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小説家の夢

作者: 草月美翠

 将来の夢は、サッカー選手です。野球選手です。


 そんな夢見る子供の大半は、年を取るにつれて現実を知る。


 自分より才能のあるやつがいる。

 十人そこらのチームでトップレベルの実力者でさえ、では市町村単位では、都道府県単位では。

 同学年と比べてさえ、路傍の石となることだろう。

 なぜならそもそも運動能力というのは、そのほとんどが遺伝によって決まってしまうから。

 生まれながらにして、勝つことの許されない人種というのは存在する。

 私たちが主人公となれるのは、空想の世界に限られるのだろう。


 趣味が将棋という人や、趣味がゲームという人も。

 本人がまさかトッププレーヤーになれるなどとは思っていない。

 コツコツとランクを上げて、段位を上げて。

 それでも別に、プロを目指しているわけじゃない。

 なぜなら僕らは、僕らより凄いやつがいることを知っているから。

 僕らごときでは、勝ちようもないことを知っている。

 だから僕らは同レベルを相手にしのぎを削り続ける。

 趣味として、それぐらいがちょうど良い。


 そういう、趣味で満足出来る趣味がある一方で、幻想から抜け出せない趣味もある。

 筆頭候補は、まさに小説家なのだろう。

 他には例えば、配信者とか、アイドルだとか。

 そういうアーティスティックな活動をする人は、なかなか沼から抜けだせない。


 挑戦もせず、根拠なく、ただ「私には才能がある」と思い込む。

 他人を見ても、自分との差を測りにくい。

 結果の差は、運と努力の差でしかないと。

 つまり努力さえすれば追いつける。追い抜けるなどと妄想してしまう。

 それで奮起して努力するならまだマシなのだが……


 尊敬する小説家は、いる。

 だけど恐れ多くも心のどこかで、そんな相手と競い合いたいなどと思っている。

 そしてそれが不可能だなどとは、断じて考えることさえしない。

 なぜなのか。なぜなのだろう。

 理由はいくつかあるだろう。そしてその一つは、結局のところ実力が見えにくいからなのだろう。


 面白くもないと思う作品が書籍化する。コミカライズして、時にアニメ化まですることもある。

 それこそ時の運ということもある。あるいは私の定規が歪んでいるか。

 例えば、死後評価されるタイプの作家や画家というのは一定数存在する。

 別にそれは、死んだから価値が上がったわけじゃない。

 たまたま、評価されるタイミングがずれたというだけのこと。

 私がそうだ。などと言うつもりはないが、心に秘めるぐらいは許される。

 誰もがそうして幼い夢を大切に守りながら、ちまちまと醜くも活動を続けている。


 端から見たら、愚かなのだろう。

 子供が夢を語るならば、それは見ていて和ましい。

 だけど歳を重ねた大人がそれをしたときに、世間の視線は冷たく刺さることだろう。

 現実を知らない、無知を誇っている姿を見せつけられて……


 どうしようもなく、夢を諦めてしまった自分が情けなく感じるのだろう。


 幸いなことに私は、まだ夢を諦めるつもりはない。

 一生、諦めたくないとも思う。


 諦めなければ夢は叶う。そんな子供じみたことでさえ、いつか現実になると信じて進み続ける。


 ああ、小説家になりたい。

 偉大なる先人達に並ぶ、世界に名を残す作家になりたい。



 なんて、そんなたいそうなことを考えているわけではありませんが。

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