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王太子様に悩殺宣言したら溺愛されました 〜お手をどうぞ、僕の君〜【スピンオフ&完結】  作者: 春風悠里


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5.勝敗の行方

 結局あれから、五回くらい言わされた。

 私だけが涙目で、恥ずかしさで息も荒くなっている。

 

 ヨハネスの回答は正解で、演じた私もヨハネスも両者とも勝ちということになる。二人プレイだから、当たってしまっては勝敗がつかない。


「そ、それで……私は勝ったのかしら?」


 交互に続けるつもりだったけれど、もう精神的に限界だ。多少は誘惑されてくれたようだし、彼の腕の中で聞いてみる。

 少しは私に惚れてくれたのか、という意味だ。


 今までのやり取りのせいで、声も震えてしまっている気がする……。


「どう思う?」


 そう言うと思った。

 素直に言いそうなタイプでは、ないわよね。


「私に興味とわずかな好意を持ってもらえただけに思うわね。このままだと、まだメルルに負けるわ」


 なにせ、ヨハネスとのベストエンドを迎えてすぐに、この世界に来ている。彼女に癒されて恋に落ちていくヨハネスを、それはもうよく知っている。


 まだ……、敵わない。


「それじゃ、君は困るよね。どうするの?」

「それを悩んでいる……いえ、悩んでいますわ」


 しばらく丁寧語を使っていなかった。

 そろそろ直しておこう。


「仕方ないな。それなら、もう少しチャンスをあげるよ」

「チャンス……ですか?」

「ああ、もうすぐ君の誕生日パーティーがあるだろう? 一通り挨拶をしてダンスも終わったら、君の私室で遊んでから帰るよ」


 なんで私室を指定してきているのよ!

 今日招待されたから、お返ししろってことなんだろうけど……。


「分かりましたわ」

「ああ、それから敬語も丁寧語も禁止ね。僕のことも、様はつけないで」

「え……」

「その方が口説きやすいだろう? 君の持てる力の全てを使って――、僕を篭絡してくれ」


 だんだんと頭が痛くなってきた。


 彼が私の髪をふわふわと弄び、耳の近くにふわりとキスを落とされた。

 ぞくりと、背中が震える。


「……結局、ヨハンがどう思っているのか、聞いていないんだけど」


 さすがに呼び捨てはしづらい。ヨハン、と愛称にしておこう。


「どうだろうね」

「今までのやり取りで、十段階ならいくつくらいになったのかしら?」

「無粋だなぁ。もうちょっと色気のある聞き方をしてくれよ」


 言う気ないわね……。

 でも、まだ一度も照れている様子を見せてくれていない。だからこそ、私のやる気が削がれているのだけど。飄々としすぎているもの。


 あと残り一回の逢瀬で、そこまでいくかしら……。


「ねぇ、せっかくだから、他のカードの言葉も言ってみてよ」

「もう本当に限界……次回があるのなら、その時に考えるわ」

「断固たる意思は、どこにいったんだよ」


 確かに、目的を見失うほどに精神的に疲れていたわね……。強い決意を持ってここに来たはずなのに、逃げたくなっているわ。

 こんなことではいけないと、分かってはいるのだけど……。


 横に置いたカードに目をやると、黄色いカードの「にゃー」が目に入る。「威嚇のにゃー」や「甘えたにゃー」の文字を見て、ふと思う。


 カムラはこういうの、できるのかしら……。


 感情の動きがあまりないという設定だった。感情を殺さなければ生きてはいけない環境にいたからだろう。メルルの立場では、おそらく彼女の死亡エンドに関わっている。

 攻略を見た感じ、ヨハンルートに入りながら二股をかけるような選択肢や、ヨハンの情報を売るような選択肢で病死エンドと書かれていたはず。

 毒薬でそう見せている可能性は高そうだ。事故死エンドもあった気はする。どちらにせよ、手を下しているのはきっとカムラだ。


 でも、婚約者である私が死なないことも確定しているようなもの。少なくともゲームの中で、学園卒業時には確実に生きていた。

 一年生の学園祭の後に、森の端にある池のほとりの壊れた柵の隙間を縫って奥に進んだところにある「秘密の花園」でメルルと両思いになり、卒業まで一気に時間が経過して卒業式に私との婚約を破棄してメルルと幸せに……というストーリーだった。

