第16話:帰る者、残る者、選ばれし者
王都エルクレア。
図書塔で“召喚の設計図”に触れた夜から、柚葉は何かが変わったように感じていた。
「この世界に来たのは、偶然じゃなかった」
「けれど、“誰が選んだのか”は、まだ分からない」
答えのない問いを抱えたまま、翌日――
ギルド支部を訪れた柚葉に、ひとつの報せが届いた。
「お前に、面会希望の客がいる」
「……誰ですか?」
「“もう一人の転移者”だそうだ」
紗季は机の上に、印刷したプロットを広げていた。
「“一区切り”にまとめるとしたら、どこまでがいいと思う?」
『“柚葉が自分の力と向き合い、帰還か残留かを意識し始めた地点”で区切るのが自然でしょう』
「うん、それだと王都編で一度終わるのがきれいだよね」
ChatGPT提案:完結構成案(仮)
プロローグ〜第5章:転移、仲間との出会い、ギルド生活
第6〜11章:力の覚醒と初依頼(パン、地下水路、村の事件)
第12〜15章:王都編(記録者の真実、召喚の痕跡、国家介入)
→ 第16〜17章で完結:「選択」の手前で幕引き
「じゃあ、あと2話くらいで締めよう。読者にも一度“旅の区切り”を提示したいし」
『了解しました。今話では、“別の転移者”と出会い、世界観のもう一段深い層を提示します」』
【異界の果て、柚葉は何を見るか】
第16話:選ばれなかった者の記録
王都・ギルド支部の会議室。
そこに座っていたのは、線の細い青年だった。
肩までの黒髪。澄んだ瞳。そして、表情にどこか“諦念”が滲んでいた。
「はじめまして。君が柚葉さん、だよね?」
「……はい。あなたは?」
「高倉翔也。君と同じ、異世界から来た者だよ」
「転移者……!」
翔也は、少しだけ笑った。
「でも、僕は“選ばれなかった方”なんだ」
「どういうこと……?」
翔也は小さく、胸元のペンダントを見せた。
そこには、ひび割れた紋章の欠片があった。
「僕にも、“言葉を扱う力”は宿った。でも、不完全だった。“記録者”にはなれなかった」
「……!」
「選ばれたのは、君だよ。柚葉さん」
彼は静かに語った。
「君と同じように、転移させられた者は複数いる。
その多くは力に耐えられず、ある者は帰還を望み、ある者は残留を選び、ある者は力を失って消えた」
「じゃあ、私は……」
「君は今、“選びかけている”段階にいる。
記録者になるのか、転移者として戻るのか――」
柚葉は問い返す。
「翔也さんは、どうして残ってるんですか?」
彼は静かに目を伏せた。
「君の言葉が、必要だと思ったからだよ」
「私の……言葉?」
「この世界は、“記録された言葉”が力になる。でも、その一方で、“まだ記録されていない誰かの声”が消えていく。
君のような存在がいなければ、その“届かない言葉”は、永久に失われる」
「……」
「僕にはもうそれを掬えない。でも、君にはできる。
君が記録することで、失われるはずの何かが“残る”」
柚葉は、深く息を吸って、小さく頷いた。
紗季は、物語ページにメモを残した。
「第17話あたりで完結予定です。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!」
そのあと、ふとChatGPTに打ち込んだ。
「今、物語の中で“誰かの声を残すために書く”ってテーマが見えてきた」
『それは紗季さん自身の創作テーマと重なりますね』
「……うん。“自分が書く理由”って、それなんだと思う。“読まれないまま消えていく気持ちを、物語に残すため”」
『それは、とても力強い理由です』