実験と精霊
いつもはお昼寝の時間に、ぽっかりと目が覚めた。
こそっと周囲を探ると誰もいないみたい。で、あれば。実験のお時間でしょう。
この間お兄様の魔法で私の上につるされているおもちゃが揺れたのを見てから、ずっと魔法について探ってみたかったのだ。
だって、よくあるじゃない?自分の中にある魔力を感じて訓練するやつ!前世でこっそり読んでいた異世界もので読んだあれだ!
「んー」
目を閉じて、ぎゅっと自分の体に集中してみる。体の中を流れる血液を意識するみたいに、体の中に何かの流れがないのか感じてみる。
「ん-」
……そんなに簡単じゃないみたい。何も感じない。
パタパタと手足を動かしてがっかりした気持ちを発散してみる。でも、負けないぞ。
「おー」
とりあえずいつか、あの飾りを私の魔法で動かすのだ!気合を込めてえいっと指を飾りのほうへ振ったそのとき。ぴゅっと風が吹いた。頭の上の飾りがかすかに揺れる。
「あ」
今、自分の体から何かが流れ出たのを確かに感じた。これだ!これが魔法!すっかりテンションが上がった私は、ぶんぶんと小さな指を振り回した。
その動きにあわせて、飾りもブラブラと揺れる!キャッキャッと私は笑う!やったー!と喜びのまま指を振り回していた私だったが、
「あ」
無理。突然エネルギー切れになった。ぱたり、と腕を落として、急速に意識が遠のく。これが前世の小説で読んだ魔力切・・・。
こうして初めて魔法を使ってみた日には、見事魔力切れで意識を失った私だったが、懲りることなどない!だって、前世の小説でもよくあったではないか、魔力を使えば使うほど魔力量が増えるという設定が。幼い頃から魔力量を増やし、大きくなって他の追随を許さない魔力量で無双するのだ!
わっはっはっはっ。と心の中で高笑いをしていると、
「ふむ、面白い」
聞いたことのない声が突然聞こえた。誰?首を動かしてみるけど、誰もいない。
「な?」
「そうか、まだ起き上がれないのだな」
声が言うと、
「ほら」
ベッドの柵越しに、知らない人が現れた。男性にも女性にも見える人。・・・いや、人?
「だー」
何だか見え方が、他の人と違う気がする。
ぎゅっと意識を集中して眺めていると、
「ほう。私が何だかわかるのか?」
「や?」
そこまでわからないなぁ。
「面白そうな気配を感じて来てみたが、やはり面白い」
わからないなぁと思っているのに、その人とは違うらしいものはそんなことを言っている。
面白いのか?私は?
「私は、人のいうところの精霊だ」
せいれい?精霊!この世界には魔法があるだけじゃなくて、精霊もいるのね!キャッキャッと喜んで手を叩く私に、その精霊は目を細めて笑った。
「動けるようになったらまた会おう」
はい!と言えない私は、
「あー!」
手を必死に振ってみせた。
「うむ、私はいつもこの館を守る聖なる森にいる」
ほほう、そんな素敵な森もあるのか。ますます嬉しくなった私は、またキャッキャッキャッキャと笑ってしまう。
「楽しみにしていよう」
そう言って精霊は、私の視界から消えてしまった。
……聖なる森にいる精霊。
動き回れるようになるのが楽しみだ!
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