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67話 秘密結社

「お前がヨーゼル・セフィラス……人間の中で最も強いという」



「フォッフォッフォ、未だにそんな噂が広まっておるとはのう。年寄りは引退させて欲しいものじゃ」



「ほぅ……それが望みか。ではここで……吾輩が葬り去るとしよう!」



 グラシャが再びステッキを手にし、魔力を集中させた。



「……」



(ウワハハハ! ここで最も我らの障害となりうる可能性の高い者を排除すれば……既に不安要素は消滅する。ここで塵となれヨーゼル・セフィラス!)



『猛き地獄の(ほむら)。現し世を包み、汝に触れたる生命(もの)全てを灰燼と化せ! 獄炎消却(インフェルノ)!』



 巨大な炎の壁がヨーゼルを飲み込む、圧倒的な大火力で辺りは文字通り火の海と化した。



「くくく……何も抵抗できずに灰となったか……?」



「甘いのう」



「!」



 見るとヨーゼルとレインの身体は青い水の球体によって包まれ、一切炎のダメージを受けてはいなかった。



「何だと……吾輩の最強の炎を受けて無傷だと!?」



 グラシャは驚愕する、例え水の魔法を得意とする相手であっても最強の火属性魔法をそう簡単に打ち消せはしない。

 しかしヨーゼルはそれを全く苦にしていないのだ。



「では次は……こちらの番かの?」



「!?」



 ヨーゼルの周りに火属性、水属性、地属性、風属性の4つの魔法陣が現れた。



四魔殲滅弾フォースカタストロフィー



 4つの属性魔法、それは同時に放たれて凄まじい威力となった。

 グラシャは為す術もなく直撃を受け、その身体は粉々となって塵と消えた。



治癒(ヒール)



 そしてヨーゼルは火に燃える森を鎮火させ、レインに回復の魔法をかける。



「うぅ……」



「何とか生きてはおるが……重傷じゃな。殿下、お待たせしてしまってすまんのう」



「いや……まさかあの魔族を倒しちまうなんて……流石というか……」



 結界に囚われていたティルディスも無事に救出される。

 しかしヨーゼルの圧倒的な実力を目にし、現実離れした浮遊感を感じていた。



「……」



「殿下?」



 ティルディスは歩いて、ダグラスたちの死体を集め始めた。



「こいつら、俺の護衛なんてさせられたから……殺されちまったんだよな。悪いことしちまったよ、謝って済むようなことじゃねぇが……」



「……」



 ティルディスの顔には様々な感情が渦巻いていた。

 自分がワガママを言わずに王城にいれば、死ななくてすむ命だった。

 初めてその日、外に出ることの恐ろしさを身にしみて味わうこととなった。







「悪いね……僕はお前たちを相手に正面から粘るほど愚直じゃないんだ。ここは大人しく引かせてもらうとするよ」



「!」



「ユーズ、また会おう。いや会うことになる……が正しいかな? 僕の真の名はレラジェ(・・・・)、覚えておいてくれ」



 ブラッドが咄嗟に風の刃を撃つが、それが当たる前にネオスはその場から一瞬で姿を消した。

 見ると血による魔法陣で空間移動を行ったのだ。



「随分と引き際を弁えた奴だったねぇ」



「消耗している様子だったからね。ユーズと戦って、さらに僕らを相手にするほど余裕は無かったってことだ」



 ネオスが逃げたことで一先ずの危機は去った。

 しかしユーズにはまだ気にしなければいけないことが。



「先生、ティルディス殿下は?」



「あぁ心配ない。向こうにはヨーゼル校長が行ったからね。僕ら2人よりも頼もしいだろう」



「そうか……良かった」



 心底ホッとした様子で胸を撫で下ろすユーズ。



「せ、先生たちはどうしてここにいるんですか?」



 フエルが陰から出てきてアルゼラたちに尋ねる。



「あぁ、ヴェルエリーゼたちから騎士団本部に連絡があったんだ。ユーズが突然走り出して行ったってね。それで騎士団からすれば、まだ殿下の護衛途中ってことを鑑みて大事を取った。つまり僕たちが呼ばれたということさ」



