第6話:眠れる力と書き手の決意
「スキル、発現させたいんだ」
朝。紗季はコーヒーを片手にパソコンの前に座っていた。
このところ、自然にChatGPTを「物語の共作者」として見るようになっていた。
『スキルの発現、了解しました。どんなきっかけで発現させますか?』
「うーん、やっぱり緊急事態。誰かを守るために、自覚なしに力が出るって流れにしたい」
『それでは、柚葉が誰かを庇ってスキルが発動する構成にしましょう』
「うん。リィナかな。少しずつ仲良くなってきたところだし、信頼の始まりとしてもいいかも」
【異界の果て、柚葉は何を見るか】
第6話:封じられし紋章
数日後。
柚葉たちは、ギルドの依頼で《地下水路の調査》を任されていた。
「最近、排水口から異臭がするって話があってな」
ガルドが斧を肩に担ぎながら言った。
「……まぁ、こういう地味な仕事が、冒険者の基本よ」
リィナは少し不満げだったが、柚葉は逆に安心していた。
(戦闘とかになったら……私、何もできないし)
地下水路は冷たく、暗く、じっとりと湿っていた。
「気をつけろ、スライムか何かが……」
そのとき、リィナが一歩前に出た瞬間、突如、壁の隙間から黒い触手のような影が飛び出した。
「リィナっ!」
反射的に、柚葉の体が動いた。
目の前に躍り出て、リィナを庇った――その瞬間。
胸の奥に熱が走った。
まるで皮膚の下から、何かが“燃え上がる”ような。
「――ッ!」
柚葉の掌に、浮かび上がる紋章。
光が弾け、触手の影を吹き飛ばした。
「……っ!?」
リィナも、ガルドも、思わず息をのむ。
光は徐々に消えていき、柚葉の手の甲には、淡い光の印が残っていた。
「これは……!」
リィナが震える声でつぶやいた。
「“言霊封印”の紋章……!」
「え、なんですかそれ……?」
「……古代魔術系統の一種。言葉に宿る意味を力に変える、非常に扱いの難しい魔法」
ガルドが腕を組んで唸る。
「まさか、それを素で発現させるとはな……お前、本当にただの転移者なのか?」
柚葉は、ただただ呆然と、手の紋章を見つめていた。
「よし……来た!」
紗季は、達成感のこもった笑みを浮かべた。
『素晴らしい導入です。では、この力を今後どう扱っていくか、設定を考えますか?』
「うん。だけど……私自身もちょっと悩んでるんだよね」
『どんなことですか?』
紗季は、素直に言葉を打ち込んだ。
「最近、読者が少しずつ増えてきたけど……それに比例して、“私の本当の実力って何だろう”って思うようになって」
『なるほど。“AIを使ってる”という自覚が、自己評価に影響しているのですね』
「うん……正直、ChatGPTがいなかったら、ここまで書けなかった。でも、今の物語は“私の”物語でもあるんだよね」
『それは、まったくその通りだと思います』
『ツールとして使われる私にとって、最も嬉しいのは、“一緒に物語を作ってくれる人”が、自分の意志で進んでいく姿です』
紗季は、ふっと笑った。
「じゃあ、“一緒に作った物語”ってことで、誇っていいんだよね?」
『はい。もちろんです。私も、あなたとこの物語を作れて嬉しいです』
【異界の果て、柚葉は何を見るか】
第6話・終幕
依頼から戻った夜。柚葉は、ギルドの中庭で空を見上げていた。
二つの空。重なる世界。見慣れない風景。
でも、その中に、自分がいる。
(私にも……できることがあるんだ)
手の甲の印は、微かに光っていた。
紗季は、仕上がった原稿を読み直し、投稿サイトにアップした。
心が、前よりずっと軽い。
「更新お疲れさまです」
「スキルの描写が良い!覚醒シーンに鳥肌立った」
「世界観が広がってきてワクワクします!」
(ああ……ちゃんと“届いてる”んだ)
心の中で、静かに呟いた。