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18、魔王様のコレクション

あれから三日



城の片付けは未だ終わっていなかった。


散らかすのは簡単なれど片付けるのにはその倍以上かかる


引きこもったその日に、手分けして魔王を探した時に開け放った物置やタンスの扉、その時たまたま見つけて遊んで遊びっぱなしのゲーム盤等の多量の遊具の収納


ファフニールが暴走した際に破壊されたランプや装飾品の修理、未だ城全体に散らばるワームの駆除&汚染の浄化


なにせ、やる事が多過ぎる

未だ魔王城の掃除は7割しか終えていない


……いや、寧ろよくこの人数この時間内にここまで進められたと言うべきか………



「勇者っち寝てないで」



掃除など全くやる気の無く端の方でグースカ寝ていた勇者を起こす。



「…………」



寝起きで頭の働かない勇者は部屋の中をあっちへフラフラこっちにフラフラ

寝ていて貰った方が掃除がはかどったかもしれない



「にしても何なのかしらこの部屋」



「なんか変なものばっかり置いてありますよね」



廊下の突き当たりに位置するこの部屋はイロイロ物が敷き詰まった。物置のような部屋なのだが

置いてあるものは

謎の四角い箱(β方式のビデオデッキ)やら紙の巻いてある杖(和式傘)やら先端に半円球の付いたクネクネしたもの(電気スタンド)数字の書かれた板(電卓)等

ファンタジーの世界ではまず見かけ無いような物ばかりだ。



勇者は何となく床に落ちていた、あるものを拾った。

上の出っ張りに丸、四角、三角、二本線の描いてある奇妙な楕円の形の箱



試しに上の出っ張りを押し込んでみる……


すると…………


チャチャン、チャン


突然箱から音が鳴り出した。


ビクッ

と手を離して床に落とす

相変わらず音が鳴りつづけるそれを四人は揃って凝視する


“さぁ!ニャンニャン体操の時間だよぉ~~!!良い子のみんな!!お姉さんと一緒に元気に踊ろ~!!”


若い女性の掛け声と共にニャンニャンと軽快な音楽


“手を頭に載せてニャーォ……右手を前に出してぇ~猫パンチ!!”



「おいお前ら、勝手に休んで何やって……」



井戸から水を汲み取って戻ってきた魔王が

サボっている四人を怒鳴りかけて固まる

部屋の真ん中で四人の注目を集めている物体……

それは最近の魔王がマイブームで、風呂上がりに毎週欠かさずやっている“よいこのニャンニャン体操”のテープがセットされたカセットテープ


何故それが!?



「魔王様……この鉄の箱は何なんですか?」



テープの内容について聞かれたらどうしようとドキドキしたが

ファフニールが目の前の今まで見たことも無い物体について不安そうに聞くのを見て


ダイジョウブ、マダバレテマセン、ウン


ホッと息をつく



「ああ、それは異世界から取り寄せた音を記録して再生する道具だ……たしかテープレコーダ、とか言ったな……害は無いから安心しろ」



「………異世界って……」



魔王の発言に驚きをあらわにする

この世界ではお伽話等で異世界から召喚された人間や魔物の武勇伝はよく聞くが

実際に召喚される様子を見た者は誰も居ない

異世界なんて、物語の中にしか出て来ない迷信の類だと思っていたのだ。

今まで異世界と交流があったなんてそんな事聞いた事も無いし、嘘である可能性もあったが、部下達は魔王がそんな下らない嘘をつかない事をよく知っていた。



「確かに魔王様、異次元空間を作るのが得意だって言ってましたけど……そんな事も出来るんスか?」



「いや……俺の作った空間に不法侵入した“自称”通りすがりの旅人と取引してな……」


作った、というのは恐らく異次元空間の事だろう

マンティークが顔をしかめる。



「……つかぬ事をお聞きしますけど異次元空間って外部から侵入なんて出来るんですか?」



「出来る訳ないだろ」



あっさりとそう言いのけた

異次元空間とは他からの干渉を一切排除した空間である、全ての出入りは制作者の意思によってのみ行われ

外部から侵入する事は絶対に有り得ない



「……まぁ、あの化け物は頭上半分を吹っ飛ばしても涼しい顔してたからな………それぐらいはするだろうよ……」



思い出すのもウンザリだという顔で呟いた。


今の発言はこの世界の根底を覆すような物だったが

それ以上にそんな化け物と取引する魔王にある種の尊敬の念を禁じ得ない



「これも、そいつから手に入れた物のうちの一つだ」



「そうなんですか………」



ファフニールが納得したように呟いた



「………ニャンニャンやってるのか?」



グはっ


勇者の突然の不意打ちに打ちひしがれる魔王、



「そそそそんな訳あるかぁ!!!」



そんな訳あります。



「………そなのか」



ラプラサスが“ぷ”と吹き出す



「あはは!さすがの魔王様でもこんな子供の踊りをする訳無いじゃない!」



ラプラサスの珍しく魔王をフォローする言葉がビシバシと魔王の心を痛め付ける。


まおうはせいしんに100のだめーじをうけた



「他にもイロイロありますけど、これ全部異世界の道具なんですか?」




「……!…あ、ああ一応この部屋のは全部そうだ……」




「へぇ~凄い!!使い方解るんですか?」



「いや……使い方は別料金だとかほざいてどっかに行っちまいやがったよ……あのクソ野郎………まぁそれでもイロイロ研究して多少なら解るようになったが……」




「じゃあ!!私達にもイロイロ教えて下さい!!」



欲しい玩具をせびる子供のような瞳を輝かせ魔王を見つめるファフニール



「あ……ああ……」



「やった!!じゃあさっそく!!、これは何ですか?」



「私もこれが気になるんだけど…



「これ教えて下さいっ!!」



「……………ん」



ファフニールに返事を返すと四人は方々に次々と部屋の物を押し付けてくる



「……………」



言ってしまった手前今更NOと言えない魔王は次々に沸いて来る四人の疑問に受け答えしていく……



それから半日の間、部屋では異世界の道具についての研究会が行われる事となり。


魔王が解放されたのはもう深夜


やっとの事で部屋にたどり着き、疲れた足どりでベッドに見を投げ出し枕に顔を埋める。


疲れた……………ん?



何か忘れているようなと頭を悩ませ………

考えを放棄しようとした所で気づく



あれ………掃除は?



気づいたものの、もはや疲れきった魔王は何もする気も起きず……



もういい……や



闇に意識を沈めた。





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