 そこまでは少なくとも安全のはず。


「にゃーは、カムラに言ってほしいわね……」


 ついそう呟くと、私の髪で遊んでいたヨハンの手が、ピタッと止まった。


「……なんだって。僕を口説くか考えてくれているのかなと思ったら、他の男のことを考えていたの? 意思が薄弱すぎるね」


 しまった……。


「え、いえ……つい、ふと……」

「そもそも、今までカムラになんの興味も持っていなかったよね」

「あ、ええ、まぁ……」

「なに、それも夢の影響?」

「ああ……確かにそうね……」

「今すぐ、予知夢の内容を全部言ってみてよ」


 おかしい。

 なぜ、カムラのにゃーを聞きたいと言っただけで、夢の内容を問い質されているのか……。


「フィデス王国第二王子のセオドア様が、王立学園に入学されるわ。第一王子のジェラルド様も、半年だけの交換留学生として入られるわね。他には、アンソニー様や騎士学校の首席卒業者のリック様、平民出身の特待生入学者としてのメルルさんね。知っている入学者はそれだけよ。カムラは薬学の臨時講師として入って、ダテ眼鏡をかけるわね。ヨハンはメルルさんと食堂で相席になって、芝生を裸足で歩こうと誘われると、恋に落ちるわ」

「なんでだよ、意味が分からないな。前半部分は、確かにそうなりそうだと思う部分は多いね」


 合格発表日はまだ先だ。全員目立つ存在だし、受験者の名前として把握はしているのだろう。

 よからぬ人間に入り込まれては、身の危険もある。受験者は報告されているに違いない。


「ふぅん……君には少し無理をさせたようだし、一つくらい願いを叶えてあげようかな」


 天井裏を見ている。

 まさか……カムラを呼ぶ気?


 ゲーム内でもさらっと普段は天井裏で侵入者を警戒することもよくある、といったような内容の文章があった。外から侵入者が入って来た時にも、いち早く駆けつけられるから、と。


 もしかしたら、待機室などではなくて上にいた……?


 王子が暗殺されることだけは、何があろうと避けなくてはならない。

 天井裏にカムラがよく潜んでいることは知らなくても、それが何よりも優先されることは私になる前のライラも理解していた。


 カムラルートをプレイしていれば、もう少し詳しく分かったのだろうけど……。


「カムラ、ちょっとそこから降りてきてよ」


 ヨハンがそう言うと、部屋の隅の方からカムラが降ってきた。


 やっぱり……!!!


「ヨハネス様、さすがにマナー違反ですよ。扉を開けて呼んでいただければ、普通に入りますのに」

「立ち上がるのも面倒だったしね。ふぅん、驚かないんだな、ライラ。これも夢で知ったの?」


 私がまだ話していない夢の内容があると、確認するためか……。


「……そうね」

「結婚前に知っておいてくれているなら、それに越したことはない。カムラ、この中で好きな『にゃー』でも、言ってあげてよ」


 ピッと、「にゃー」のカードが飛んでいき、二本の指でカムラが受け止めた。


 そして、さっきよりも強めに後ろからぎゅっと抱かれる。


 なにこれ……抱かれながらカムラの「にゃー」を聞けってこと?


 これは、あれよね……。されたことがないから概要は知らないけれど、いわゆる羞恥プレイもどきじゃない?

 そーゆー趣味なの、この人。落とせても、学園に入ってからの生活が恐ろしいんですけど……。

 おかしい……メルル相手だと、そうではなかったはずだ。


 二本の腕で背後から抱かれながら、目の前のカムラがカードから目を離し、こちらを真っ直ぐに見る。


 なんという、羞恥……!!!


 赤くなった顔で、カムラの「にゃー」を待った。


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