果てしない旅道の果てに辿り着いた場所
プロローグ 〜 出会い 〜
私の名前は橘末寿と言う名前だった。
末寿という名前の由来は、私が生まれたのが昭和30年代のある年の瀬だった事からから付けられた名前であった。
そして私は享年70数年でこの世を去ったはずである。
『去ったはずである。』と言うのも、この20年程『来るぞ!来るぞ!』と言われ続けられ、メディアでも良く取り上げられていた巨大地震が、そろそろ来るであろうと言われていた時期を過ぎ、雰囲気的にも人々が防災に対して少し油断していた頃、突然、寝室に置いていた携帯が緊急事態を知らせるアラート音を発信、そう『来るぞ!来るぞ!』と言われ続けられていた巨大地震がとうとう発生した瞬間だった・・・
そして私は逃げ出す事も出来ず、寝室の壁が崩壊する迄の事は覚えていた。
多分だが、私は寝室の壁の崩壊に巻き込まれて圧死したのであろう。
で!気がつけば、私の意識が薄らと再覚醒して来たのは良いが、過去にも似た様な状況を経験がした事があったなと思い出す。
実は、私は少し得意な性質を持っていた。
まあこの『得意な性質』と言うのも、他人に話した所で信じてはもらえないとは思うが、三代前と言って良いのか?解らないが、前回の私の意識が再覚醒する前、私はとある九州地方に居を構えていた武家の三男坊だったと記憶している。
そして今回もその時の私の記憶は消えていない・・・
いや『忘れる事の出来ない』記憶・・・
私は重たい具足が入った背負子を背負い、小雨が降り頻る山道を、足を引き摺る様にして父や兄達一緒にとある戦場へと向かっていた。
多分、歳の頃は17歳にも成って無かったであろう。
少し前に元服の祝いをして貰った筈である。
当時の私は、幼い頃から良く一緒に遊んだ『月』と言う名の幼馴染と結婚したばかりだった。
ただ当時の月は、まだ14に成ったばかりで、儚さが残る少女だった。
その新婚である新妻の月を残して、戦いの場である戦場へ向けての遠征中であった。
一族の家長である父は、今回の大きな戦の西方に付き、父の弟である叔父は東方に付いた。
まあ戦国の世では良くある『武家一族の生き残り方』であった。
「もしかしたら、叔父や従兄弟達と戦場で出会い、戦う事になるかもしれない…」と長兄から言われた時には途轍も無く悲しくなってしまったが、長兄が・・・
「これも橘一族が生き残る為」だと悲しそうに言う姿を見て、私は何も言う事が出来なくなってしまう。
その後、長兄が無言で戦場に続く街道を黙々と歩く後ろ姿を、私は今もはっきりと覚えている。
そんななやるせない思いを胸に、雨が降りしきる中100人余りの家臣達と一緒に、馬上の父を旗頭に私達は黙々と歩いた。
幸いな事に、戦場に設定された場所の近くに到着して、戦が始まるまでにはしばしの猶予があったので、体力を十分に回復させる事は出来た。
その間、逗留させてもらっていた寺の境内で、新妻の月に手紙をしたためる時を得たのは幸いだった。
そして私の記憶は途切れ、昭和と言う日本が戦争に負けて10数年が経ち、色々と日本が復興した時代に私の意識が再覚醒したのである。
私の意識が覚醒して最初に思った事は「またオムツか?」と言う思いと、雨が降り頻る中、戦場でまで歩いた記憶と、敵側の槍が私の胸に吸い込まれた瞬間、そして『ああ、もう一度、月に会いたい!』と言う思いの記憶だけだった。
まあその後の私の境遇は、幸福だったと言えるのかどうかは怪しいものではあるが、既に武家社会制度自体が崩壊しており、父は普通のサラリーマン、母は近所にパートに出ている普通の主婦という感じではあったが、まあ両親とも大きな世界大戦の戦中に生まれおり、特に男尊女卑の風潮が色濃かった時代、母はかなり過酷な環境を生き抜いてきたと言う事もあり、かなり考え方が偏った人物でもあった。
そして父親は、割と裕福な家に三男として産まれたが、長男と二男が戦争に出兵して戦死していた事から、家を継ぐ長男として大切にして育てられた迄は良かったが、祖父にとっては後妻である祖母にかなり甘やかされて育った結果、結構な自己中心的な性格に育ってしまい、家庭の事はあまり顧みない人物でもあったと記憶している。
そのせいか、私は幼少の頃は父親と遊んだ記憶が殆ど無い。
そんな訳で、前回の私の幼少期は『ただ単に部屋の中で本を読んで過ごす。』と言う過ごし方しかしていなかったと思う。
まあそれには少々事情もあるのだが、当時の私はかなりの虚弱体質児童だったのだ。
生まれた時も2000g未満の未熟時として生まれ、尚且つ、出産時に臍の緒が首に絡まってしまい、仮死状態で産まれて来たそうで、その結果10歳になる頃まで『小学校の冬休は、病院に入院して過ごす為のお休み』であると言う認識しかなかった様な子供だった。
父はそんな軟弱な私が許せなかったんだと思う。
その反動なのか?私の妹達2人をかなり溺愛していた。
しかし私が10歳の頃、ある変化が起きる。
私が嫌な事を『嫌だ!』と言えない気弱な性格をしていたからなのか?女子達には割と面倒を見て貰っていた事が気に入らなかったのか?ガキ大将的な男子達からの虐めの対象になっていたのだ、毎日の様に学校で虐められて泣いて帰る私に豪を煮やしたのか?父親が近所に在った武術を教える道場に私を放り込んだのである。
