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タイカンと上手くいく話し

大陸にはいくつかの国や街がある。


私達が滞在する【ケーハン】

魔族との関わり合いが噂される【サカノオ】

海上でエビス達と睨み合う【ヨゴ】

大陸随一の軍事大国【キイト】


これらの国は、所領する街がいくつか存在している。


このケーハンには、城が建つ【オーミ】、ヒミコの父上がいる鍛冶師の町【カヤマ】、港町である【ナーラン】がある。


以前までは、【ラクヨ】も所領していたが、サカノオの暴徒により進行され、奪われた。現在はサカノオの領地だ。


ガワラが最初に目指したという【トリト】は国である。

とはいえ、4ヵ国とは違い経済力や軍事力が乏しく、小国として存在している。私が育った【シガ】も小国の一つである。


その【トリト】を目指し旅をしたいというミカノとヴリトラ。


私は、サクヤと親方様に相談してからだと条件を出すとむくれて拗ねていたが、頑として譲らずに城に向かった。サクヤは、ヒミコと共に買い物に出かけたまま戻っていないので、まずは親方様に相談する事にした。


(昨日は共に生きると言っていたのに、旅に出たいとは言いづらい。しかし勝手に行くような暴挙は避けなければならない。)


トントントン


『親方様、タイカンです。入っても良いですか?』

『おお。構わん、入れ』


部屋では親方様とナガラが何やら相談していた。

『お邪魔ですか?後にしましょうか?』


親方様は手をとめて、こちらに振り返った。

『問題ない。ん?エビス、ミカノにヴリトラもいたか。何か聞きつけて来たのか?それとも勘か?それならば、鼻がいい奴らだ。』


(あれ?私達がここに来る理由は知らない筈。聞きつけるということは、何かあったのだろうか?)


『ホテイ、キミこそ私達に何か用事があるのかい?そっちから聞いてあげてもいいんだよ。』

このように話せるヴリトラが、今は頼もしく見える。

『はははは。ヴリトラには、敵わんな。では、こちらには偶々来たのか?鼻がいいっ。』

『ホテイ、勿体ぶらずに言ってごらんよ。』

『すまない、そんなつもりは無いんだがな。ナガラ、説明しろ。』


ナガラは、何やら書状を持っている。


『はっ。タイカン殿はご存知ないかもしれませんが、この大陸には、小国がいくつかあるんです。』

『はい。私達の【シガ】もその小国に当たると、以前伺いましたね。』

『単純に国土が狭いという国もあれば、今回助けを求めて来たような経済力や、軍事力に乏しい国もあります。』


『助けを?まさか、魔族ですか、、、。』

『いえいえ、それであれば全員集めて大騒ぎですよ。魔族ではなく、人なんです。』

『人ですか?それなのに、助けを?』

『そうなんです。城下町で商人をしている者が、番所に来まして、親方様にと書状を持ってきたんですよ。』


ナガラは、手に持った書状を私に渡した。

『私も何とすれば良いのか、困りまして。親方様に相談に来た次第です。』


時候の挨拶を除くと、書状にはこう記してあった。


私達の国は、砂漠の先にあり辺境の場所にあります。気候は穏やかで、名物の蜂蜜を城下町に卸しております。


辺境の地故に、他国の方が訪れる事は無かったのですが、1年程前に一人の旅人が来たんです。

旅人ですから、数日もすれば出ていくだろうと思い、気にもしていませんでした。しかし、一月経っても二月経っても、出ていかない。終いには、少し離れた砂漠の入口に小屋を建ててしまいました。小屋の中からは奇妙な声がして、皆不安な日々を過ごしております。

親方様のお力をお貸し頂けませんでしょうか。


【トリト】 首長リビア


『と、トリト!?』

『ん?なんだタイカン、【トリト】を知っているのか?』

『知っていると言いますか、、、』

『ホテイ、それ私達で調べてあげましょうか?』

『ほんと!ヴリトラ!』ミカノは小声で喜んでいた。


ナガラは、いつもの閃きを発揮する。

『親方様、願ってもない話しです。これで、ヴリトラが解決しようものなら、友好関係の証明にもなりましょう。』

エビスも、もう一押しとばかりに、援護射撃をする。

『親方様、私も同意見です!小国を助け支持を得る。私の考えとも一致しております!』


『そ、そうか。しかしかなりの長旅になるな。荷は、こちらに任せて貰うとして、、、。あとは人選だな国の者が行かぬのは無礼だからなぁ。、、、海上は再編成、陸上は砦、、、進攻は緩まっているとはいえ長旅の同行となると、、、』

親方様が腕組みをしているので、提案をした。


『親方様、侍女でも宜しいですか?』

『それは構わんが、、、誰だ?』

『ヒミコさんです。私達の事もよく知っていますし、彼女の紅茶をヴリトラは好んでますから。』

『そうか。それであれば構わんぞ。ヒミコが良いと言うなら、連れて行け。無理だとなったら、また相談に来てくれ。その時に改めて考えようか。』

『はい。ありがとうございます。』


言い辛い筈の旅が、とんとん拍子に決まっていった。

私達の中に幸運の持ち主がいるのか、誰かの筋書きなのか

。こんなにも上手く事が運んでいくと、少し怖い。


私達は、「いつもの部屋」で、サクヤとヒミコの帰りを待っていた。


『ねぇ!行けるんだね、【トリト】に!』

『そうだな。でも、用事があるんだ。ガワラの事はそれが、済んだ後だぞ。』

『もう!そんなの分かってるよ〜』

『そやけど、タイカンは、運がええわ。こんな事あるんやな。』

『ははは。本当だな。でも、エビスの一押しも効いたよ。』

『ええねや。親方様に言ったのは、ほんまの事やから。』


『エビス、さっきの手紙の旅人は、キミのお友達って事はないのない?」

『あ〜、、それは、俺も思ってたんやけどな。そやけど、時期が全然ちゃうねん。ガワラが辞めたんは、もう5、6年前の事やしな。手紙は1年前やろ。流石にそんだけ離れてるとな。』

『そうか。それは残念だね。全部一気に片付くほどの強運は、持ち合わせていないようだね。タイカン。』

『それはそうだろ。でも、【トリト】に行けるだけでも良いじゃないか。のんびり行こう。』

ヴリトラは微笑んで返した。


『楽しみだなぁ〜。どんな所なんだろう~。』


『エビス、あの【馴染み】はいるのか?いるなら、組合に行ってみようかと思うんだが。』

『いや、今回はいらんで。向こうからの依頼やしな。』

『そうか。アグモ達にも会いたかったが、それはまた今度にするか。』


窓の外を見ながら、二人の帰りを待つ。

私も、新しい国がどんな所なのか、楽しみだ。

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