16、レッツお風呂
女と判明してから魔王が若干お色気要員になってるような気が…………
…………まぁ、いっか(思考放棄)
城の中の片付けが大方終わった頃
一息ついて、お茶の時間にする事にした
幸運にも残った茶菓子を出し
お茶を炒れる
優雅な時間が流れる
しかし
「……臭い」
その場に似つかわしくない臭り(かおり)……………
どこからともなく漂って来る異臭
臭いの原因を探ってみると…………
発生源はファフニールだった。
恐らく先の暴走でワームを大量発生させたり…あのゲテモノと呼ぶのもおこがましい生物兵器を作っていたのが原因だろう
服の所々に緑やオレンジ色の物が付着し見た目にも汚い
「……風呂行きだな」
ギロリとファフニールを睨む
「いっ嫌です!!!」
即座に魔王の言葉に猛反発する
……ファフニールは昔から身体を洗われる事を極度に嫌っている(清潔を好まないのはファフニールの一族の性質だがファフニールは輪をかけて酷い)
本人曰く『身体の汚れは私のアイデンティティ』だそうで
汚れを好む、きっちゃない彼女にとって
風呂なんて以っての外なのだ
「私、そんなに汚くありません!!!」
「全身から異臭漂わせてる奴が何を言う」
「わ、私は女の人以外にハダカを見せられません!!」
「俺も一応女だが?」
ばれてしまったこの際だから完全にぶっちゃけた。
「見た目が男の人じゃないですか!!」
なにげに酷い発言をするファフニール
次から次へと言葉が紡がれて
まぁ………盗っ人猛々しいとはこのことを言うのだろう(違うか?)
「どうしても、と言うのなら魔王様が女の人になって一緒に入ってくれるなら考えても良いですよ」
そんな事まで言い出した、
魔王は女の姿を嫌っているみたいだから絶対にそんな事はしないだろう……というある種の確信を以って言ったのだが
「ふむ………」
パチ
指を鳴らすと同時に縮む身体に丸くなる体型
「へ?」
魔王はアッサリと女としての正体を現してしまった。
「これで満足か?今更隠した所でどうしようもないからな」
「ああ!!ずるい!!ならあたしも」
ラプラサスが自分も混ぜてとせがむが…
「部外者は引っ込んでろ」
冷たく突き放された。
軽くいじけているラプラサスを無視して
ワシリ、と魔王がファフニールの頭をいつかのようにしっかりと掴む
なおも嫌だぁ!!と叫ぶファフニールを『往生際が悪い』とズルズル引きずりながら魔王は入浴所に向かった。
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「うぁ………」
必死の抵抗虚しく、鼻の穴から指の先まで隅から隅まで体中を徹底的に洗浄されたファフニールは精根尽き果てたように浴槽に横たわった……卵のようにツルッとした餅肌が眩しい…。
「うう………体がスースーして気持ち悪いです……」
「なら、次からは調子に乗るな」
魔王にバシッと言われた。
ファフニールが暴れまくったせいで、身体中ビショビショになり、ついでにだからと湯舟に浸かったそんな魔王を横目に見て。
「…………魔王様って美人ですよね……」
ぽつりとファフニールが呟いた
「…………そうなのか?」
一瞬静止して
結構真顔で魔王は聞き返した
「え、と十人居たら十人振り返る程度には………」
「ふーん」
自分から質問した癖にさして興味も無さそうに流してしう魔王。
「あのー何か思う所とか無いんですか?」
あまりに素っ気ない反応に思わず聞いてしまった。
「んぁ?別に………なんでだ?」
「いや……魔王様……自分が女だって知られるの嫌がってましたから………」
バツが悪そうに頭を少し掻いて
『あー、その事か』と
少し悩んだ後、言葉を紡いだ。
「………女だ、なんて言ったら敵味方関係無しに嘗められるだろうが、…………魔王なんて人から認められなければただの飾り、そうなれば俺が居る意味なんて無くなるからな」
魔王とは、ある種の象徴でもある。
その象徴として絶対的に必要なの物が強さであり
弱き象徴では誰ひとりとしてついては行かないだろう
女である事が弱さの証明であるとは限らない、むしろ全くの偏見であるが人々(?)はそうは思わないだろう、『女の癖に』『コイツで大丈夫か?』と口々に言うに違いない……
………そういう不信があっては国は纏まらないのだ
「………そんなもん、なんですかね」
「……そんなもん…だ」
少しの沈黙の後
「……そんなこと無いと思います………少なくとも私は……」
そんなファフニールに
魔王はふ、と笑いかけ頭をそっと撫でた。
「魔王様ーーー!!!背中流しましょうかぁーー!!!」
「ぶっ」
しんみりとした雰囲気をぶち壊すように、突然扉が開きラプラサスが突入してきた、思わず魔王が吹き出す。
「な、何を……」
するつもりだと言葉を続けようとするが
その前にラプラサスは言葉を待たずに素早く魔王の背後に廻る
「さささ、遠慮無く」
背中流すんじゃないの?
と疑問に思うファフニールをよそに
湯舟の中で何を流すのかとかそういうのは関係無く
魔王の意向を完全に無視してあらぬ所に手を伸ばす。
「ひゃ、お前、何処触って……」
「ふふ……何処でしょうねー」
「な、うあにゃあああ!!!!!」
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陽気の中で一人茶を飲む勇者………
「…………姦しいのな」
風呂場から聞こえる悲鳴を聞きながら勇者はそんな事を呟いた。