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弱狼と英雄の杖  作者: Maaaaaaaaaaaaaaasa
ゼレニア国編
3/7

卵と贖罪


深夜2時。人っ子一人いない静かな街。そんな街角に狼が一匹潜んでいる。名は『にんにく』。この狼は非常に重大な危機に陥っている。そう、空腹だ。夕食の量がいつもより少なかったのか、空腹で夜も眠れない状態になっていたようだ。奴はある作戦を立てた。『ドラゴンの卵焼き作戦』だ。奴の家の近くには小さな草原があり、そこには(レッド)ドラゴンが住んでいる。それが眠っているうちに卵を一つ分けてもらう作戦だ。つまり泥棒だ。


にんにくは息を潜めて草原に入る。幸運にもドラゴンはぐっすりおやすみのようだ。恐る恐る、足音を立てずに近付いていく。


ドラゴンは温厚な生き物だ。故障した車を運んだり、子供達の遊び場になったりなど、友好的な生き物だが、怒らせ他が最後、対象が力尽きるまで追いかける。

そんな生き物を相手にするなど、バカバカしい。しかも理由は空腹。冷蔵庫の中の物を食べたら良かったのに、眠気と空腹で頭が回っていないにんにくはそのことを考えもしなかった。


さて、巣に入ったにんにくの手はドラゴンの卵へ向いて動いている。少しづつ伸びる手は微かに震えている。

卵に触れた。いざ持ち出そうとしたとき、


「ン?」


ドラゴンが目を覚ました。そしてにんにくを見つけたようだ。


(レッド)ドラゴン「我が子に何をするつもりだ!!!」


ドラゴンとの追いかけっこが始まった。


都市、路地裏、商店街、畑道…、街を丸々一周するかのような追いかけっこは、日が昇るまで続いた。にんにく達は国の中央広場に着いていた。


にんにく(流石に疲れてきた……ここらで追い払わないと…)


そんなことを考えたにんにくは、魔法で追い払おうと思い付く。後ろには怒り狂ったドラゴンがいる。

意を決して魔法を放った。


にんにく「根っこ!根っこ出てこい!」


太い根っこが地面から生えてきた。その根っこはドラゴンの足に絡みついたが、ドラゴンの強大な力の前では簡単にちぎられてしまった。


にんにく(クッソ…個人的最強技ランキング11位だぞ…)


にんにく「水玉いっぱい!出てこい!」


水滴のような水が複数、ドラゴンへ向かって飛んでいく。どれも効いていないようだ。


にんにく(クッソ…こうなったら…)


