湯気を身に纏い良い匂いを漂わせる魔王
ネコミミを付けて笑顔で擦り寄ってくる魔王を想像して……
「………う……うがーー!!」
真っ赤に赤面して妄想を打ち払うように枕を振り回した。
いったい、自分は何考えてるだ!!
と柄にも無く、パニックに陥り、混乱し、自己嫌悪に陥り始めた時
ポーチに入れていた石が紅く光り始めた。
その光を見て勇者は理解した。
自分がもう、
これ以上この場には居られない事を………
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「………遅いな」
ニャンニャン体操の指導を受け
疲労困憊の部下達も起き上がり(疲れのせいか、みんなぼーっとしている)
普段に朝食をとっている時間が過ぎ、用意した食事が完全に冷めてしまった後も全く来る気配の無い勇者
不審に思い
勇者の部屋までやって来た魔王は
「おい、勇者いつまで寝て……」
だが、入った部屋には勇者の姿は無く
外に面した窓が大きく開け放たれていた。
部屋の机には一言、
“せわになった”
そう書かれた手紙だけが置かれていた……
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「あー………言っちゃったんスね」
「……せめて、お別れの一言くらい言ってくれれば良かったのに……」
勇者を慕っていた、ファフニールはしょんぼりと、肩を落とした。
まだ魔術を教えて貰っている最中で勇者の突然のお別れに納得がいかなかった。
「所詮、身勝手な人間だったって事ね」
「それは……」
ラプラサスは珍しく毒のある発言をした。
それは、どこか勇者に期待を裏切られた事に落胆したようなそんな気配が見受けられた。
「ふん……居なくなってせいせいした」
元々、勇者が魔王城に住んでいること自体おかしかったのだ
勇者は魔王を倒す存在、同じ屋根の下に居て良い道理は無い。
いつかこんな日が来るのは分かっていたし、自分自身もそうなる事を望んでいた。
少し変化はあるが、ただ前の生活に戻っただけで、別に気にする必要も無い……
努めてそう理解していたが……
しかし、それからというものの
魔王はどことなく、イライラしっぱなしだった。
執務室での書類のサインの時
書類を十枚も破ってしまい
ペンも三本も曲げてダメにしてしまったし。
また、ちょっとした事で怒りやすくなり
口数も減った。
それが何処から来る感情なのか魔王にはとんと見当がつかなかった。
最も、もし気づいていたとしても魔王はそれを認め無かっただろうが……
昼飯時には、うっかり五人分の食事を作ってしまい、
…その場で一人分をごみ箱に叩き込んだ。
そんな事があって、その夜、魔王は自身で料理を作る事をやめ、影から作り出した分身に任せてしまった。
作る料理はまずくは無いものの魔王自身の料理と比べると物足りない感じが否めない。
魔王は怒涛の勢いで仕事を終えてしまって、もう、やるべき仕事も無いのに執務室に篭りっきりで出てくる気配が無い。
いや、勇者が来る前はいつもそんな感じだったが……
どことなく寂しい雰囲気の魔王城
次の日
「勇者さん……なんで行っちゃたんでしょうか?」
「さぁてね………」
興味が無い、とばかりにぞんざいな返事をして朝からチェスに勤しむラプラサス
つまらない顔をして駒を動かした。
チェックメイト……
しかし、何の感慨も湧かない
一応、仕事の受け持ちを賭けているのだがこんな状況で盛り上がる筈が無い
勝とうが負けようが意味は無い
ただ暇を潰すだけの空虚な時間
「次の当番、よろしくね…」
そう言って、駒を並べはじめた。
「……………」
何故勇者が去ったのか
その理由は誰にも解らなかった。
………ただ一人を除いて………
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昼前、チェスを切り上げて
数日前、勇者が探索の魔法陳を使ったその場所にマンティークは居た。
実は、なにかしら思う所があったのだ。
「……………」
周りに人が居ない事を確認して
マンティークは行動を起こした。
それは、ある人物と同じ波長の魔力を
城の中でちらつかせる
……ただそれだけ
しかし、それで十分だった。追いかけっこを続ける二つの大きな魔力
追っていた方の魔力が一瞬動きを止めて、再び追うように動き出したのを感じ
試みが成功した事を確信した。
「全く……男は辛いねぇ……」
ニヤリ、と口元が闇に輝いた。
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その夜、ファフニールが城を巡回している時、気配も無く正面から現れたのは
紅い鎧の勇者
また、新しい勇者か……と呆れた顔は、瞬時に真面目な顔へと切り替わる。ファフニールの第六感がこの存在が危険であると警報を鳴らしていた。
冷や汗を垂らしファフニールは即座に城中のワームを手元に呼び寄せた。
幾百、千のワームが次々とファフニールの幼い身体をはい上がり、張り付き、瞬く間に硬化していく、
B級ホラーのような異様な光景
ものの数十秒で身長三メートルを越える石の巨人が現れ、侵入者を排除するためにその巨大な腕を振り落とした。




