表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/18

第17話:帰ること、残ること、私が選ぶこと

王都・魔道省の聖堂区。

石畳を踏みしめながら、柚葉は王宮の奥へと歩いていた。


護衛の兵たちに挟まれたまま、彼女は一枚の“書状”を握りしめていた。


それは、「帰還」を選ぶ者だけに渡される――正式な召喚解除申請書だった。


「君には、その権利がある」


そう言ったのは、再び現れた黒江カイだった。


「“帰れる”のか、私……」


控え室で独り、柚葉は呟いた。


机の上には、王国の紋章が入った封筒と、書状。

戻るための方法。

でもそれは、“この世界のすべて”を手放す行為でもあった。


仲間たちとの日々。

魔法の力。

“記録者”としての使命。


それを、捨ててでも帰るべきか――






「最終話のラストシーン、ちょっと迷ってて……」


『選択肢を提示したまま終わる方法もあります。あるいは“答えは次章へ”と余韻を残す構成も自然です』


「うん……でも私の中では、柚葉は“すぐに選ばない”気がする。“今は保留”っていう終わり方、ありかな?」


『“決断の猶予”を残すラスト。非常に文学的です。“人生に答えはすぐ出ない”というリアルさが伝わります』


「じゃあ、そうしよう。“選択肢を手に入れたけれど、答えはまだ”って締め方にしよう」





【異界の果て、柚葉は何を見るか】

第17話:白紙の書状と空の下で


夜、図書塔の屋上。


柚葉は、空を見上げていた。


王都の空も、やはり二層に重なっている。

あの世界とこの世界が、交わるように存在している。


そこに、足音が近づく。


「考え事?」


リィナだった。


「うん……“戻るかどうか”って言われても、簡単には答えが出ない」


「当然よ。簡単に決められるなら、魔法なんて必要ないわ」


柚葉は笑う。


「リィナって、たまに名言言うよね」


「……褒めてるの?それ」


二人はしばらく黙った。


「もし、戻るって言ったら……どうする?」


リィナは少しだけ、視線を空から逸らして言った。


「引き止めない。でも、手紙くらいは置いてって。そしたら、私もあなたの記録者になってあげる」


柚葉は、ゆっくりと目を閉じて言った。


「……まだ決められない。でも、今日だけは――この空の下で、ちゃんと悩みたい」


夜明けが近づく。


王国から与えられた“選択肢”――その紙は、まだ白紙のままだった。


けれど柚葉は、それを手に持ったまま、しっかりと立っていた。






第17話を書き終えたあと、紗季は作品ページの冒頭に、短い文章を追記した。


「ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。」


投稿ボタンを押す直前、紗季はChatGPTに聞いた。


「これで、“私の物語”はちゃんと終わったかな?」


『はい。言葉が積み重なり、ひとつの“記録”として残りました。

 そして何より、読者の中にも、記録されたと思います』


「……うん。ありがとう。一緒に、ここまで来てくれて」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