父の実家は、元々九州地方の武家出身で、祖父も武道の道場を持つほどに武術には長けていた。
まあこれには色々と事情があるのだが、まあこの時には知る由も無かったが、そんな祖父に育てられた父もまた柔道と剣道は段持ちであった。
学生時代の父は、学校を卒業した後は警察官になりたかったらしいが、家の事情でそれは無理であった様だった。
10歳頃までの私はかなり痩せていて、男子達からは『骨川スジ衛門』とか『ミイラ男』と呼ばれていた事でも分かる様に、本当に骨と皮だらけでひょろりとした子供であった。
その上、食事も『肉が嫌い!魚が嫌い!米が嫌い!パンが嫌い!野が菜嫌い!牛乳も嫌い!』と言って、ほんの少量の『うどん』ぐらいしか食べておらず、拒食症と言っても過言では無い様な子供だった。
まあそれは仕方がないと思う。
体が貧相で貧弱過ぎて直ぐ熱を出す為、胃がまともに食事を受け付けなかったのであった。
そんな私も、嫌々ではあったが習い始めさせられた武道の修練が私を変えたのだろう。
段々と『お腹が空いた!』と感じる事が出来る様になり、好き嫌いも余り言わなくなり、食事の量も普通の子供達と同じ位の食事量が取れるようになって来た頃、当時のブラウン管テレビのCMで流れていたカレーのCMを見て、
『ママ、僕もカレーが食べてみたい!』と言った時は、母は涙を流しながら喜んでカレーを作ってくれた記憶がある。
そして成長期と言う事もあったのであろう。
私の体にも大きな変化が現れた。
手足にも徐々に肉が付き体型もしっかりとし始め、普通の小学生高学年男子達と同じ位の体型に近づいて、以前の様な『肋の浮いていた身体』では無かった。
相変わらず身長はクラスでも一番低く、小学校6年生になるまでクラスのガキ大将達の虐めの標的にはされてはいたが、そんなに辛いと言う事はなかった。
その後の私の人生には、色々な出来事があった。
普通の人達では『経験しないであろう事』を数多く経験してきたと思う。
仕事も、遊びも、そして病気も・・・
青春時代には色々とあったが、35才で普通に結婚して、娘が出来て、孫が出来て、このまま幸せな老後を過ごすのであろうと当時はぼんやりと思っていたが、50才を過ぎた頃、とある病気を発症し、その病気が原因で心筋梗塞と脳梗塞を発症してしまい、心筋梗塞に関しては手術をする事で一命を取り止めたが、脳梗塞は少々手術では対応できない場所に血栓が出来てしまい、そのまま体右半身が麻痺してしまう事となってしまった。
自由に身動きが出来なくなり、ベッドの上での生活を余儀なくされて数年経った頃、枕元に置いていた携帯電話が激しく緊急アラートを発したかと思うと、突然大きな揺れに見舞われ、私の意識は途絶えてしまった。
私の意識が再覚醒したのは、股間に窮屈な布が巻きつけてある事に気付いた瞬間、
「コレは?・・・ もしかしてオムツかよ!?」と、股間に巻かれた布の正体に気付き『また1〜2年はオムツでの生活かよ…』と思った事をキッカケに、これまでの記憶が一気に思い出されたのであった。
まあ『またオムツ生活かよ?』と思ってしまった背景には、前の私『橘末寿』に関する『とある特殊な事情』に関係があった。
それは見聞きした事を忘れにくいと言う事、
一度覚えた事は忘れにくいと言う事、いや、忘れる事が出来ないと言う事、
俗に言う前回の私は『完全記憶』と呼ばれる症例に近く、生後間もない頃、40度もの高熱を1週間以上も出して生死の境を彷徨った事が関係してる様で、そのせいで幼かった前回の私は様々な出来事の記憶がごちゃ混ぜになり、情緒的に混乱して錯乱したり、辛かった出来事が何度も何度も脳内でフラッシュバックして苦しめられたりもしたが、現状の私では体を動かす事も、まともに物を見る事も出来ないので、色々と過去の私の記憶を整理したり、今後の事を考えるには好都合であった。
それから5年弱が経過して、私はもうすぐ5歳の「誕生の儀」を迎える事となった。
この「誕生の儀」とは、新生児の生存率が低い世界では良く行われる『子供の無事な成長を祝う儀式』である。
前々回の人生観で言う所の『七五三の祝』『端午の節句』と同じ様なものだが、今回の私には三人の母と、二人の兄、四人の姉妹達が居るが、それ以外にも、産まれても5歳の誕生日を迎える事が出来なかった兄姉達とその母親も居たらしい。
そうそう、今回の私の父は、手広く商売を行っている『ラスターテ商会』と言う商会の総裁で、父の代になってから中規模程度のしがない商家だったラスターテ家を、約15年程でこの国でも3本の指に入る総合商会にしたらしい。
まあ父が商売をしている姿を見た事が無いから余りピンとは来てはいないが、私が普段生活している家も、前々回の私が生活していた武家屋敷と比較してもかなり大きいと思うし、主に家の家事を行っているのは料理人達やメイド達で、そのメイド達の人数もかなり居る様子だし、まあ私が父親と顔を合わせるのも、10日に1度有るか?無いか?の事だから、私が父の事を余り知らないのも無理は無いとも思う。
私の18才になる長兄は、既に父の店で丁稚として働き始めて1年になり、今年からは父に付いて色々と商売の勉強を始めるらしいが、15才の次兄は、私達が住むフラッシュバイト王国の王都バイトに在る王都学園に、親元を離れて通っている。
