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金のオノ
「あなたが落としたのは、この金のオノですか? それともこの銀のオノですか?」
湖から女神が出てきて私に問う。
「ど、どちらでもありません。私が落としたのは普通のオノです」
この流れ、何かまずいなと思いつつも私はそう答える。
女神はにっこりと微笑む。
「あなたは正直な人ですね。そんなあなたには、この金のオノと銀のオノを両方差し上げましょう」
「え、いや、ちょっと、いらな――」
「ではさよならです~」
女神はブクブクと湖に沈んでいった。
あとには私と、金のオノと銀のオノが残された。
「せっかく捨てたのに……」
嘆く私を金の小野と銀の小野が冷ややかに見つめていた。
ふたりはまったく同じ声色でしゃべった。
「さあて、よーっく聞かせてもらおうじゃないか。なんでおれたちを殺したのかをな」
ピカピカのふたりが私を取り囲む。
私は間違えたのだ。
死体を遺棄する場所を。
オーノー。
 




