表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/56

変革


「もう言葉がありませんよ! 皆もそうです。本当に――」

ヴァルルは頬を紅潮させて、

「クリスタリスを倒してしまった! わずか五人で。ロサの人々は熱狂しています。当然ですよね。僕もまだ、信じられないっていうかなんというか興奮冷めやらぬって感じで」

「だから言ったでしょうヴァルル。さあ、落ち着いて箱に包帯を詰めて」

「あ、すみません、アルタ様」


つい手がおろそかになっていたヴァルルは慌てて五人分の包帯、それに水とロサ自家製の塗り薬を箱に詰めていく。戦い終えたレッセイたちの元に持っていくものだ。アルタが言うには手に怪我をしているとのことだったので、手当てのための用意をしていたところである。


「アルタ様」

見張りの門番がテント内に困惑の顔を見せた。

「皆が集まっています。それぞれ食べ物だの持ち寄って……レッセイ・ギルド様にあげてくれと。とにかく人だかりが凄くて」

「仕方ないわ……みんな驚いたでしょう。寄進は受け取って、まとめておいて頂戴。彼らに確かに届けるからと。それと一旦落ち着くように言って帰して」

「わかりました、やってみます」

そういって門番は外へ戻っていった。

「レッセイたちは迷惑がっていましたね」

「それはそうでしょうね。彼らの掟は他人と関わらないこと。だけどロサの人々が彼らのところに飛んで行ってしまいそうで怖いわ。そこは抑えないと」

「とりあえずもうすぐ昼になります。昼食を……いや、寄進が相当の量になるでしょうから用意しなくてもいいかな……皆、わずかな食料をだしあっているんです。凄い事ですよ」

「問題はその熱意に答えてもらえるかだわ」


そう言ってアルタは体をぶるりと震わせた。


「アルタ様?」

「あ、ああ……何でもないの。クリスタリスを見てから少し寒い感じがして……風邪かしら」

「そりゃいけませんよ、アルタ様!」

ヴァルルは慌てて近くにあった毛布をアルタの肩にかけた。

「すぐに横になってください。きっと疲れたんですよ。あんな……妙なクリスタリスを見たのは初めてでした。アルタ様もそうでは? だからなにか気分を害されたんですよ。変な光を出していたし……さ、布団へ」

「ありがとう」

アルタに何かあればロサ・エスファナの士気に関わる。大人しくヴァルルの言う通り横になることにした。例のクリスタリスを見てから、寒々とした感じがしているのは本当だったからだ。


(何か違和感がする)


九十九たちの勝利に自分も興奮しているのだろうか?

「お水を横のテーブルに置いておきます」

そう言ってヴァルルは古いガラスで作られた水差しとコップを置いた。古代の遺跡で見つけた、珍しく破損のない貴重品だ。

「じゃあ僕は彼らのところへ荷物を置きに行ってきます! レナス、アルタ様を頼むぞ」

「承知しました」

女官を呼びましょうか、とレナスはアルタに問うたが、アルタは遠慮した。

「一人でゆっくりするわ」

レナスはうなずくと外に待機しているので何かあればお呼びください、と言ってヴァルルと共にテントを出た。

一人残されるとアルタは、

(軽い風邪かしら。珍しい……皆に元気な姿をみせるためにも今はぐっすり寝ましょ)

そう考えて静かに目をつぶった。

お読みいただきありがとうございます!

感想・評価☆などいただけましたらよろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