ああ、別に長兄の頭が悪くて次兄の頭が良い訳では無い。
その逆で、長兄は頭が良過ぎて早々に王都学園を卒業してしまい。
父から「家業の後継」として商売のイロハの教えを受ける為、ラスターテ商会の本店があるラスタの店に丁稚として修業に入ったのだった。
長兄は、父の店に丁稚として入る前は王都の宮廷からも誘いはあった様だが、
「宮廷の権利争いには一切興味は無い!」とバッサリと切って捨てたそうだ、まあそうだろう。
メイド達の話しによれば、
「旦那様の前に出れば、例え伯爵級の貴族達でさえ、早々には大きな顔をする事は出来ない。」との事だった。
まあどの時代、どの世界でも『資金力』と言う『力』を持った者が強いのは確かなのだ、それに長兄は『虎の威を借りて』でしか威張る事の出来ない様な権力は要らないそうだ、私も長兄の意見には賛成である。
そして逆に、次兄は『学問の虫』だった。
長兄の様に『お金儲け』には全くと言って良い程に興味が無く、次兄の興味は『知識欲』がメインで、知らない事を知るのが楽しいらしい。
メイド達が言うには、
「偶々、我が家に訪れていた魔導士様から聞いたダンジョンのお話しが面白くて、次兄の興味を引いたのでは?」とは言っていたが、次兄は今も実家から離れた王都に在る学園に通いながら、ダンジョンに潜っては覚えたばかりの大魔法を嬉々としてぶっ放しているらしい・・・
そして、その王都の学園の学長は、あの時『我が家を訪れていた魔導士様』だったりする。
私が5歳の誕生日を迎える『月』のある日、父であるハンザ・ホン・ラスターテと、父の第二夫人であり、私の実母であるリステナ・ラスターテに連れられて、私達家族が住んでいるフラッシュバイト王国第二の大都市『ラスタ』に在る『主神レアフィジーネ様を祀る教会』の大聖堂に来ていた。
私達親子三人が大聖堂に到着すると、大聖堂の前には豪華な衣装に身を包んだ老人が、数名の供を従えて私達の到着を待ち構えていた。
「これはこれはハンザ様、リステナ様、ようこそお越しくださいました。」
「ああビスク枢機卿、出迎えありがとう。
この子が儂の三男のアストだ、今日は宜しく頼む。」
「初めてお目にかかります。
アスト・ラスターテ様、私はこの大聖堂で枢機卿を務めさせて頂いていますビスクと申します。
本日は「5歳の誕生の儀」誠におめでとう御座います。
アスト様に主神レアフィジーネ様の御加護があります様に。」と枢機卿だと紹介されたビスクと言う人物が、私達を案内しながら大聖堂の大きなドアを潜る。
大聖堂に入ると、真正面に見える大きなステンドグラスに視線を奪われる。
半裸の綺麗な女性達数人が、1人の美女を囲んでいる様子が再現されたガラス製のステンドグラスだった。
ビスク枢機卿の主導で始まった「5歳の誕生の儀」も進み、
「ではアスト様、祭壇の前にお願いします。」と、白い修道服に身を包んだ修道女に手を引かれて祭壇の前に跪き、予め教えられていた主神である女神様への『感謝の言葉』を紡ぐ、
「主神レアフィジーネ様、無事に5歳の誕生日を迎える事が出来ました。
ありがとうございます。」
「いえいえ、どう致しまして♪」
「えっ?・・・ えぇ〜〜〜!?」
「初めましてアストくん、いえ橘末寿さん、私はこの世界の主神、レアフィジーネです。
私の事は遠慮なく『レアちゃん』って呼んでね♪」
「えっ?・・・ レアちゃん・・・?」
「はい! レアちゃんです♪」
「・・・・・・・」
気付くと、私はいつの間にかギリシャのパルフェノン神殿に似た感じがする場所に居て、目の前には主神レアフィジーネ様だと思われる人が・・・
そして、主神レアフィジーネ様の後ろには、数人の女神と呼べは良いのか?天使と呼べば良いのか?とにかく美しい女性が達が控えている。
今の状況からは少々判断し辛いが、まあ主神であるレアフィジーネ様の付人か?部下?なのは間違いは無いのだろう。
その美女達が、主神であるレアフィジーネ様に対して冷たい視線を送っている。
「おほん! 先ずは貴方がココに来た理由から説明しないとね♪」
「(あっ・・・ 誤魔化した?)」
「あのね、初めに言っておくけど、貴方が考えている事は私には筒抜けだからね!」
「(あっ神様の顔が真っ赤だ・・・)」
「だからっ!思っても思考に乗せない!」
「難しい事を言うな〜」
ふと主神レアフィジーネ様の背後に並ぶ美女達に視線を向けると、彼女達もクスクスと笑っている。
「とにかく話を進めるわね!」と赤い顔をしたままの主神レアフィジーネ様が、私がこの世界に来た事情を説明し始た。
主神レアフィジーネ様の話を分かりやすく要約すると、初代の私は西暦760年代に産まれて、階位も従五位上に叙せられたばかりの貴族家の子息で、当時の帝とも歳が近かった事もあり、帝の側近くに仕える護衛役として務めていたらしい。
で、帝が大陸から来訪した使節団を饗応する為、奈良の都から九州のとある地へと移動する事となり、帝から『側仕えの護衛役』として指名を受けた為、帝に追従して奈良の都から九州の地を訪れる事となった。
