お兄様のグリフォン
シル様によると、妖精は気まぐれで、人よりはるかに長い時間を生きるので時間の感覚が人と違いすぎるらしく、妖精の「またね」が実現するかはわからないし、実現してもそれが近い将来なのか、何年も何十年も先の話なのか、何なら何世代も先の話なのか全くわからないらしい。
ということで、妖精との邂逅は気長に待ってみることにした。というか、我が家で妖精のことを忘れてしまうような、すごいことがあったのだ!お兄様が、何とグリフォンと契約したのだ!
それは、お兄様の初めての魔物狩りの間のことだった。我が家では子の初めての魔物狩りは代々受け継がれている一大イベントのようで、騎士達がお膳立てをするものの、10歳のときに生涯最初の獲物をしとめるセレモニーみたいなことをやるらしい。
と聞いて、思わずいいなぁと言った私に、お母様はあなたのときも同じようにやるわよと言われたけど違うのだ。自分がやりたいというのではない。お兄様が初めて魔物を狩る雄姿を見たいではないか。
「おにいちゃまみたいのよ」
お母様に訴えてみたが、
「まあ、ニコラはまだよちよち歩きですもの、魔物狩りに行くのは無理よ」
あっさりと断られてしまった。
何と!よちよち歩きではない!スタスタと歩いている!言葉よりも行動で示そうと私はスタスタと歩いてみせたが、そこへお父様が通りがかって、
「おお、よちよちと可愛らしい」
と何の悪意もなく私を褒めてくれた。……あきらめるしかない。
「ね、ニコラ?今回はお留守番ね」
「……あい」
私は渋々お留守番を受け入れたのだ。
こうして私が行けなかったお兄様初めての魔物狩りの途中で、お兄様は怪我をして弱っているグリフォンと出会ったらしい。そして、私が妖精にかけていた魔法と、そのとき聞いたハヤテの説明(正確には私がハヤテを通してしたものも含む)を思い出して、ヒールの魔法をかけたらしい。
「しゅごい!」
私もその場にいたかった……!グリフォンを癒し、そのグリフォンに気にいられて契約をするお兄様の姿を見たかったよ。
「おにゃまえは?」
前にフェンリルのハヤテと契約したときに、名づけで契約は完了すると聞いたから、当然お兄様もグリフォンと契約したのだろうと、私は初めて会ったグリフォンにお名前を聞いた。
すると、
(カイラーだ。主の妹よ)
グリフォンが念話で教えてくれた。それは確か我が国の初代の王様が契約していた神獣の名前だね!
「キャイリャー……」
しかし、言えない。
きゃ……いやカイラーはなんだか憐れむような目で私を見て、
(当面は、カイと呼ぶとよい)
と譲歩してくれた。
「あい!きゃい!」
(……カイと聞いておこう)
だからそう呼んでいるのにと言いたいところだが、確かに言えていない。申し訳ない。
「あい」
「ニコラは大切な妹だから、頼む」
(心得た)
「こちらは、ニコラが契約したフェンリルのハヤテだ」
(ほう)
お兄様は、私のことを頼んでくれた上に、ハヤテの紹介までしてくれる。……まあ、私の滑舌では不可能だからな。
紹介されたハヤテと、カイラーは、何だか探り合うようにお互いを伺った後、何だか納得したように頷いていた。
(よろしくな)
カイラーの言葉に、
(よろしく)
ハヤテも返す。
お兄様とカイラーと、私とハヤテ。4人でうまくやっていけるかな。私はなんだかこれからの日々が楽しみになった。
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