目が覚めたら
創造主を名乗るものと会話した後、意識がぼやけていった私は、それからどこかふわふわしたところにいたと思う。時折外から優しい刺激があって、優しい声が聞こえた気がする。
そうしてまどろむように過ごしていたのに、あるときいきなり狭く暗いところ推し通る羽目になって、それから明るいところ出た。なぜかわからないけど喉も裂けよと泣き叫んだら、ふわふわと柔らかいものに包まれたような記憶がある。
明るいところに出てしばらくはぼんやりと世界を感じていた。嫌な気分を訴えたくてギャアギャア泣いたり、抱き上げられて嬉しくなったり。そうやって過ごしていたら、だんだん周りの様子がわかってきたし、そばにくる人の顔も認識できるようになってきた。
で、私は少しずつ今の自分に慣れてきて、前の世界のことや上下左右真っ白な場所のことを思い出した。どうやら私は無事にあのときした約束通りに転生できたらしい。記憶をもって周囲を観察できるようになるとますます色々なことがわかるようになった。
両親らしき人以外にも私を世話してくれるセアラと呼ばれていた女性が大体私のそばにいてくれて、さらにアビーという乳母らしき人までいる。だんだんわかるようになってきた周囲にあるものも立派そうだし、この家は裕福そうだと当たりをつけている。
あの天使ではない何かは、自由に生きられる環境と力をくれると言ってたけど、とりあえず環境はくれたように見える。生家の財力はありそうだし、家族も可愛がってくれている。
家族は、両親以外に兄もいて、
「ニコラ」
今もよく遊びにきてくれるお兄様が今ベッドのヘリから覗いている。
どうやらニコラというのが私の名前らしい。家族達はいつも私のことをそう呼んでくれる。
「みて、ニコラ!」
兄と思しき子が、私のベッドの上の飾りが揺れるのを指さして私に一生懸命に教えてくれている。
「まあ、クリフォード様、お優しいですね。それに繊細な魔法を上手に使われていますわ」
とアビーさんが言ったので、どうやら教えてくれていただけじゃなくて、お兄様が飾りを揺らしてくれていたらしい。
しかも、魔法!すごい!嬉しくなった私がキャラキャラと思わず笑うと、
「笑った!」
お兄様は嬉しそうだ。
「ほら、見てごらん」
お兄様が指を振ったらますます飾りが揺れたので、きっとお兄様が魔法を使ってくれているのだろう。
パチパチ。
私は、嬉しくなって手をたたいた。
「喜んでくださっていますね」
「うん!」
私が喜ぶと喜んでくれる優しいお兄様は勉強の時間だと名残惜しそうにしながらも部屋を出て行った。私もそろそろ眠くなる時間だしね。
しかし、さっきとっても大切なことがわかった。そう!魔法!どうやら私が転生させてもらったこの世界には魔法というものが存在するらしい。
兄が子供のころに既に当たり前のように魔法を使っているということは、その妹である私の魔法にも期待できるのではないだろうか。
1人心の中で意気込んでいたつもりが、
「ふぁぁ」
あくびが出てしまう。だって乳児だから。
「お眠の時間ですね」
いつもそばにいてくれるセアラさんが優しく言って、上掛けを整えてくれる。魔法について検討を重ねてみたいが、いかんせんこの乳児の体では、眠気に抗うことなど到底できない。
「お休みなさいませ」
おやすみなさい。まだ口に出しては言えないけど、心の中だけでセアラさんに答えて目を閉じると、私はあっという間に眠りに落ちた。
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