当時の外国と言えば良いのか?まあ西の大陸から日本を訪れていた『とある国の大使』の様な立場の人物が、その西の大陸に生息していた『悪しき者』に取り憑かれた状態で訪日していたらしく、その人物に帝の事を悪く言われた事に腹を立てて、その大使の首を跳ね飛ばした事が原因らしい。
「何やってんだよ当時の私・・・ 」と、意外な事実を主神レアフィジーネ様から聞かされて驚愕する。
「そんな事情で、貴方は七代に渡ってその『悪しき者』から『幸運の運気』を吸い取られ続けてたの、で!貴方を守護していた守護霊は、元々は『悪しき者』に取り憑かれていた者とは言え、貴方が『他国の要人』の首を刎ねて殺してしまったのは事実、貴方の『自業自得』だと黙して貴方を見守っていたらしいの、しかしこの『悪しき者』が取り憑いていた人物も、元から『狡賢い小悪党』だった様で、そもそも貴方を怒らせて暴言を誘い、他国の大使に対して無礼な対応を取ったとして、貴方を『帝の側近くに仕える護衛役』の座から解任させようとの腹積りだったらしいのよね〜
ただその小悪党、余程貴方の事が気に入らなかった様で、尽く貴方の『良運の運気』を吸い取って嫌がらせをしていたみたいなの、前回の貴方にも身に覚えは無いかしら?分かりやすい所では大切な状況での突然の事故とか?病気とか?小さな所では突然の腹痛に襲われて大切な待ち合わせに遅刻するとか?」
「あ〜・・・ 有ったな〜 学生の頃は何度も腹痛で大切な試験に遅れるとか、ずっと片思いしてた女の子との初デート当日に、家を出ようとしたら階段を踏み外して頭を打って救急車で運ばれて、しかも彼女に一切連絡が取れなかった事で、彼女が怒ってしまった挙句、彼女の友達周りからも激しく罵られたり、何の因果か物凄く過酷な仕事をする事となったり、理不尽な上司に面倒な事を色々と押し付けられたり、ちょっとした病気が原因で身体が動かなくなって何年もベッドの上で寝たきりになったり・・・ 」
ああ、今思い出しても気分が萎える・・・
「しかも、前世で貴方が亡くなったのも、その『小悪党の亡霊』が貴方住んでいたマンション?って住居の鉄骨の一部が、貴方の上に落ちる様に仕向けた様なの、まあ小悪党の亡霊自体が『重い鉄の塊りで貴方の手足でも潰れれば良いかな?』程度の考えだったみたいだけど、結果としては貴方が住んでいたマンション?の一部が大きな塊となって貴方を押し潰してしまったんだけれど・・・
まあ小悪党の亡霊が、これまでの様にちょっとした嫌がらせをして貴方苦しめて愉しんでいただけなら、貴方の守護霊も手出しが出来なかったでしょうけれど、今回は『小悪党の悪意』で貴方が死んでしまった以上、貴方の守護霊であった人物が『もうこれ以上は黙して観ている事は出来ない!』と言って動いた様なの、それで、貴方の家系的に縁のある『あなたの世界の武の神』にどうにかならないかと相談した所、あなたの守護霊がその『武の神の眷属』となる事を条件に、あなたの世界の武の神が、元々ちょっとした縁があって昔から私と親交のあった『武の神の姉』に相談して、その姉から私に交渉を持ち掛けてして来たの、そして私がとある『交換条件』を提示する事で、貴方の魂を私の世界へと引っ張って来る事が出来たんです。
そんな理由で貴方はこの世界へと生まれ変わり、今日、無事に「5歳の誕生の儀」を迎えることが出来たので、私は貴方をここに招いた訳ですが、
そしてここからが本題です。
私が貴方が居た世界の『武の神』に提示した幾つかの交換条件の内の1つは、貴方が『この世界を自由に観て回る事』がその条件の一つ目なんです。
しかし、私のこの世界は、貴方が以前暮らしていた世界と比べると、色々な意味で『非常に過酷な世界』なの、だから貴方がこの世界を観て回るのに役立つ便利なスキルを幾つか渡してあげようと思って、貴方をここに招きました。
貴方には『私の加護』を通して色々なスキルを付与してあげようと思っているのだけれど、きっと貴方はこの後、この大聖堂の枢機卿に『鑑定スキル』で鑑定を受ける事になると思うの、そしてきっと枢機卿は貴方を鑑定してパニックを引き起こすと思うの、だって貴方の鑑定一覧の一番最後の項目には『主神・レアフィジーネ万能神の加護』と明記される事になるから・・・
この後、その事実が発覚すると、きっと大騒ぎになる筈なのよ・・・
そこで、それを回避する為にも、貴方に私の3人の娘達を紹介しようと思います。」
「えっ!? 娘さん・・・?」
「あら? 私に娘が居たら可笑しいかしら? 私の後ろに控えている彼女達全員が、私の可愛い娘達よ♪」
「ほ、本当に?・・・ いや、主神レアフィジーネ様・・・ 」
「レアちゃん♪」
「・・・・・・ レ、レアさ・・・」
「レアちゃん!」
うん、主神レアフィジーネ様の真顔の圧力が怖い・・・
「はあ〜 ・・・ レア・・・さん・・・?」とかなり頑張った!
主神レアフィジーネ様からの無言の圧力に負けて『レアさん』と呼び直すと、その表情が満面の笑みに、しかしどう見ても子供が居る様には見えないんだよな〜
しかも、こんなに大勢の娘達なら尚更だ・・・
「あらありがとう♪ 彼女達は別に私がお腹を痛めて産んだ訳では無いのよ、私の『神力』と言うか?貴方に分かりやすく言うと、私の力を『御霊分け』とか?『分霊』とかと言った方が分かり易かったかしら?
