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11、勇者は動揺したようです




「王国の双子の王子、王女が行方不明……ねぇ……」



朝、魔王はコーヒーを飲みながら机に拡げた新聞を読み呟いた。

月に二度発行される王宮ご用達の新聞

数日前、緊急に増刷されたと聞いて手下を使い取り寄せたのだ



「何か不満でもあったんですかね?」



とファフニールは沼ガエルの目玉を頬張りながら言った

因みにマンティークは昨夜に飲みすぎてベッドの上、ラプラサスは朝の行水、もとい水汲みに行ってこの場には居ない



「さぁな、俺も魔王だが、人間の王族の事なんかサッパリだ」



しかし、少しは解るような気がする

上に立つ者は多かれ少なかれ、プライドやら体裁やら、様々なプレッシャーに苛まれる、この双子はそれに堪えられなかったのだろう


……何にしてもコチラには関係無いか、と魔王は新聞を閉じた


「………ごちそうさま」


食事を終えると同時に机を立ち扉に向かう勇者



「あれ、どこ行くんですか?」



「………さんぽ」



「じゃあ、終わったら魔法の続きを教えてくださいね」



いつの間にそんなもん教えてたんだ、という魔王のツッコミは完全にスルーして

了解、と手を挙げて勇者は部屋を出て行った


________


__暫く後、


「うはぁ………まだクラクラする」



二日酔いでフラフラしたマンティークは城内をうろうろしていた。


昨晩

魔王の倉庫で年代物の古酒を見つけたマンティークは魔王に『要らないからお前にやる』と言われ一人酒盛りをしていた

しかし、調子に乗って飲み過ぎたのが災いして

今朝になって頭がズキズキと痛みだし今の今までベッドから起きられなかったのだ


また倉庫で薬でも貰うかと重い足をズルズル引きずっていたところ


見知った顔が辺りを気にしながら中庭に入っていくのを発見


見つかって無い事を良い事に後を追って窓から様子を見ることにした。

見ると勇者が地面に線を引き探索の法陣を書いている


対象の身体の一部例えば髪の毛等を媒体に法陣に対する対象の位置とその詳しい挙動を知ることが出来る魔法陣だ


ただし、対象との距離が遠い程、多くの魔力を消費し精度が落ちるので大抵の魔術師は半径数百メートル範囲内でしか使う事ができない、

また、相手が隠蔽をかけている場合、相手を捕捉できず術は発動しない


最も前者は、勇者の魔力を以ってすれば

いくらでも広い範囲を索敵出来るのだろうが


「……………」



マンティークはこっそりと感覚共有して

その探索対象を覗かせて貰うことにした



視界が山を越え野を越え湖を越え村を越え、更にまた山を越え


森の中に、銀色の滑らかな髪を持ち赤い鎧を纏った人物が木を背もたれに寝ているのを見た、

……恐らく上流階級の人間なのか身につけているものはどれも一級品で森の中に居るというのに異常なほど、汚れが見当たらない

まるでそこだけが異世界に切り取られたように………


マンティークは背中に悪寒が走るのを感じた

術の行使は一方通行で本来向こうからこっち側を見ることはできない

しかし、その人物は突然、碧眼を見開き

明らかに¨コチラ¨を向いて呟いた



『見つけた』



「………!!!」


慌てて術を畳む勇者と盗み見していたマンティーク


術を畳んだ勇者は平常を装うがどことなく顔が青いようにも見える。



「………うう……やばい」



普段感情を殆ど表に出さない勇者だが

相当うろたえているのが一目で解る

あちらこちらに行ったり来たりして完全に挙動不審である


急に思い立ったように動きを止め

勇者は手に魔力を込めて自分の分身となる白い鳩を作り出した。

勇者と同じ魔力を放つそれは恐らく囮か…

………その分身を空に開け放ち



「……これで大丈夫……か?」



しかし、それでも安心出来ない勇者は

合掌して必死に祈る



「……うう……」


どうかお願いします、囮に釣られて下さい、こっちに来ないで下さい、


と無言で必死に祈る


それらの一部始終を眺めて


勇者っちもなんだが大変だねぇ……


恐らく勇者の親戚か兄弟であろうと思われるあの騎士、

術の行使を察知して逆探知をしたのを見て、心臓が爆発するくらい驚いたが

主である魔王をアッサリ倒した勇者の血縁者ならと妙に納得出来た

魔王に報告するべかきかとも思ったが

勇者も相当参ってるようだし来るべき時が来てからで良いかと心の中に仕舞う

余計な詮索をするつもりは無い


触らぬ神に祟り無しってね


不謹慎ながらも、あれ程感情を表にだした珍しい勇者を見られて得した気分のマンティークは



「……それよりも酔い止め……」



酔い止めを探しに倉庫の中に入って行くのだった。




一波乱起こる……か?

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