第十八話
またもや雨の翌日。
「話ってなんだ? オリンジ」
俺はオリンジに話があると言われ呼び出されていた。
何やら深刻そうな顔をしている。
「先日、街の方から妙なことを聞いたんですよ」
「妙なこと?」
「えぇ。歩美さん、ここ数日ずっと雨続きですよね?」
「そうだな……それがどうしたの?」
俺が問いかけると、彼は窓の外を見つめながら言った。
「どうやらこの雨、魔法で生み出された可能性が高いようなのです」
これまた衝撃的な発言だった。
三日間空から振り続けていた雨が、まさか自然現象では無く魔法によるものとは思わなかった。
しかも──。
「もしかして人の魔法?」
「えぇ。もしかしなくても人の魔法です。最も、人ならざるものの可能性も捨て切れませんが」
オリンジの話だと、魔法というのは基本的に人の手から発動する場合が大半らしい。
後は魔族といった知性のあるものが使うことがあるらしい。
自然現象のような感覚で魔法は起こらないとのこと。
「にしてもやべぇな。三日間も雨を降らせるなんて」
「……そんなことが可能な人間はいないと思いますが……夜中には降らせるのをやめていたのを考慮しても、相当な魔力の持ち主なのかもしれません」
「わぁお……でも何でそんなことしてんだろうな。農家さんでも手伝ってんのか?」
「流石に三日間も降らせていては作物にも良くないので違うかと……いずれにせよ、止めて貰う必要がありますね、街の人にもお願いされたので」
オリンジがそう結論づけると、俺は「うっし」と言って拳を鳴らす。
下手したら戦闘になるやもしれないと考えると、気合いを入れた方が良さそうだ。
「既にナズマさんには協力をお願いしています。彼の生命力と頑丈さは少々尊敬できます」
オリンジが呆れ気味に笑い、俺も釣られて薄く笑う。
正直あの姉弟は生命力高めの部類な気がする。
「では、早速探しに行きましょうか」
「え、もう? 流石趣味探偵さんだね」
「まぁ、頼まれた依頼は手早く済ませた方が良いでしょうしね」
オリンジがコートを羽織り、眼鏡を外してポケットに仕舞う。
「前々から思ってたんだけど、その眼鏡なんで一々取ったりしてんの?」
「あぁ。私の"目"や"耳"を使う際には外すようにしています。付けている理由は……特にございませんね」
「探偵としての雰囲気作りみたいな?」
「……まぁそれもあります」
「あるんだ」
俺達はそんなやり取りをしてながら街を歩いている。
オリンジは辺りを見回しながら歩いていると、不意に立ち止まる。
そしてその場に屈み込んで、何かを凝視し始める。
俺がそれをチラリと見る。
「……水溜まり?」
「えぇ。ここから相手を絞込みます」
「ど、どうやって?」
「この水溜まりには微かに魔力の残留があります。その形質を覚えて、同じ魔力を宿した者が犯人ですね」
「ほ、ほぉ……魔力の残留?」
「ここですよ。見えませんか?」
「うぬぅ?」
俺はオリンジの隣に屈み込み、水溜まりをじっと見つめる。
すると水溜まりにうっすらと青色のモヤモヤが現れた。
陽炎みたいな感じだ。
「ん? なんかウニョウニョが見える」
「そうです。そのウニョウニョが魔力の残留です。それと同じものを宿した人がこの雨を降らせた犯人です」
俺は「ふむふむ」と言いながら、水溜まりのウニョウニョを眺める。
これを覚えて同じものを宿している奴を探せばいいと。
「それでは、ここからは分かれて探しましょう。歩美さん、何かあればなるべく大きな声で叫んで下さい1キロ以内なら離れていても聞き取れます」
「うぃー……1キロ?」
「何か?」
「いやいや……まぁ何でもないっす」
俺はこの人のバグった五感能力については触れないようにした。
異世界では俺の中の常識は通用しないのだろうと、俺は一人納得した。
続く