まあ早い話、各自が『独自の自我を持った私の分身達』って事よ、だから私は未だに処女よ♪」
「主神様が処女って言うな!」
「いやぁ〜ん! 末寿君に怒られた〜♪」
「はぁ〜 なんかどっと疲れた・・・ それとレア様、私の今の名前はアスト・ラスターテです。
アストと呼んで下さい。」
「仕方ないからアストちゃんって呼んであげる。
だから私の事も様では無くて『レアちゃん♪』って呼んでね♪」
「あの、お母様・・・ お話しが全然進んで無い様なのですが・・・ 私達をアストさんに紹介して下さる話だったのでわ?」
「ああそうね、そうだっわね〜♪ えぇ〜っと、今のが私の娘達の一人で、ニマよ♪」
「初めましてアストさん、私は闘神ニマエル、母や姉妹達からはニマと呼ばれています。
貴方に私の加護を授ける事となりました。
よろしくお願いしますね♪」と、自らを「闘神」と名乗った女神が可愛く微笑みながら自己紹介してくれた。
いや、自ら「闘神」と名乗ってはいたけれど、その見た目からは全く想像が出来ないほどに可愛い! 特に頭の上にちょこんと乗った丸みを帯びた猫耳〜♪
『かっ、可愛い♪ ・・・ うん♪やっぱり猫耳って正義だよね♪ 本当に可愛いな〜♪』
「・・・・・・」
『あれ?ニマさんの顔が少し赤くなった?・・・ 赤くなった顔も可愛いな〜♪ あれ?今度は真っ赤に・・・?』
「あのねアストくん、さっきも言ったけれど、ここでは貴方の思考は全員に全部筒抜けなの、だから貴方がニマを見て思った事が、そのままニマに伝わっているって事よ♪ しかし私がこの世界を管理し始めて約二万年、ニマ達姉妹を生み出してからでも約一万八千年余り・・・
女神の顔を羞恥心で赤く染めたのは、この私の世界では貴方が初めてよ♪
しかしあのニマがね〜 へぇ〜〜〜♪ 意外と貴方は・・・
何故か少し癪たけど・・・ まあ良いわ!
私が貴方にニマを紹介したのは、貴方の前の世界では『武の神』に縁がある血筋だったみたいだから、ニマとは『相性が良い』かな?と思って、ニマを貴方の『筆頭守護女神』に選んだのだけど、私の予想以上に貴方達は相性が良さそうね♪
ほらほらニマ、貴女も顔を真っ赤にして頭から湯気を出して固まってないで、きちんと自分で自己紹介しなさい。」
「はっ、はい!お母様・・・ おほん! 私は闘神ニマエル、闘神でもあるけれど獣神としても獣人族たちからは崇められています。
見ての通り私は虎の獣人です。
そして日々主神であるお母様のお勤めを『高位女神』として補佐させて頂いてます。
私が守護女神として貴方に授ける事が出来るスキルは、武術全般のスキルと身体強化魔法に関係するスキル全般になります。
不束な私ですが末長くよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いしますニマさん。」
「あらっ、お母様の事はなかなか「レア」とは呼ばなかったのに、ニマの事は早速愛称呼びよ♪」と別の女神様の声、
「それに、今までも多くの下界の男性達を天界にはお招きしたけど、大概の男性達はニマと顔を合わせると、あの胸に視線が釘付けになって『巨乳だ!』とか『あの胸を揉んでみたい!』とか『あの胸の谷間に顔を・・・』とか、欲情している男達の思考がだだ流れなのに、今回、彼が一番に考えたのが『可愛い♪』だもの♪ 流石に巨乳だの何だと欲情している思考を向けられるのとは違って、ニマも私達も美人だの何だのとは言われる事は多いけれど、彼の最初の思考が『可愛い♪』だものね〜、流石のニマも思わず『キュン♪』ってしてしまうわよね〜♪」とまたもや別の女神様の声、
「そうそう、見た感じニマも満更では無いみたいだし〜♪」と別の女神様の声が聞こえる。
「これって実はお見合いの場だったりして?しかもさっきの会話って、下界の方達が行う結婚の挨拶だったりする?」と、また別の女神の声が届く、
主神レアフィジーネ様の背後で、他の娘達?女神達?が好き勝手に黄色い歓声を上げながら騒ぎ始めたが、後を振り返った『闘神ニマエル』のひと睨みで、その場の全員が顔を青くして黙り込んでしまった。
ニマに睨まれた他の女神様達と一緒に、何故かレア様も斜め上に視線を逸らして大人しくなってしまった・・・
「あの〜 筆頭守護女神って・・・?」と、筆頭と紹介されたって事が気になったのと、場の空気を変える為にも聞いてみると、
「あのねアストくん、私の加護スキルが高位女神一人だけで誤魔化せると思う? 無理だよね? だからアストくんには、ニマを含めて『三人の高位女神』を守護女神として付ける事にしたの、そして彼女達の配下にはそれぞれ10人の中位女神、その中位女神の配下には下位女神や天使達を含めると大勢の娘達が居るわ、高位女神の娘達は『私の代役』としての職務もあるから、貴方に付き切りにはなれないけれど、その配下の娘達『誰か一人』は必ず貴方を見守っているから、そこは安心して良いわ、そろそろ他の娘達も紹介しないとね、彼女はロラよ♪」とレア様が後ろを振り返る。
「初めましてアストさん、私は時空神ロラダーナ、見ての通り人族です。」
『うん、この女神様も美人さんだ、しかも何だか和む雰囲気が良いね♪』
「もしかして私もニマと同じ様に貴方の攻略対象になってます?まあ私も少し下界の方々が行う『恋愛』に興味があるので、攻略されても良いとは思ってはいますですけど・・・」
「えっ!ロラさんを攻略?」
「ほらほらロラ、話が進まないから、その話は後でゆっくりとしなさい♪」
「は〜い!では改めて、私は時空神ロラダーナ、ニマと同じく主神レアフィジーネ様の娘の一人で、高位女神です。
私が守護女神として貴方に授ける事が出来るスキルは、空間収納スキルに感知魔法スキル、そして亜空間魔法系統のスキル全般です。
是非、私の事もロラとお呼び下さいね。
そして、不束な私ですがニマ同様に末長くよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いしますロラさん。」
「次は私ね♪」とロラの自己紹介が終わると同時に、後ろからもう一人の女神様が顔を覗かせる。
耳が長くて、胸が大きくて、腰もキュッと引き締まっていてスタイルが良い。
「そうそうその思考!その思考なのよ!男達はその思考が普通なんだよな〜 だからニマは堕ちたんだろうな?私はアストの好みじゃあないのかい?」
「いえ、貴方も十分にお美しくて、私の好みのタイプですよ!」
「有り難く褒め言葉だとして受け取っておくよ!
