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タイカンと二番砦

一番砦を過ぎると海が見えた。内陸に海とは、不思議な光景。二番砦は橋を渡った先にある。


『マダイさん、こんな場所に海があるとは変わった土地ですね。』

『タイカン殿、これらは湖と言いまして、山からの水が溜まって出来たものであります。』

『湖。ほぉ。こんなに大きなものがあるんだな。』

『タイ、すごいねっ!先が見えないよ。』

『そうだな。湖と言われても、信じられない大きさだな。』

『太古より続いていると聞いております。』

『時間を掛けて、ここまでになったのか。』

『タイカン殿、あの橋を渡れば二番砦です。』

『湖に浮かぶ砦か、守るには最適だな。』


橋の中頃で、二番砦から声が聞こえてきた。


『補給を急げっ』『来るぞぉ〜』『弓を放てっ』『怪我人は下がらせろっ』

少しずつ喧騒が近づいてくる。

二番砦に入ると、より大きく聞こえた。

近くを走る部隊の者を呼び止める。

『サモン隊長より、こちらへ応援にきた者だ。ムーデ副長の所に案内を頼む。』

『隊長に?!あっ、マダイ副長もおられるのですね。それは心強い。ささ、こちらへ。』

砦の中にある櫓の中に入る。片腕を取られながらも、必死の形相で座るムーデがいた。

『タイカンと申します。こちらはミカノ。サモン隊長に依頼されこちらに来た。あなた達を連れ出します。』

『ふぅふぅ、、隊長が。そうですか、、それは申し訳ない事をした。ふぅふぅ、、』

『さぁ、一番砦に馬車がある、、、』

『ふぅ、、、しかしながら、、、戻ってください、、、ここは、我らが任された場所、、、我らで何とかするのが道理、、』

『ムーデ、馬鹿な意地を張ってる場合か!』

『ふぅふぅ、、マダイも来てたのか、、尚更戻れ、、、エビス様に申し訳が立たない、、、』

『はぁ、、、ミカノ、櫓の上に行き前面に【光壁】を展開してくれるか。』

ミカノは、待ってましたと言わんばかりに櫓を駆け登る。

『ふぅふぅ、、、こ、こうへき、、何をされるのか、、ふぅ』

『黙って見ていなさい。』


櫓から見渡すと、大きな湖の対岸が見える。足元では、暴徒と部隊が壁を隔てて争っている。煙が立ち、矢が富んでいた。ミカノは、最上部へ到達するとぐるりと周囲を見渡した。二番砦から三番砦へと続く道も橋一本。その周辺さえ防げれば、守りは固くなる。

ミカノは目を閉じ、自らの身体を光の膜で覆った。

櫓の最上部から飛び出し、二番砦の最前線へ着地する。かなりの高度を物ともしない。着地したミカノに驚く自軍。

構わずミカノは、閉じられた門に手を当て、一気に光を放出した。辺りが光に包まれ、収まった後に残ったのは頑丈な光の壁だった。

『これで、門は安心だよ。上も出来るだけ高くしたけど、もし弓矢が飛んできたら大変だから、気をつけてね。』

目の前の事に唖然とする兵士達に構わず、笑顔でそう言うとミカノは櫓に戻った。

『タイ、終わったよ。ちょっと大きいから、そんなに長くは持たないかも。』

『ありがとう。よくやった。』

肩で息をするムーデは、目の前の会話と砦の門の光に戸惑っていた。

『さぁ次はあんたの番だな。ムーデ。』

『、、ふぅふぅ、、何を、、したんです、、』

『これは精霊の力だ。ミカノは光の力を扱える。当分は安心できるだろう。』

『、、精霊様、、、』

『それは、サクだよ。ぼくは、違うよっ』

『ムーデ、周りを見ろ。疲弊し余力も振り絞るお前の部下を見ろ。この状況で私達を帰すのが、最良の判断だったのか、もう一度言ってみろ。』

『ふぅふぅ、、はあはあ、、、』

ムーデは、門から下がった部下や、周囲で寝転ぶ怪我人を見渡した。

『いいか、撤退すべき所を見誤るな。ここを任された責任は、玉砕ではないだろう。そんな事をサモン隊長は望んでいないだろう。』

『、、、ふぅ。タイカン殿、見誤っておりました、、、。』

『安心しろ。もう大丈夫だ。ムーデ、よくやった。』

ムーデの肩を叩き、労を労った。

『ミカノ、ムーデの腕に膜を張れるか?これ以上放置すれば、他の所も悪くする。』

『できるよ。覆えばいいんだね。』

ミカノは患部に手を当て、光の膜で覆った。後々わかった事だが、光の膜は外部からの菌は勿論、患部の殺菌効果もあるという。

ムーデの顔色が少し良くなった。

『ミカノだったか、、、ありがとう。楽になったよ。』

『気にしないで、ぼくはみんなの希望になる為に、来たんだから!』


二番砦の部隊は20名、怪我を負っているのは、ムーデを含めて5人だった。歩ける者は自力で、そうでない者は他の兵士が担いで一番砦の馬車まで運ぶ。城へ戻ったらサモンへの言伝を頼んである。

『タイカン殿、ミカノ、マダイ、、、かたじけない。』

ムーデは、担がれ運ばれていった。


一番砦の馬車の前。無人の馬車で、馬が大人しく待っていた。

『馭者あ〜、馭者はおるか~』

兵士は、周囲を見渡し声を掛ける。

『馭者あー、おらんのかー』

『へいへい。すんません。用を足しておりました。どうなさいました。』

『怪我人を城に運ぶ、戻ってくれ』

『ありゃ?タイカン殿はいいんで?』

『そのタイカン殿からの指示だ。』

怪我人は中に入れ、一人は護衛とサモンへの言伝の為同行した。


ひゅう〜ひゅう〜。

【ラクヨ】の上空は冷たい風が吹いている。

雲の上、地上からは見えない上空で浮遊する者がいた。

『報告の通りだな。あれがタイカンとかいう奴か。ほう、精霊も一緒か?いや、子供だな。何とも不思議な奴らだ。』


浮遊する者が纏う衣と、美しい銀髪の髪がひらひらと靡いている。目は黒く、肌の色は深い蒼。人ならざる者。

『あいつらでは、相手にならんか。』

掌に怪しげな玉を創る。

『真上から落とすのは興が醒めるか。これは、あの光にぶつけるのが面白いか。』

人ならざる者は、掌の玉を光の壁へ向けて落とした。

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