「そうだったのかぁ……後でヴェルエリーゼさんたちにお礼言わなくちゃ……」



 ユーズはヴェルのことを思い出す、そういえば突然自分が走り出して彼女たちを置いてきてしまった。

 後で怒られそうな……しっかりと謝っておこう。



「さてとりあえず君たちを家まで送るよ。今は気配がないけど……いつ狙ってくるか分からないからね」



「そーそー。若いからってあんまり無茶しちゃ駄目よ青年。人生いつどこに災難が転がってるか分かんないだから」







 ヨーゼルたちが去った後―



「やれやれ酷い姿だね、グラシャ」



「うるさいぞレラジェ(・・・・)! さっさとお前の力で吾輩の身体を治せ!」



 何とグラシャの身体は胴体が一切なく、頭だけが地面に転がっていた。



「ん? あぁ、ちゃんと生きてたね。頭だけで生きてるのも流石っていうか」



「そんなことはいいから早く吾輩の身体をだな!」



「うーん……こりゃ完璧に消し飛ばされてるから結構時間がかかるんじゃない? 僕だけじゃ無理だよ」



「うぬぬぬぬぬ……許さんッッ! ヨーゼル・セフィラスめッッッ!!!」



 グラシャは頭一つの状態で怒りの声を上げる。

 この状態で生きているというのは、魔族の生命力の強さを感じさせる。



「ま、次からは慎重になることじゃない? 流石に調子に乗りすぎだよ」



「ぐ、ぬぬぬ……若造めが。言いたいことばかり言いおって」



 しかし次の瞬間、彼らの頭に連絡が入った。



「呼び出しだよ。まぁその状態でも出られるから大丈夫か」



 ある場所―



「遅かったですね。レラジェ、グラシャ」



 ある人物の影が話す、その場所は会議場のように円卓が置いてあるが、実際にその場にいるのは1人だけだった。

 殆どの構成員は己の影を映して会議をする、今は全員で9人だ。



「いや。ヨーゼル・セフィラスたちに妨害を受けてね。このざまなんだ」



 レラジェがグラシャを指定して言う。



「ぐぬぬ、吾輩はだな……先に未来の障害を排除しようと……!」



「先走りが過ぎるわね。ヨーゼル・セフィラスは然るべき手筈を整えて後に消す、それが私たちの共通認識だったと思うんだけど?」



 高飛車な態度の女性が話す。



「負けちまったもんはしょうがねー。よし、この俺が代わりに奴を消すってのは……」



「止めておけ。今のお前ではアレと同じ姿になるか、それとも身体全てを消し葬られるかの2択だ」



「ケッ、黙ってろよアスタロト。テメェこそとっとと消しちまってもいいんだぜ?」



「お前ごときにやられる覚えはないが」



 若い男2人が口喧嘩を始める、それを仲裁するようにして丁寧な口調の男が割って入った。



「止めなさい。ダンタリオン、アスタロト。〈王〉の御前です、見苦しい真似は許されませんよ」



 〈王〉と呼ばれたそれは―実際に会議場の円卓に実在する人物だった。

 不気味な仮面を被り、表情は全く見えない。



「にしても、またアイツはいねーのかよ。俺たちの注意よりも会議に一度も出ねー野郎の方が問題じゃねぇのか?」



 ダンタリオンと呼ばれた若い男が抗議の声を上げる。



()については〈王〉自らが良いと仰ったのです。問題はありません」



「そんなことよりも招集した理由があるんじゃないの?」



 レラジェが会議の脱線を元に戻す、長ったらしい会議を彼は苦手としていた。



「はい。〈星読み〉より与えられた、〈王〉の新たな指令です、各自よく把握をしていくように……我ら秘密結社(アルカナ)の偉大なる計画遂行のために……!」








「やれやれ、何度やっても面倒な会議だね」



 レラジェは首をコキコキと鳴らし、まるで身体が凝ったかのように振る舞う。



「それにしても吾輩の心配をしているようだが、お前自身は大丈夫なのか?」



「ん?」



「また手駒がやられたようではないか。お前の戯れのような行動は意味があったのか」



 グラシャはレラジェを問い詰めるように話す。

 しかしレラジェは相変わらず飄々とした態度を崩さない。



「んー。学園に潜入してたことなら意味があったよ、色々と面白いものは見れたしね。それに……」



「手駒だったら新しいのを見つけたんだ。今までみたいな出来損ないじゃない、真の才能がある。僕らと近い存在だよ」

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