私は高位女神のララ、『真理神ララーナ』だ、貴方に授けるスキルは鑑定魔法スキルに、ライブラリースキル、そして秘匿に関するスキルだ、」
「秘匿に関係するスキル?」
「ああ、私は『真理神』だ、即ち真実を司る神だが、時には人に伝え無い方が良い真実が有るのもまた事実、その事実を『秘匿』するのも私の役目だからな、アストは事実を知ってガッカリした事や、裏切られた気分になった事は無いかい?」
「ええ沢山ありますね、」
「それに、下界では『秘密めいた女性はモテる!』って聞くしな♪」
「それって、絶対に悪女的女性か何かですよ?」
「そうなのかい?まあ今後のアストには絶対に必要となるスキルだよ、先ずはモノは試しだ、アストのスキル覧を開いてみろよ、
今日この時、まあ正確に表現すると、この世界で暮らすエルフ族、獣人族、ドワーフ族にホビット族、竜人族に魚人族達その他全ての生命が、主神であるレアフィジーネの祭壇の前で、私達の母様に5歳の誕生の儀に対する『感謝の言葉』を唱えると、
誰でも『スキル一覧』と念じるだけで、自分自身のスキル一覧が確認出来る様になるのさ!
無論、ゴブリン達の様な低級な魔物達ですら例外ではないよ、但し『主神レアフィジーネ様の感謝の言葉が伝える事が出来たら』だけどね! コレはこの世界の全生命体が知らない『真実』さっ♪」
「・・・・・」
思いもしなかったこの世界の真実が、何事でも無い様に、いとも簡単に暴露された事に思わず困惑してしまう。
「アスト、何もそんなに固まる事は無い、この事実は誰も不思議にも思わないし、誰しもが『当たり前』だと認識している現象であり事象だ、その真実は主神レアフィジーネ様からの全生命に対しての『祝福』だったとしてもね♪」
確かに真理神ララーナが言う通り、このスキルは全ての生命に対しての主神レアフィジーネ様からの『祝福』だと思う。
この『スキル一覧』と言う自分自身の能力を可視化して確認する事が出来るスキルは、色々な意味で人々の生活に大きな恩恵をもたらしていた。
なんせ自分自身の能力を正しく把握する事が出来る事で、より多くの人達が自分自身に合った生き方を選択して生きて行く事が出来る様になるのだから。
「まあそんな事より、先ずは『スキル一覧』と頭の中で唱えてみろよ!」
真理神であるララに言われた通りに、頭の中で『スキル一覧』と念じると、目の前に私の名前を始め、様々な情報が文字として現れた。
名前 アスト・ラスターテ
年齢 5歳
レベル 1
HP 10 / 10
MP 50 / 50
------------------------------------
スキル
武術スキル・レベル1
身体強化魔法スキル・レベル1
空間収納スキル・レベル1
感知魔法スキル・レベル1
鑑定魔法スキル・レベル1
ライブラリースキル・レベル1
生活魔法スキル・レベル1
------------------------------------
秘匿スキルで秘匿されているスキル
亜空間魔法スキル・レベル1
真実鑑定スキル・レベル1
------------------------------------
フラッシュバイト王国・第二都市ラスタ在住
父 ハンザ・フォン・ラスターテ ラスターテ商会 / 総裁
フラッシュバイト王国 / 名誉伯爵
フラッシュバイト王国 / 財務省顧問
母 リステナ・ラスターテ
姉 クラリス・ラスターテ
------------------------------------
神々の加護
主神レアフィジーネの加護(秘匿加護)
闘神ニマエルの加護
時空神ロラダーナの加護
真理神のララーナの加護
------------------------------------
「うん、ちょっとスキル一覧に記載されてるスキルが多い気もするけど、まあ誤魔化せる範囲内で収まっているようだ」と真理神のララ
「そうなの?」
「ああMP値やHP値に関しては、アスト達人族の同世代の子供と比べても普通だと思うけど、スキルは多くても『生活魔法スキル』を含めても3つが普通だろうね、それこそアストは勇者や賢者、女の子なら聖女として成長していく予定の子供達よりも多いぐらいだ」
「えっ、勇者とか賢者レベルなんて望んで無いけど・・・」
「まあこれはお母様、いえ『主神レアフィジーネ様の過保護』ね、そうでしょお母様?」
「だってアストくんには私のお願いを叶えて貰わないとだし、私の加護を誤魔化せるにはコレぐらいのスキルが無いとね〜」
「まあ分かってはいましたけど・・・ ではアスト、スキル覧の一覧に有る武術スキル・身体強化魔法スキル・空間収納スキル・感知魔法スキル・鑑定魔法スキル・ライブラリースキルから、ニマが授けてくれた武術スキル、ロラが授けてくれた空間収納スキル、そして私の授けた鑑定魔法スキルを残して、後のスキルは私が授けた『秘匿スキル』を使って秘匿覧に移動してしまいましょう。
