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62話 宝探し

 ティルディス殿下の誘いで海水浴にやってきたユーズたちは海で楽しく遊んでいた。



「ワハハハ! どうやら水泳はこの俺が上のようだな我が好敵手(ライバル)!」



「流石に速いなハルク」



 水泳のスピードはハルクが一番、それに次いでティルディスが速いという結果が出た。



「やるなハルク、ユーズから体術が得意だって聞いてるが運動は大得意ってやつか」



「殿下こそ、引き締まった身体と無駄のない動き。体術には自信ありですね?」



「おぉ、分かるか。よぅし次は負けねぇからな」



 ハルクに対抗心を燃やすティルディス。

 一方少しくたびれたので浜に上がる他の3人。



「ふぅ……いやぁ疲れたぁ」



「殿下もハルクも凄いな。体力が底無しだ」



 あの盗賊ギルドのアジトでも、あれだけ動いて息一つ乱さなかったことを思い出す。

 俺ももう少し身体を鍛えた方がいいだろうか……。



「お前たち、騎士団に参加してどうだった」



「何だよ急に」



 唐突にアリウスが尋ねる。

 しかし声のトーンからして真面目な話らしい。



「まぁ……何というかまだ掴めてないっていうのが正直なところだな。騎士のイメージが一様じゃないってのは理解したけど……」



「そうか。思ったより冷静そうで安心したぞ、殿下救出の件などで思い上がったりしている可能性も考えたが」



「何だ随分とキツいな」



 アリウスのことだ、恐らく俺が本当に思い上がっていないかどうかチェックしたのだろう。



「ただ言えるのは……」



「騎士は守るもの、そして力はそのために使うのが騎士の持つ答えなんだと……そう教わったよ」



 ブラッド隊長に言われた台詞を思い出す、普段はちゃらんぽらんな隊長が真剣な表情だったことを覚えている。



「……そうか。それは実りある学びだったな」



 そう呟いたアリウスの顔は優しげで、同時に憂いを帯びていた。



「くぁ〜〜〜、泳いだ泳いだ。休憩だ休憩」



「流石の俺も限界だ……」



 そうこうしている内に殿下とハルクが海から上がってきた。



 「喉が渇いたな」



 ハルクが反射的に口にした言葉に殿下は反応する。



「あ、そういや俺レアなスイカを用意させたんだ。早速割ろう」



 全員が集まり、スイカ割りの準備を始めることになった。

 殿下が部下に持ってこさせたそれは……。



「こいつが王国でも極一部の農家しか栽培してないという"スイ禍"だ。一般には出回ってないレア物だぞ」



「何よコレ……本当に食べられんの?」



「ど、独特の……独特過ぎるスイカですね」



 そのスイカは黒い線の部分が目玉となっており、時折目を開けてはぎょろぎょろと動いている。

 しかも茎から切り離されておらず、少しくっついてる葉は牙と口のような形状で、これまた勝手に動いている。



「収穫に苦労したんだぜ。葉っぱが襲ってくるもんだから格闘しながら……実だけ切り離すのは難しくて断念したが」



 もはや魔物の類いに見えるソレを誰が割るのか、白羽の矢が立ったのはハルクだった。



「妥当な人選だな」



「安心しろ、この俺が見事に砕いてみせる」



 ハルクに目隠しをさせ、棒を持たせる。

 本当に大丈夫なのだろうか?



