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妖精ケリーと訓練

 結局今回の襲撃者の背景をたどっても想定している首謀者までたどり着くことができなかったらしい。お母さまが私達、というかたぶんメイヴィスにつく警護が増えることになり、魔法の訓練のときにも騎士が2人付き添うことになったことを教えてくれたときに言ってたことから察すると、たぶんそうだ。中々手ごわい敵のようだ。

 お父様とお母様は私達子供、特にメイヴィスと私にどこまで伝えるか迷っているみたいだけど、例えばずっと仕えてくれていた侍女がいなくなった、とか身の回りの騎士が増えた、とか子供でもわかる変化については、何も説明しないほうが不安だろうと教えることにしているみたい。

 確かに、前世でよく言われていたことだけど、子供って子供のままでも結構周囲のことを見ているし、わかっている。そうしてくれたほうが私だけじゃなくて、メイヴィスにとってもいいように思えた。

 ちなみに、騎士たちの警護の話を聞いたときに、ケリーも私の肩にいたんだけど、

「また襲撃があっても僕が全部殺してあげるから大丈夫なのに」

とか言い出して、場を凍らせていた。殺してあげると言い出す妖精、というのはなかなかインパクトがあった。

「まあ、ケリー、人はやむを得ない場合でなければその場で全員殺したりしないものなのよ」

いっそおっとりとした声でお母さまが説明を始めてほっとしたものの、

「幼い子を狙うような輩を全滅させたくなる気持ちはわかるけれど」

とお母さまは続けたので、顔合わせのためにその場にいた騎士たちを含めてまた皆凍り付いた。

「でしょ!」

案の定お母さまの言葉に、ケリーがまた勢いづいたので、お母様、それはちょっと……!と思っていたら、お母様は、

「でも事情を聴きだす必要があるでしょう?」

と続けた。……それだけの問題?私が心の中でお母さまに突っ込みを入れていると、少し首をかしげて考えた後ケリーが、

「わかったよ!じゃあ、死ぬほうがましな目にあわせてあげるね!」

元気よく言い放った。

 それ、完全に敵役のセリフだよ……!またもや心の中で私は突っ込んだけど、

「ええ、そうしてね!」

お母様といえばにこやかに頷いている。

「うん!」

お母様とケリーがニコニコと頷きあった。……周囲はドン引きである。本当に妖精ったら思ってたんと違う。そして、お母様ったら意外にこういうキャラクターだったのね。

……という経緯で、私たちが魔法の訓練をするときも騎士が2人ついていてくれることになった。といっても、森に入るまでと森を出てからが主な護衛ポイントで、森の中にいるときはややリラックスしていても大丈夫らしい。シル様も森の中はさらに万全を期したと言ってたし。

 だから、騎士さんたちは、森の中にいる間、結構私達の訓練を見ている。何人かの騎士さんたちが交代で担当してくれるんだけど、初めて担当となった人は全員、お兄様がバリヤーの強度訓練をしているのを、これがあの魔法という感じで感心して見ていたり(襲撃のときに私が張ったので騎士さんたちの間でも話題になったと1人の騎士さんが教えてくれた)、私がバリヤーで攻撃を跳ね戻すのをみて驚いたりしていた。

 そして、一通り驚いた後は、全員から何だか熱心な視線を感じる気がする。まあ、もし役に立つなら嬉しいけど、私は幼児である。気にしないことにしている。

 ので、今日も今日とて、

「いきゅよ!」

ケリーと訓練だ!と言ってもケリーにお得意の強い魔法をぶつけてもらうことは、シル様とハヤテに止められてしまったので、最近の私たちは、バリヤーを張って魔法をぶつけあう訓練をしている。

 まずは、ケリーがシル様のOKが出た範囲で魔法をぶつけ、私がそれにあわせた強度でバリヤーを張って、魔法を返す。次に、今度は、ケリーが跳ね返った魔法と同じ強度でバリヤーを張り、魔法を返す。それを交互に繰り返すのだ。3回やり取りしたら、ケリーがやっぱりシル様が良いといった範囲で魔法の強度を変えてくる。

 感覚的には前世のキャッチボールみたいで、楽しい。これは、キャッキャッとバリヤーを張って魔法をぶつけて跳ね返す、を相互にしてケリーと私が遊ん……訓練しているのを見て、シル様が、

「ニコラには、実地での訓練のほうが身に付きそうだな」

と言ってしてくれたアドバイスに従った遊……訓練だ。

 未だ自分の中の魔力をたどる練習をしていると、いつの間にか眠りの世界へ意識が飛んでいる私には、瞑想のような方法より、実際に魔法を使いながらコントロールを覚えるほうが良さそうだというのがシル様のアドバイスだった。

「にゃるほろ」

シル様のアドバイスに納得した私は、ケリーに頼んで、このバリヤーを張って魔法をぶつけあう訓練をすることにしたのだった。シル様は、ケリーにもコントロールを学んだ方がいいと言ってたし。

 ちなみに、シル様がこのアドバイスをしてくれたとき、私は衝撃の事実を知った。シル様は、このとき、私は元々魔力は多いけど、無尽蔵ではないので、コントロールも覚えるべきだと言ってくれた。元々?ということは、魔力の多さは生まれつきで増えるものではないの?と私は疑問を持ったので、私がその疑問を素直にシル様にぶつけてみたところ、

「ああ、魔力量は成長に伴って増えるが、元々多寡は決まっている」

とあっさりと答えられた。

……何と!あの赤ちゃんの頃ベビーベッドで一人密かにしていた訓練は無意味だったということ……!思わずがっくりと膝をついた私を、シル様は不思議そうに見ていた。ちなみにハヤテからは苦笑しているような雰囲気が伝わってきた。……教えてくれればいいのに……。いいんだ、負けない!コントロールが必要ということであれば、遊……訓練をして鍛えようではないか!

 そうやってケリーと遊……訓練している間に、すっかり騎士達が私たちの訓練を熱心に見ていたことなど忘れて日々を送っていた私だったけど、そのことが意外な展開につながったのだった。

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