そうすれば他人から鑑定スキルでアストのスキルを覗かれても、アストの秘匿スキル覧に移動させたスキルを知られる事は無いわ!」
「どうすれば良いの?」
「簡単よ、アストに分かりやすく説明すると、スキル覧に載ってるスキル名を指先で『クリックして、秘匿スキル覧にドロップ』するだけよ♪」とララに教えて貰いながら、指先でスキル一覧に表示してあるスキルを触り、そのままスキル秘匿覧に滑らせると、本当に移動させる事が出来た。
「これで、この後アストの意識が下界のに戻って、枢機卿から鑑定を受けても大丈夫な様に対策が出来たな、しかしこれだけアストのスキルの偏りが大きいと、将来的にアストが就ける仕事も結構限られて来るな、」
「う〜ん・・・ 将来の職業か〜 正直言って実感が無いです。
だって今回の私の年齢はまだ5歳だし、この世界のシステムと言うか?経済や情勢も理解出来て無いし、今の私の周囲の事もそんなに理解出来て無いから、先ずは色々と知る事からかな?第一、自分の父親が名誉伯爵様で、しかも国の経済に関わる重鎮だったなんて初めて知ったからね!」
「じゃあ冒険者とか?軍人なんてどうかな? 私が授けた武術スキルも身体強化魔法スキルも役に立つし、以前の貴方の就いていた仕事にも近いし」とニマがアドバイスして来る。
「私はニマが言う様に冒険者さんか?商人さんかな?私が授けた空間収納スキルに感知魔法スキル、そして亜空間魔法系統のスキルは、冒険者さんでも商人さんでも重宝されているスキルですよ!」とロラ、
「私が授けたスキルは冒険者も商人も対応可能だが、私が授けたスキルの中でもライブラリースキルは色々な知識を得る事が出来るから、放浪の魔導師とか?旅する学者なんてどうだ?」とララ、
「母さんがアストくんの魂を引き受ける条件として、アストくんが居た前の世界の武の神に提示した幾つかの交換条件の内の1つは、アストくんが『この世界を自由に観て回る事』がその条件だった筈よ、その条件に合わせて私達が守護女神として選ばれたんだし・・・」
「まあ貴女達が今から色々と心配する事は無いわ♪ アストちゃんはまだこの世界では5歳の子供なんだし、私達には瞬きする間の時の感覚でも、下界で暮らすアストちゃんには十分に色々と考えたり、身体を鍛えたり、知識を備えたりする事が出来る時間は有るわ、それに、アストちゃんがどんな仕事に就いても、アストちゃんが『この世界を自由に観て回る事』は、この世界の主神であるレアフィジーネが『定めた事実』だから、絶対に覆る事は無いわよ♪ 例え、アストちゃんの手足が切り取られて、最難易度のダンジョンの最深部に監禁されてもね、まあアストちゃんの手足を切断しようとする者が居るものなら、間違い無く貴女達三人どころか、私が直々に引導を渡しに行くけどね、それが例えこの世界に寄生する魔王でもね♪」と主神レアフィジーネ様、いやレアちゃんが物凄く怖い顔してニヤリと笑っているのを私は見逃さなかった。
そして、さっきの迄の話しで気になった事を聞いてみる。
「あの〜レア・・・さん? どうして今の私の姿はアストの姿では無く、前回の私の姿なんですか? しかも死んだ時は70過ぎの老人だった筈なのに、何で20代頃の若い姿なんでしょう?」
「えっ? 別に深い意味は無いわ! 此処にはアストくんを霊体として呼んでいるし、本来なら姿なんて関係無いわ、強いて言えば今のアストくんの姿も可愛いけど、私の好みの問題と娘達へのサービスかな? アストくんもお婆ちゃんと一緒にお茶を飲んで、お煎餅を食べながらお話しするよりも、若くて可愛い女の子達とお話しする方が良いでしょ?」
『それはそうだな〜 今の身体だとまだ性的な欲望は無いけど、やっぱり若い女の子達とお話し出来るのは楽しい。
あれ?確か主神レアフィジーネ様って、2万さ・・・ 痛あぁ〜〜〜!』と頭の中で薄らと思っていると、突然、物凄く激しい頭痛に襲われて頭を押さえた。
すると頭上から、
「言いましたよね?『アストくんの思考は私達には筒抜け』だって! その頭痛は主神のに対して不敬な考えを持った罰です。」と、主神レアフィジーネ様が物凄く怖い笑顔で笑ってた。
「はい、失礼しました。」
「これがアストくんじゃ無かったら、一瞬で魂を『無』に戻してましたよ!」とプリプリと怒っている。
ただその怒る姿が可愛いかったので、素直に
『主神レアフィジーネ様の拗ねた姿も可愛いな〜 』と思ってしまったら、意外と速い段階でレアさんのお怒りも収まった様で、二度と主神レアフィジーネ様の歳の事には触れない事にした。
まあその後も、事ある毎に主神レアフィジーネの『神罰』と称する干渉と言うか?呼び掛けとして、軽い頭痛がアストを襲う事になるのだが、それは今後のお話し。
「まあ先ほども言いましたが、今後の事は今すぐに決める必要はありません。
アストくんが15歳の成人となるまでに、自分の行く道筋を定めればいいと思いますよ。」とレアさんが優しい顔をして言う。