「ハルク君、もうちょい右だよ。そのまま前に」



「そうか、分かったぞ」



 ハルクが化け物スイカに近づいていく。

 方向はあっているが、動き出したのは向こうだった。



「うわっ、葉っぱが!」



 牙のついた葉がハルクに襲いかかる。

 だが当の本人は棒を牙にくわえさせ、ツルを掴んだ。



「ここだあああっっ!!!」



 ツルを掴んだまま、投げてスイカを空中から振り下ろした。

 その衝撃でスイカは見事に割れた。



「はははは、どうだ! 見事割ってやったぞ」



「でかしたぜハルク。皆、こいつは見た目はあれだが味は抜群なんだ」



 殿下が喜んで皆を呼び集める。

 ハルクは誇らしげだが、俺としては何というか知識で得ていたものと実物の違いを感じた。



「スイカ割りってこういうのなのか。初めて見たけど豪快な遊びなんだな」



「一般的なそれとは違うかも……しれないですよ」



 スイカを食べた後、とりあえず昼休憩を取って食事することにした。



「そういえば泳いでる時に気になったんだけど、あの変な形してる小島って何なの?」



 フエルが指指した方向、確かに小島がある。



「あれは"結び島"と呼ばれてるらしい。ハートの形に見える島だが大昔に海賊ギルドが隠した宝が奥にあってその宝を持っているカップルは結ばれるとか……ま、与太話だろうがな」



 アリウスはどうやら知っていたらしい。

 しかし結び島とはそういう意味だったのか。



「よし、午後は皆であそこに行ってみようぜ」



「なるほど。面白そうだ」



 殿下の提案にヴェルも乗る。

 しかしそれなりに遠いように見えるが……。



「どうやってあんなとこに行くのよ。ボートもないし、まさか泳いで行くってんじゃないでしょうね」



「ユーズに道を作ってもらおう」



 ヴェルがこっちを見て微笑む。

 まさか……。



「なるほど、ユーズ君に氷の道をね……」



 俺は海面に対して一直線の氷の道を作った。

 難しいかと思ったが、意外と何とかなるものだ。



「冷たくて丁度いいですね」



 照りつける日差しと気温、だが氷の道は冷えていて上手い具合に気持ちが良い空気を作り出している。



「しかし近づいてみると結構大きい島だな。俺の拳でも破壊できなさそうだ」



「何か本気なのかそうじゃないのか分かんない冗談かますわね、アンタ……」



 島に上陸すると殿下は先陣を切って進む。

 特に危険な動物がいる雰囲気でもないが、やや危なっかしい印象だ。



「アンタあの殿下の面倒見てなくていいの?」



 シオンが小突きながら聞いてくる。



「多分大丈夫だよ。強いし」



「やれやれ、何かとんでもないのに懐かれたみたいで大変ね。ま、こういう遊びは悪くないけど……」



「おい皆、お宝を探してみようぜ」



 殿下はカップルがどうとかより、純粋に宝に興味がある様子だった。

 しかし宝探しに関心があるのは彼だけでなく。



「ユーズ、私たちも探してみないか?」



「ん? あぁ、そうだね」



(もしかしてヴェルエリーゼさん、宝を見つけたカップルが結ばれるってことを気にしてるんじゃ……)



 普段よりも妙に積極的なヴェルの姿をフエルが訝しむ。



「何だあの逆道の上……丸い岩が置いてあ……」



 島を探索していると、ティルディスが何かを発見したようだが途中で台詞が止まる。

 異様な見た目、少しでも刺激したら転がり落ちてきそうだ。



「う、うわっ。何あれ!?」



 思わず後ずさりするフエルだが、足元にあった石を蹴飛ばしてしまった。

 するとゴゴゴゴと坂の上にあった岩が転がり始めた。



「なっ……!?」



「冗談でしょ、何よあれ」



水流柱(スプラッシュ)!』



 咄嗟の判断でヴェルが魔法を放ち、岩の軌道をずらす。

 水流を受けた岩は横にそれて海に落ちていった。



「あ、危なかった〜」



「明らかに自然のものとは思えないな」



 アリウスが寄っていって調べると、人工的に仕掛けられたトラップの跡がある。



「しかも……」



 岩のあった場所の近くに宝箱が置いてあった。



「おっ、まさか本当にお宝か!?」



「いやこれは……地図だ」



 宝の地図、それに書かれたのは島の全部だ。

 そして髑髏のばつ印が島の真ん中に書かれている。



「おいおい、こりゃ面白くなってきたぞ。皆これを見ろ!」



 ティルディスが喜々として皆に地図を見せつける。

 ハルクとフエルは驚いており、シオンは冷ややかな眼、ローディは怪訝そうな表情だ。



「まぁ本当にあっても無くても面白いじゃねぇか! よぅし、島の真ん中に行って宝探し開始だ!」

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