にんにくはある一本の木の棒を拾った


にんにく「水!水!」


スプーン一杯程の水が現れ、ドラゴンの目に入る。


(レッド)ドラゴン「うっ…!何をする!」


暴れ回るドラゴンを尻目に家へ戻るにんにく。手にはその棒が握られている。

ドラゴンはしばらくのたうち回ったあと、巣の方向へ飛び去った。


にんにく「ただいま〜」


ガーリック「あんたどこ行っていたのよ?」


にんにく「中央広場」


ガーリック「散歩?」


にんにく「そんなところ」


ガーリック「とりあえずご飯食べなさいよ。」


にんにく「へい」


今日の朝食は皮肉にも卵焼きだった。(ニワトリ)の。


数時間もの間走り回ったにんにくは疲れたようなので、ニラに連絡して眠った。

連絡『今日の稽古休むわ!頑張って起きれ』



翌日。にんにくはずっと眠っている。


『ピンポーン』


インターホンが鳴った。ガーリックが外へ出ると、シトルイユが立っていた。


ガーリック「あらシトルイユさん」


シトルイユ「朝早くに失礼します。ガーリック様。にんにく様はおられますでしょうか。」


ガーリック「いますよ」


ガーリックがにんにくを呼ぼうとしたら、後ろににんにくが立っていた。インターホンで目が覚めたようだが、まだ眠そうにしている。


にんにく「よんだ?」


ガーリック「呼んだわよ!あんた何しでかしたのよ!まったく!」


シトルイユ「失礼、にんにく様。王がお呼びです。」


にんにく「なんで」


シトルイユ「分かりません。王はただ呼んでこいとしか…理由を尋ねたのですがそれでも…」


にんにく「まぁいいや、れっつごー…」


そう言ってにんにくはまた眠りについた。


ガーリック「起きなさい!おーきーなーさーいー!!」


にんにくにまたがって耳を引っ張って叫んでいる。


にんにく「んぁ?うるさい、この安眠妨害」


ガーリック「とりあえず王の所に行きなさい!」


シトルイユ「あの、私がお運びしますよ。」


にんにく「そうしてくれるとありがたい」


ガーリック「はぁ…」


にんにくはシトルイユにおんぶされ、アサツキ王の住む家まで向かった。道中ではっきり目が覚めたようだ。


王の部屋は3階の一番奥の部屋。迷路のような家だが、ここは特に分かりやすい。


にんにく達が部屋の前に立つ。シトルイユがノックをして、


シトルイユ「シトルイユでございます。にんにく様をお呼びしてきました。」


アサツキ「よろしい。にんにくのみ入るがよい。」


にんにくは部屋に入った。部屋の中央に、不慣れな手つきで白いトーガの裾をいじっているアサツキ王がいた。にんにくの目をしっかりと見ている。


アサツキ「シトルイユは行ったか?」


にんにく「行った」


アサツキ「うむ…、久しぶりだなにんにくよ!!元気にしていたか?」


にんにく「まぁぼちぼち」


アサツキ「ニラがいつも世話になっている!感謝しているよ!」


にんにく「まぁどちらかと言うとニラに世話されている方かと……」


にんにくは王を不思議そうに見つめた。いつもはもっと動きやすそうな服を着ているからだ。


にんにく「それよりそんな服着てどうしたんすか 柄でもない」


アサツキ「ハッハッハ!!ただの雰囲気作りだ!」


にんにく「して、なんで呼んだんすか」


にんにくが本題を求めると、アサツキは「そうだったそうだった」と笑ったあと、冷たい真剣な眼差しを向けた。


アサツキ「にんにく、お前、不法侵入しただろ。本人から連絡があったぞ。」


にんにく「…あ?」


アサツキ「昨日の件だよ。ドラゴンの巣に入ったんだろう?」


にんにく「ダメなのか?」


アサツキ「当たり前だ。」


アサツキの声が低く響く。


アサツキ「あの(レッド)ドラゴン――ベニは納税もこなす立派な一国民だ。その安眠を邪魔されて、卵を盗まれかけた。当の本人はお前に相応の罰を与えることを望んでいる。」


にんにく「あぁそう」


他人事な返答にアサツキは溜息をつき、にんにくの腰に差さってある杖に目をやった。


アサツキ「しかしだ、その杖に選ばれた者をわざわざ牢に入れるというのは、英雄が浮かばれないだろう。」


にんにくは僅かに片目を跳ね上げた。


にんにく「じゃあなんなんすか」(てかこれ英雄の杖だったんだ)


贔屓でもしようとしているのか。そう思うと、にんにくの胸には湿った面倒臭さが込み上げてきた。罰するなら、いっそ潔く罰してくれればいい。


アサツキ「かの英雄アニスは『人助け』を好んでいたとのことだ。丁度良い、罰として人助けの命を出す。」


アサツキ王の口角が少し上がった。だがその瞳の奥には真剣な光が据わってある。


にんにく「人助けねぇ…どんなものだそれ」


アサツキ「どんなことでも構わない。困っている民に手を差し伸べてやってくれ。そしてだ、おーい!」


アサツキ王が誰かを呼ぶと、ニラが部屋にやって来た。


ニラ「…やぁ」


アサツキ「こいつを監視として付ける。二人で頑張るんだぞ。」


にんにく「ところでさ、急に人助けをしろと言われても、具体的に何をすればいいのか分からないんだけれど」


「そうだな……」


アサツキは腕を組み天井を仰いだ。そして不意に、何かを思い出したようにポンと手を打つ。


「あっそうだ。近頃、違法な商売をしている『ヘムロック』って奴がいてな。奴隷商人として店を構えているんだが、これがまた厄介なんだ。」


アサツキは、まるで明日の献立でも決めるような気軽さで続けた。


「警察を何人も派遣したんだが、皆奴の魔法の前では手出しができなかった。そこでお前だ、にんにく。奴を捕まえてきてくれ。」


罰の代わりに与えられた命だ。元から受けようとしていたものの代わり。相応の報いとして受け入れようとにんにくは思った。


にんにく「……それはいつまでに終わらせればいいんだ?」


アサツキ「一週間だ。警察にバレてしまっているので、来週の今頃には店を別の所に移すだろう。それまでに奴を捕まえて警察に引き渡すんだ。できれば奴隷達の健康状態も確認してきてほしい。」


にんにく「あぁ〜…いけるかね…まぁいいや、任せろ」


アサツキ「頼りにしているぞ。」


そうしてにんにくとニラは家を出た。


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