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53話 初任務

「ここが目的地の近くの村か、特に問題なく着いたな」



「何だか霧が出て不気味なところですね」



「ま! 早速聞き込みといこうじゃないの」



 ブラッドを隊長とした5人の小隊―ブラッド隊が初任務の目的地近くへと到着した。



「この近くの湖に今回のターゲット、クリオネ(・・・・)がいるんだよね?」



「その筈だと思うけど、そんなもの本当にいるのか?」






________







 これより3時間ほど前―



「やぁ諸君、おはよう。今日はちょいと人生の在り方を深く考えてたら遅くなっちまって……」



「集合時刻より45分の遅刻です、隊長」



 ヴェルが圧を込めて言う。

 それを聞いたブラッド隊長はメンゴメンゴと手を合わせた。



「ま、まぁ……それはそこまでにして、今回の任務について確認しましょうよ」



「ローディの言う通りだ。ブラッド隊長から詳細の説明をお願いします」



 俺が促すとブラッド隊長は会議室内で地図を開いて説明を始めた。



「んじゃま、見てくとしますか。今日の任務はDランクに相当する内容だ。依頼者はエライ生物学者みたいだけど、何でも湖に生息してるクリオネを調査してくれって」



「クリオネ?」



 ブラッド隊長の説明中、フエルが反射的に疑問を呈する。



「クリオネっていうのは寒い海に棲んでいる貝の仲間ですね。見た目は小さくてかわいい生き物です」



「へぇ〜そうなんだ。ありがとう」



「うんうん、助かるな〜ローディちゃん。ま、説明を再開してくけど、その前に一応任務のランクについて確認しておくか」



 隊長は部屋の隅にある1枚の表を持ってきた。

 そこには騎士団が受ける任務のランクについて詳細に書かれてある。



「上から順にA、B、C、D、Eランクになってんだよね〜。ま、魔物の脅威度とおんなじよ。一番上のAランク任務は死ぬ可能性が比較的高い危険な任務、Bランクは戦闘が予想される任務、Cランクは負傷の可能性がある任務、Dランクは今回みたいな直接戦闘は予想されない任務、Eランクはまぁお使いレベルだわな」



 戦闘は予想されないと聞いてホッと安心した様子のフエル、アルゼラ先生も学外任務で専らやるのはD・Eランクと言っていたし妥当なとこだろう。



「話は戻りますけど、クリオネはさっきも言ったように海の生き物ですよね? 淡水の湖に生息してるなんて聞いたこともありませんが……」



「んー。ま、だから調査してくれってことなんじゃないの? もし見つかったら学者にとっちゃ面白い発見ってとこでしょ」



 飄々とした口調のブラッド隊長だが、まぁ任務の理由自体はそんなもんだろうと俺も同意できる。

 それにしても湖に棲むクリオネとは……海と繋がっている湖なのだろうか。



「まぁいずれにせよ私たちはそのクリオネがいるかいないかを湖に調査しに行くのが任務だ。実際にいるかどうかは問題ではないんじゃないか」



「そそ、嬢ちゃんの言う通りよ。俺らは学者じゃないからね。そんでもって行き先はね……」



 王都から徒歩で約2時間ほどの山間の村、その近くの湖が調査の対象らしい。






________







「まぁ無事に着いて何よりってやつか」



 道中は特に問題なく、魔物や盗賊に襲われることなどもなく、順調だった。

 時折あのおっさ……ブラッド隊長が軽薄な発言をしてヴェルに呆れられることはあったが。



「……それにしても何だか雰囲気がピリピリしてる村だね、ちょっと居心地が悪いや。しかも何か変なニオイするし……」



 フエルの言う通り、妙に村全体が殺気立ってる印象を受ける。

 天気が曇天かつ霧が出ているというのもあるが、全体的に暗く淀んでいるような……。

 さらに肉の腐ったような匂いだろうか、何となくそれを遠くから感じる。



「聞き込みってどういうふうに……って」



「やぁやぁお父さん、農作業お疲れさんです。ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」



 ローディが方法を質問する前にブラッド隊長はいつものノリで農作業中の男性に話しかけた。



「……知らねぇ」



「またまたぁ、そんな。ささ、どうです? お近づきのしるしに一杯……」



「うるせぇぞ、ヨソもの。知らねぇもんは知らねぇんだ!」



 撃沈してこちらに帰ってくるブラッド隊長。

 こりゃ困った、という顔をしている。



「今のは取り付く島もないってやつだねぇ。ま、落ち込まない落ち込まない。後5〜6人に話し聞いて、分かっても分からなくてもそれで出発しちゃおうか」



 隊長の提案にとりあえず同意する。

 先ほど拒否されたのはブラッド隊長がとりわけ胡散臭かったから、という可能性もなくにはないが……。



「やや、お母さん! どうですか、お調子は……」



「そこのお兄さん! ちょっとおじさんを助けるつもりで……」



 しかし尽く失敗しているようだ。

 どうにもこれでは埒が明かない。



「……ん?」



 いつの間にか霧は晴れていたが、今度はポツポツと雨が降り出した。

 そのせいか外に出ている村人の数も少くなっているような。



「あちゃー……本降りだねぇ、しょうがない。一旦宿で休もうか」



 ブラッド隊長に促され、村の宿を探して中に入る。

 既に2時間歩き通しであったため、休めるのは単純にありがたい。



「中々上手くいかないですね」



「仕方ないだろう。私たちは初めて来た人間だ、村の人々というのは時に閉鎖的なこともある」



「そ〜うそう、何事も最初は中々上手くいかないもんよ。ま! 雨が止んだら気を取り直していこうじゃないの」



 それから数十分間、他愛もない話で時間を潰していたが雨が止んだのだろうか。

 雨音がしなくなっていた。



「お! 雨が止んだねぇ。んじゃ野郎どもは着いてこーい、ちょっと聞き込みして終わったら戻ってきて、それから湖に向かおう」



「はーい」



 隊長の指示にフエルが返事をする。

 ヴェルとローディを残して俺たちは宿を出た。



「……どうしたんですか? ヴェル」



 ローディが何やら考え込んでいる様子のヴェルに話しかける。



「少し気になることがあったんだ」



「気になること……村の人たちのことですか? 確かに他所から来た人を嫌う性質が強いみたいですけど……」



「いや……そこじゃない。この村、1つも教会を見かけていない(・・・・・・・・・・)



「……えっ?」



 ヴェルの意外な返答にローディは思わず単純な疑問で返してしまう。



「確かにそういえば……見かけませんでしたね」



 教会といえば当然あるもの、普段から身近に存在するものだ。

 王国において教会を見かけたことのない人などいないだろう。

 しかし、それが無いということは。



「この村の人たちは信仰がないということでしょうか?」



「そこまでは……ただ、教会を1つも見かけないというのは明らかに不自然だ」



 ヴェルはそんな村を今まで見たことがない。

 そしてこの村の異様な雰囲気、最初に感じた腐臭……この符号の意味するところは。







「……ありゃりゃ。皆さんどったの? はははは、穏便にいきましょ穏便に」



「ゆ、ユーズ君……これ……」



「マズいな」



 外に出ていた俺たちは武装した村人たちに取り囲まれていた。

 このままでは宿にいるヴェルたちも危ない。



「……来たか」



「ヴェル?」



「恐らく村の連中だ。ローディ、周りに注意してくれ」



 ガタガタという音、恐らく宿は囲まれている。

 あと数刻もすれば押し入ってくるに違いない。



「最初の任務……これは随分と難しいことになりそうだ」

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