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「やったな」


帰ってきた九十九に向かって鋭い眼光を向け、六十八は焚き火に木の枝を放り込んだ。

パチ、と爆ぜる音がする。暗闇の中、炎の中に浮かぶ六十八の表情は硬い。

「よく二日も放っておいたね」

九十九は動じずに言った。

「昨日は何も言わなかった」

「本気かどうかわからなかったからな。だがお前はやった。本気だった――掟破りだとわかっているのか九十九」

「俺は弟子を持つことにしたんだ」

「弟子?」

「そう。ロサ・エスファナっていう弟子だよ。華やかでいいだろ。……ロサは結晶化が進んでる。アルタも結晶化に罹ったといった。多分皆死ぬね。だったら……教えてもいいだろ。もう、先がない」

「死が理由ではないな。やはりあの娘のためか」

「……そうかも。いや、……そうだよ。アルタは自分は死んでもいい、でもロサだけはどうにかしたいって言ったんだ。それ俺わかる気がするんだ。俺はずっと師兄上(あにうえ)たちが死んでいくのが悲しかった。大地に置き去りにしていくのも、戦いで見捨てるのも。例えそれが仕方がないことだとしても、掟だとしても――仲間が死んでいくのを見続けるのはずっと辛かったよ。どうにかして、みんな助けたかった。みんな生きててほしかったんだ」

「……」

「アルタのためにロサを助けたい。もう基本は教えてきた。学習するかは彼ら次第だ」

「装天できないのに? ――いずれにしろお前は掟を破った。覚悟はできているだろうな」

「……いいよ。師匠に殺されるなら構わない」


そう言って九十九は六十八の隣に横になっている七十七に厚手の布をかぶせると、その隣にまるくなった。

六十八は黙ってその様子を見つめる。


いいよ。師匠に殺されるなら。


(――馬鹿め。簡単に言ってくれる)

六十八は無言で焚き火をかき消した。

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