5
着いたのは、富士の山奥
「こんな所に、家あるの?」
「杏ちゃんは、ここにいるみたいよ?」
「病死?」
「ん? 見てない」
「なんでやねん」
由紀は、資料を見た。すると……顔がこわばった。
「優香ちゃん……静かに!」
「もぅ! なになに? 殺人?」
「しー。何か聞こえる」
「ん?」
耳を澄ますと、木の影から声がした。
「ままぁ……」
「杏ちゃん?」
優香の声に、杏ちゃんはこっちを振り向いた。
「だれぇ?」
人形さんみたいに、可愛い女の子だった。
「香川 杏ちゃん?」
「うん……おねえちゃん達は?」
「私たちは、天国からのお使いに来たんだよ」
「てんごくって?」
「今から杏ちゃんが行くところだよ。死んじゃった人達が、いく所。」
「杏、死んでないよ?」
「え?」
杏の意外な返答に、優香も由紀も戸惑った。
「杏ママを待ってるの」
「杏ちゃん。あのね。杏ちゃんは死んじゃったの」
「うそ! うそついたらダメってママ言ってたよ」
「由紀も言ってよ」
「うん……あのね。杏ちゃん、杏ちゃんは、殺されたの」
「由紀!」
いつもと違う由紀に優香は、慌てて止めた。
「ころされた?」
「そう。ママに」
「え!」
「私も、ここで殺されたの。親に」
「うそ……。」
「ここね。樹海って言ってね。置いてっても全部同じ景色に見えるから、出られないの。木が沢山で分からないの。実は、私みたんだ。天国に行く前に、このこが殺されるの」
由紀の発言に、戸惑いを見せた優香に気付いた由紀は、いつもと全く違う低く悲しい声で話した。
「うそ! ママが私を殺すなんてない!」
「本当なんだよ」
「嫌い! 帰って!」
そういうと、すごい風が吹いて二人は飛んだ。
「うわぁ!」
どこからともなく地縛霊たちが、集まってきた。
「オマエラハダレダ」
地縛霊たちは、二人に威嚇を始めた。
「わ……私たちは天国の使いよ!」
「杏ちゃんを渡してください」
由紀が、一歩前へ出ると、地縛霊たちは、一気に真っ黒の塊を由紀に目掛けて襲ってきた。
「ダマレ!」
光が由紀の腹部に当たった。
「う!」
由紀は、お腹を押さえて座り込んだ。
「由紀!」
「だ……大丈夫」
倒れそうになりながらも、必死に由紀は立ち上がり、杏ちゃんの方へ歩いて行った。
「杏ちゃん、こっちに来て!」
「いやだ! ママを待つんだから!!」
「アンハ、ワタサナイ!」
さっきより、大きい黒い光が攻撃してきた。
すると、優香と由紀は、物凄い痛みを感じた。
「きゃー!」
優香と、由紀はその場に倒れた。
「はぁ……はぁ……」
息をするのもやっとの中、再び由紀は立ち上がり、杏の方へ歩いていった
「由紀! ダメだよ。危ないよ」
優香の声を無視し、攻撃を体中に浴びながらも、杏の元へ歩いていく。
「こないで……こないで」
杏は、頭を押さえながら、消えそうな声で叫んだ。
「キエロキエロ!!」
その間も地縛霊達は由紀を攻撃してくる。
「杏ちゃん。ママが大好きなんだね」
「うんっ大好き」
「でもね。これは事実なの。杏ちゃんのママね、謝りながら置いてっちゃったんだよ。あの後、私追いかけたの。そしたらね、泣いてた。何があったか分からないけど、杏ちゃんを嫌いで殺したんじゃないと思う」
「でも……迎えに来てくれないよ」
由紀は、そっと杏を抱きしめた。
「ママは、きっと、後悔してるよ。杏ちゃんみたいないい子を置いてったことを。でもね、天国に行って、一緒にママを待ってみないかな?」
「ママを?」
「そう。少しの間、ママと離れ離れにはなっちゃうけど、きっとママも、また杏ちゃんの所に帰ってきてくれるから」
「ほんとう?」
「うん」
由紀は、笑顔で杏を見た。
「……分かった。ママを待ってる」
「杏ちゃん。いいこだね」
「えへへ……お姉ちゃん、大丈夫?」
杏は、由紀の顔の傷に触れた。
「大丈夫だよ。杏ちゃんが戻ってきてくれて良かった」
「お姉ちゃん……」
「由紀お母さんみたい」
「優香ちゃん」
すると後ろから黒い塊が襲いかかってきた。
「ワタサナイ!」
由紀は、それを手で止めた。
「だまらっしゃい! あんたたちは、好きでここにいるんでしょ? だったら、この子の邪魔しないでくれる? ほら! どいてどいて」
その強さに怯むと、由紀は杏を抱きしめた。その暖かい思いが形になり、塊は爆発するように壊れた。
「由紀かっこいぃ」
「えへへ。私もね、母親を憎んでたんだ。でもさ、母親も何か、訳があったからだと思うんだよね。いまさら憎んでも、生き返れるわけないし。いつか死んでこっちにきたら、仕返ししてやるんだ」
「そのときは、私も手を貸そう」
「ありがとう」
由紀の、真実を知った優香は、由紀と出会わせてくれた事が嬉しかった。
「よし! 今日の仕事は終わったね。帰ろうか」
「うん。杏ちゃん行こう」
「はーい」
こうして、優香と、由紀は杏を連れ、一日目の仕事を終えて、天国ゲートへ戻った。
杏は2人を見上げ、思った。二人みたいになりたいと。
再び会う事になるのは先の話。