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7


四人は、温泉があると言われる、二百階に移動した。


「ここにあるんだよね?」


「どうみても……こんなに高い場所に温泉ってないでしょ?」


「なぁなぁ。あれ……」


 健太が指をさした方を見ると……四人は固まった。


<怨泉はこちらです>


「まさか……これ?」


「字が違うだろう?」


「一気に寒気が……」


「拙者、そういう話は苦手でござるよ」


「虎ちゃんの時代は、一番多そうだよね。怨念……ほら! 虎ちゃんの後ろに幽霊がぁぁぁ!」


「ひぃ!」


 虎太郎は、飛び上がって逃げようとした。


「ぶは! 虎ちゃん面白い」


「優香殿!」


「ごめんごめん。あーお腹いたいぃ」


  あまりの面白さに笑いが止まらない優香だった。


「では、入るか? 怨泉」


「せっかくだし、行って見よ」


四人は、怨泉の中に入った


中に入ると。一応女風呂と、男風呂が分かれていた。


「んじゃ。検討を祈る」


「そっちもな」 


優香と、由紀は、女風呂に向かった。


「おじゃましまーす。って誰もいないわね」


「あの看板で、誰も入りにこないんじゃない?」


「貸切のほうが、ゆっくり入れるけどね」


 ドアを開けると、そこは綺麗な旅館の温泉のような作りになっていた。


「温泉っぽいじゃん」


「怨泉だけどね」


「そこ、つっこみいらないから……由紀」


「でも、普通のお湯に見えない?」


「色も綺麗な赤だしね」


「バラ色かな?」


 掛け湯をした優香たちは、足を入れてみた。


「ぬる! 温泉ってぬるかったっけ?」


「優香ちゃん、何か音しない?」


「ん?」


 音がする方を見ると、何やら近づいてくるのが分かった。


『うんこらしょ! どっこいしょ』


「聞こえる……やっぱ幽霊?」


 優香と由紀は、二人で抱き着きあった。そして……ドアがあいた。


「きゃー!」


『おみゃーさん達、なにデカイ声だいてりゃーす』


「だれ?」


『見てわかりゃーせんか! 怨泉の仲居だぎゃー』


 見るからに、小さいオバサンの出現に、優香と由紀は言葉を失った。


『ちょっと、どいてちょー。忘れる所だった。よっこらしょっと。』


そういうと、仲居はバケツにはいったお湯を、湯船に入れた。


『はぁ~毎日こうも遠いと疲れるわ』


「まさか、お湯を運んでるんですか?」


 由紀が、おばさんに聞いた。


『あたりまえでしょ~。毎日毎日千回は、運ばんといかんのだわ』


「源泉じゃないの?」


『あんた、あったまわるいね。こんな高い所源泉があるはずないがね』


「このお湯どこから?」


『お湯といったら、地獄の釜しかないでしょ』


「え! あの……地獄?」


「赤って……まさか血?」


『知りたい?』


「そういわれると、知りたいような知りたくないような?」


『なら聞かんときゃーせ!聞かぬが花というでしょぉ~』


「そうですね」


「あはは! 何か暑くなってきた。優香ちゃん、私先に出るね」


 完全に、この場から逃げたいと分かる由紀の空笑いに優香は、急いで便乗した。


「まって! 私も出る!」


二人は、早々と出たのでした。


「あれって……なんだろうね」


「わかんない……でも、地獄からだよ?……考えたくない!」


数分後


「ふ~いいお湯だったぁ。ん? おまえら早かったな」


「おなごは時間がかかると聞いてるが?」


「顔色悪いけど、どした? 湯ざめか?」


 健太の陽気な空気に、二人は事実を言えなかった。


「……なんでもない」


こうして、温泉のなぞは解けた優香と由紀ですが、二度と、怨泉には近づかないと決めた二人でした。




 二人は、虎太郎達と別れて、部屋戻っていた。


「今日は、何か一日疲れたね」


「そうだね。何か死んだら楽になれるとか、下で生きてる人は皆思ってるんだろうね。」


「ぜんぜん、楽じゃないけどね」


「優香ちゃんって、どんな子だったの?」


「あたし? そうだな。母子家庭だったんだよね。あ! 弟がいるんだ。ごく普通の家庭だったよ。」


「お父さんは?」


「私が小さい頃。病気で死んじゃった」


「ごめん」


「いんや。貧乏だったけど、楽しかったよ。」


「お母さんや、弟さんに会いたいとか思わないの?」


「会いたくないと言うと、嘘になるけど。散々葬式の光景見てたからさ。つらいよ」


「そっか……優香ちゃんは幸せだったんだね」


「うん。由紀には、私がいるよ!」


「……ありがとう」


 二人は抱きしめあった。


「さて、明日も一日長いから、ねよ☆」


「うん」


「おやすみ」


「おやすみ優香ちゃん」


こうして、一日目は終わったのです。明日が、二人にとって忘れられない一日になるとは知らず……。」











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