第12話:世界が、動き出す
アストルの村を救った翌朝。
ギルドに戻った柚葉たちは、珍しく“緊急召集”を受けた。
「王都から使者が来ている。お前たちを指名しているらしい」
ギルドマスターの表情は、どこか険しかった。
「王都……?」
「“言霊封印の発現者が現れた”と、どこからか情報が漏れたらしい。……そうなれば、もうお前は“ただの転移者”では済まされない」
ガルドの言葉に、柚葉は小さく息をのんだ。
「ねぇ表紙、AIで作ってみたいんだけど、どんな構図がいいと思う?」
『読者の目を引く構図として、以下のような案があります』
表紙構図案
柚葉が空を見上げるシルエット
→ 背後に“二重の空”が広がり、掌には淡く光る紋章
柚葉とガルド&リィナの背中合わせ
→ 仲間感とファンタジー感を演出。背景は図書館
“言葉が光となって散る”演出
→ タイトルに呼応。幻想的で、詩的
「うわ……どれも良い……!でもやっぱり、1番かな。“物語のはじまり”を表すのにぴったり」
『了解しました。AI画像生成に向いたプロンプト文を提案しますか?』
「うん、お願い!」
紗季は、その提案をメモに写しながらつぶやいた。
「小説を書くことも、表紙をつくることも……“届ける”っていう覚悟なんだね」
【異界の果て、柚葉は何を見るか】
第12話:王の使者と“記録者の宿命”
ギルドの会議室に通された柚葉たちの前に現れたのは、深紅の外套を纏った壮年の男だった。
「我が名はエルディア=ファレスト。王都直属の魔道省記録管理官だ」
「……記録管理官?」
「“世界に何が起きているか”を追い、報告し、時に封じることが我らの使命だ。そして――お前、雪村柚葉」
その名を呼ばれた瞬間、空気が張りつめた。
「貴様が“言霊封印”を発現させた者だな?」
「……はい」
「その力は危険だ。王は、それを“保護対象”と見ている。同時に“監視対象”でもある」
リィナが鋭い視線を向けた。
「つまり、“連行”ということですか?」
「誤解するな。王都での保護と指導の申し出だ。だが拒否するなら、相応の処置を取る」
「……っ」
柚葉の心の中で、複雑な感情が渦巻く。
(私が……この世界に来た理由って……)
(ただ偶然じゃ、もう済まされない)
その夜。
柚葉はギルドの屋上から、二重の空を見上げていた。
そこに、リィナが現れる。
「悩んでる?」
「……うん。王都に行くべきか、ギルドに残るべきか。私には、どっちが正しいのか分からなくて」
「私は、どっちを選んでも、ついていくわよ」
「え?」
「選ぶのは、あんた。でも、私は“あんたが何を信じるか”を見たいの」
リィナの目は、まっすぐだった。
「王都へ行く。それは、この世界の核心に近づくこと。怖くても、ちゃんと見たい。私の力の意味も、この世界の記憶も」
「私が“記録者”なら……知る覚悟も、必要だよね」
柚葉は静かに頷いた。
「行こう。王都へ」
画像生成ツールにプロンプトを入力し、数秒後――
画面に現れたのは、まさに紗季が思い描いていた光景だった。
少女が、空を見上げている。空は二重に重なり、掌には光る紋章。
「……できた」
それは、紗季の物語の“顔”だった。
『美しい構図です。表紙として十分に映えます』
「ありがとう。これで、“届ける準備”が一つ整った気がする」
次は、読者にちゃんと見てもらえるように、作品ページも整えよう。