第十六話
最近ずっと天気が悪い。
曇りと雨しか訪れていない。
俺は元々剣術の矯正しかやっていないから、別に室内でも問題無いんだけど。
「こうも悪天候ばかりだと、気分が乗りませんね」
窓の外の雨模様を眺めながら、オリンジは苦笑する。
俺は汗をタオルで拭きながら頷く。
「本当にな。まぁ別にやる気は落ちないけど、雨はそこまで好きじゃないからさ……」
昔から俺は雨自体は好きでは無かった。
ジメッとした空気になるのが本当に嫌だったし、たまに頭が痛くなることがあったから。
──あぁ、だけど……。
歩美さんは……確か好きだったんだっけ?
『明るくて騒がしい場所より……薄暗くて静かな場所の方が……好き』
雨が降る日には、決まってそう言っていた気もする。
まるでそれは──"光"を嫌っている様にも見えた。
歩美さんは多くの人から見捨てられてしまったから、必然的に人の集まりやすい"光"を嫌ってしまっているのだろうか。
「……そんなことにも気づけなかったんだな……俺は」
失った後に気づくなんて……皮肉も良いところだ。
「さて。休憩終わったし、もうちょい素振り──」
俺がオリンジに言うと、誰かが部屋の扉を勢いよく開けた。
呼吸を荒らげたナズマだった。
何やら急いで来た様子だ。
オリンジが尋ねる。
「どうしたのですか?」
「い、いや済まない! ただ……姉上が!」
「「!?」」
俺とオリンジは同時に息を飲み、急いで病室へと向かう。
扉を開けると、そこには目が半開きになったカズチの姿があった。
俺は急いでナズマと一緒に彼女に駆け寄る。
「カズチ……?」
俺が恐る恐る声をかけると、カズチはとても眠そうに目を開けながら小さく笑う。
「……歩美……ナズマ……無事だったんですね」
「姉上……っ! 良かった……!」
「……もう。ナズマは大袈裟ですね。私がそう簡単に死ぬとでも?」
ヘッチャラだったと言わんばかりに得意気な様子で、彼女はナズマに笑いかける。
いや、普通あんなに体貫かれてたら死ぬと思うけど……。
異世界人は頑丈だな。
ていうかそれは俺も大概か、なんたって腕を一回飛ばされて……あれ?
そういえばなんで俺の腕は、飛ばされたのにまた生えてきたんだ?
俺は今更になって自分の左腕を眺める。
切り傷や癒合された痕跡も無い。
それに普通に動かせていた。
未だ謎だ、俺の能力はただの魂斬りでは無かったのだろうか?
「歩美も無事なようですね……良かったです」
カズチは俺にも笑いかける。
俺は思わず苦笑いする。
「いやまぁ……俺も正直無事では無かったんだけど……ね」
「……そう言えば。歩美さんはどうやって腕を治したんですか?」
「……それが分からないんですよ」
俺はそう言って首を傾げる。
でも正直、今考えることでは無い気がしてきた。
「と、とにかく! カズチが無事で良かった! 俺もこれから強くなるつもりだから! なっ!? オリンジ」
「そうですね……愉快なメンバーですね」
自分の能力についても、いずれ知っていきたいな。
するとオリンジが口を開く。
「それもそうですが、歩美さんお疲れでは無いですか?」
「へ? あぁ。まぁ確かに疲れたかも」
「疲労回復も特訓の内ですよ。今日はゆっくり休んでください。ここから少し行った先に銭湯とかの娯楽施設もありますし」
「銭湯かぁ。確かにまともに入浴とか出来てないしいいかもな」
そもそも今雨が降ってるし、外には出れないしな。
銭湯とやらに向かうとしよう。
「すぐ近くなので、雨にもそこまで濡れないと思いますよ」
「おう。じゃあ行ってくる。気づかいありがとうな」
「こちらこそ」
俺はそうして雨の降る外に駆り出す。
そして銭湯の前に来て俺はとんでもない事に気がついてしまった。
「…………俺歩美さんの姿で風呂入るの?」
続く




