重い思い想い
いつまでもこの手を離せずにいる。
今離してしまえば、もう戻らないとわかっている、わかってしまったから。どうしようもない無力さが憎たらしい。
遥か遠くで鳴り止まない警鐘を、何処か冷めたような気持ちで聴きながら。ただひたすらに、最期の刻を享受し続けている。
どこか諦めたかのような、震える声が頭上から響く。
「もう、時間だ。」
彼を見上げると今にも泣きそうな顔でこちらをじっと見つめている。そんな彼をもう一度強く強く抱きしめて、囁くように呟く。
「えぇ、どうかお気をつけて。」
そして不格好であろう笑顔で見つめ合う。
愛しい愛しい君に、在らん限りの祝福を込めて見送る。
見送った背が滲んでいく。
いつも追っていた小さな背中は、いつからか大きくて頼もしくなっていて。
空っぽの部屋で思い出を綴り直しながら、溢れる涙を拭いもせずに君を想う。
何もわからないままに、ずっと子どもでいたかった。