『そうなんだ。
だったらゆっくりと考えてみよう。』
「それと、どこの大聖堂で私に祈りを捧げても、私と会う事が出来ますよ♪
是非、私とお話をしに来てくださいね。
アストくんとは、もう少し時間を掛けてゆっくりと話をしていたかったのですが、余りアストくんを此処に留めておくのも良くない事でしょうから、今日の所はそろそろ下界に戻りなさい。」とレアさんに言われて私の意識が大聖堂の祭壇前に戻った瞬間、周りから『おお〜!』と言う驚きの声が上がった。
私の意識が祭壇の前に戻ったと同時に、私の目の前にはニマ、ロラ、ララ達三人の高位女神が同時に降臨して、私の額に『祝福のキス』をしたのだった。
「三人の女神様が同時に降臨されるなんて♪」と母であるリステナは素直に喜び、
「女神様が降臨されて、しかも直接『祝福のキス』を授けるのも珍しければ、その女神様が3人の高位女神様だなんて・・・ 」とビスク枢機卿は興奮状態だった。
そんな中、予想外の出来事に一瞬パニックに陥りかけた父ハンザだったが、直ぐに気を取り戻したかと思うと、『直ぐに帰るぞ!』と言って力強く私の手を引いた。
まあそのまま大聖堂に留まっていれば、絶対に良い状況に成らないと父は判断したのであろう。
私を左脇に抱えて、右肩には感動して身動きすら出来なくなった母を担ぎ上げると、足速に礼拝堂のドアを開け放つと、
「マーカス!」
「はい、旦那様。」
「直ぐに馬車を出せ!急いで屋敷に帰るぞ! 後、護衛として付いて来ていた私兵達に命じて、礼拝堂の祭壇の前に居るビスク枢機卿と、二人の修道女達を屋敷まで直ちに連れて来い! 良いか!絶対にあの三人のを他の教会関係者達と話しをさせてはならん! 万が一、誰か別の者と話しをしている素振りが有れば、その者も屋敷に連れて来い! 良いな!」
「畏まりました旦那様。」と答えた父の筆頭執事であるマーカスが、父の指示を受けて直様行動に移った。
一方母はと言うと、もう興奮しっぱなしであった。
父に馬車に乗せられても、
「女神様が・・・ 三人もの女神様たちがアストに祝福を・・・」と感動し切りで、状況が全く分かって無い様子だったが、一方の父はと言うと、馬車の中で私に、
「今日の事は絶対に自分から他人には言いふらしてはならない、もし人から今日の事を聞かれても、正確には返事をするな。
後、あの場にいた枢機卿や修道女達には、私が『お布施』として多額の金を積んで黙らせておく、だからアストは何も心配しなくても良い。」と私の頭を優しく撫でてくれた。
屋敷に着くまで、父は馬車の中で渋い顔をしていたが、その時の私は、父がこの先の私の事を心配して、今取れる対策を色々と練っていたからだと言う事を随分と後になって父から酒の席で笑い話しとして聞いたが、当時の父には笑い話では済まなかっただろう。
その時、父が『女神様が三柱も降臨された。』事の口止め料として、教会に寄付した総額は、金貨にして五千枚にも及んだらしい。
そして教会のビスク枢機卿も、父が支払った金貨五千枚と言う金額に『父の本気度』が伝わったのだろう。
その後、あの日の私の『5歳の誕生の儀』に付いてビスク枢機卿は、
「女神様が降臨されてアスト様を祝福されました。」としか言わなかったらしい。
父の寄付と称した『金の力』に物を言わせた教会への口止めが功を創したのか、女神様は降臨されたが『一柱の女神様』であったと、半分嘘で半分事実の噂が流れるに留まった。
その後の私は、自分の進む進路に悩みながらも、とりあえずは体力作りと生活魔法を覚える事に専念した。
主神レアフィジーネ様に『アストくんの魔力は他の人の何倍も有るから、頑張って勉強すれば魔導師にだって成れるわよ♪』言う言葉に励まされて、大聖堂で主神レアフィジーネ様に出会ったその翌日から、自分の中に内包されている魔力をうまくコントロールして使うことを覚え始め、それに並行して体を鍛えることも始めた。
5歳の段階で頑張って筋トレをしても逆に体が馴染めないというか、身体に余計な負担が掛かって身体の成長を阻害してしまっては意味が無いので、日中は外で元気に走り回り、午後は屋敷の書庫と言えば良いのか?資料室と言えば良いのか?取り敢えず様々な書籍や資料がその部屋には大量に保管してあった部屋だったが、屋敷のメイドが夕食の時間だと迎えに来るまでその部屋に籠もって、片っ端から魔法や魔術に関する書籍を読み漁りながら、5歳から10歳の誕生日の年の夏までわ、割と自由に過ごさせて貰った。
父や母達にしてみれば、午前中は元気に屋敷の敷地内を走り回り、時にはラスターテ家私兵達の練兵場に行って、兵士達を相手に剣や格闘術の練習をしたり、午後からは書庫に籠っている時以外は家庭教師の講義を大人しく聴く子だったので、特には何も言ってくる事は無かった。
そして、あれから約5年の歳月が過ぎ、私は10歳の誕生日を迎えようとしていた。




