14、ヒロインが正体を現し………ええええ!!???
まさかの急展開、
風呂、それは癒しの空間
「ふは~」
この時間だけは人目を気にせずに生まれたままの姿を曝す事が出来る
この身にかけた身体に負担が掛かり疲れで肩がカチコチに凝る術を解き、
至福の顔で浴槽の中で伸びをする
本当は、毎日のように入っても良いぐらいだが
魔王の身体はフケや垢で汚れる事は無く、必然的に風呂に入る必要がほとんど無いし
そもそも、魔王である自分がそんな女々しい事をしていたら周りに示しがつかない
「………まぁ、今更な感じはするがな」
勇者に負けて、いいように使われる毎日に魔王の威厳なんてものは、とうの昔に風化して意味の無いものになっている
ホントに全くと言って良いほど
何だか考えててイライラしてきた
「こン畜生!!」
怨恨の掛け声と共に
八つ当たりに近くにあった桶を握り全力で放り投げつけると、一直線に闇を突き進んだ桶はカコーンと間の抜けた音を立てて壁を跳ね返り放物線を描いて何処へとも無く消えていった
「けっ」
浴槽に沈みその長い髪を弄り玩ぶ
片手間に
天まで届く氷の柱
指の上に小太陽やブラックホール
闇で出来た彫刻
そんな物を作りながら
本当は俺だって強いんだぞーーー!!!
と一人いじける魔王
制限無しならどんな神にだって負ける気がしない魔王だが、実際にはそういう訳にも行かない
深く、一つ溜息をついて
そろそろ出るか………
水を滴らせながら浴槽を立った
_______
「………痛」
額にコブを作り、日が昇る前の真っ暗な廊下を勇者は桶を片手に歩いていた。
寝ている最中に何処からとも無く飛来してきたそれ、
どうして自分の所に飛来してきたのか判らないが、どっからどう見ても風呂で使う桶にしか見えないそれ
魔王に之を何処に返せば良いのか聞こうとしたが、何故か魔王は部屋に居なかったため、勇者は仕方が無くうろ覚えの記憶を頼りに風呂場に桶を返しに来ていたのだ
「………ここか…?」
解りやすく大きく温泉マークの付いた扉の前で立ち止まる
誰か……魔王が、中に居るのを感じた……まぁ、魔王なら入っても気にしないかと扉に手をかけようとするが……
ガチャ
扉を開くハズだった勇者の右手は
「………ん?…」
何故か触り心地の良い小ぶりのマシュマロを掴んでいた。
そして、目の前には半裸の黒長髪の美女が………目を見開いてこちらを見下ろしている………
「な……んなん」
「……へ……ぁ?」
状態を把握しきれない双方は共に驚愕の表情をあらわにしながら完熟したトマトのように顔を真っ赤にし、訳の判らない意味不明な言葉を発しながら動く事も出来ずにいた
そして、二十秒後美女が沸騰したヤカンのように顔全体から煙を吹き出しながら
「ん…な………、んにゃぁああああぁぁあぁああ!!!あ!!!あああ!!!あああ!!!!!!!あああぁ!!!!あ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
城全体が揺れる程の大声を上げながら
勇者を平手打ちで50メートル程吹っ飛ばした後に
着る物を着る事も忘れて
何事かと魔王の部下達が寝室から顔を覗いているのも構わず
ハダカにタオル一枚で全力疾走して、真っ直ぐに¨魔王の部屋¨に駆け込んだ美少女
叩かれる直前に咄嗟に出した防御障壁で殺せなかった衝撃とその前に受けた精神的なショックで、顔を真っ赤にしながら目を回して倒れる勇者
「………う……な」
何が起こったのか
判らない部下達はただただ互いに顔を見合わせるのであった。
やっちまった感があるなぁ……
けど後悔はしてない