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46話 皆で遊びに

「何か最近、変なことが続いてると思うんだよな」



「どういう意味だ? ユーズ」



 学園の昼下がり、食事を終えて休み時間を過ごしていたユーズはヴェルたちと教室で話をしていた。



「いや……俺たちの身の回りに」



 グラジェクトでの不可解な現象といい昨日の魔生物学実習といい……。

 何か根拠があるわけでもないので偶然と言ってしまえばそれまでなのだが。



「確かに昨日は大変でしたね。誰も怪我をしなくて良かったです」



「ホントだよ。キマイラが3体も同時に出てくるなんて、普通なら大事件だ」



 結局昨日はキマイラを俺たちで倒した後に授業は中止、急ぎ学園へ帰った。

 それから話はハルファス教頭、ヨーゼル校長へと移り、どうやら騎士団の方まで話はいったらしい。

 今はあの森は危険区域ということでしばらく封鎖をするとのことだ。



「そう言われればユーズの言う通り、妙なことが多いかもしれないな。フエルもこないだの薬草学で肉体強化のポーションを作っている時に爆発していたし」



 フエルが薬草学の実習で調合を間違えてまさかの爆発薬を作ったのはクラスの語り草だった。



「ちょっ! それは関係ないんじゃない!? ……まぁ、特に変な理由が無くてもツイてないっていうことだよね。変な理由があったらコワイけど」



 微妙な間、不可解なことが身の回りに迫っているという疑念があれば誰でも気分は下がるだろう。



「それじゃあさ、次の休みに遊びに行こうよ」



「!」



 突然のフエルの提案、特にそれに対して反対することはなく―



 翌日、王都ガーネット通りにて。



「やぁお待たせ」



「よぅフエル」



「おはよう」



「おはようございます」



 フエルが約束の時間にやって来る。

 今日の彼は上下をルーズシルエットに揃え、白のフェルトハットを被っていた。



 既に俺はヴェルやローディと一緒にここまで来ていたので、残りの皆を待つ。

 そういえばガーネット通りと言えばヴェルとケーキ屋で色々あったものだが……。



「これで後は3人か」



 そう言うと通りの向こうに視線を移すヴェル。

 今日の彼女は美しい銀髪を後ろにまとめ、白のワンピースにキャラメル色のブーツを履いている。

 ローディは襟付きのリボンブラウスにチェックのロングテールスカートという上品な格好だ。



「待たせたな」



「アリウスか」



 今日はこの男も誘われていた、アリウス・ハイランド。

 白シャツに黒が基調で青いラインの入ったジャケットを羽織っており、首にかけた細いシルバーのチェーンが良いアクセントになっている。

 元々顔とスタイルのいいやつだが改めて見ると、あの癖さえなければ異性にはモテ放題だろうと感じる。



「よーお前ら、もう居たのか!」



「お、ハルクにシオン」



 次にハルク・レオギルスとシオン・エルメージュが合流する。

 ハルクは相変わらずといった様子で、紺色のシャツにダメージジーンズという装い。



 シオンは黒のワンピースにコチニールレッドのコートを羽織っている。

 何で私がアンタたちと……などとブツブツと言っているが、彼女の表情は時折にわかに嬉しそうなのが透けて見えた。



「ガーネット通りの店には面白い遊びがあるんだ。お前たちもどうだ」



 ハルクが何やら面白いという店を紹介する。



「こいつはエキサイトディオネア。刺激を与えると向こうの棚に置いてある景品に食いついてそれを取ってくるんだ」



 見た目は異常にデカいハエトリグサであり、茎のところに軽く刺した跡みたいなものがあった。



「これをどうやって刺激するの? あっ、何か針みたいなのあるけどこれかな」



「ほら、向こうでやる人がいるぞ」



 隣にはもう1つエキサイトディオネアがあり、そっちの場所では別の客がやっている。

 その客があらかじめ置いてあった針を刺すとエキサイトディオネアはぐーんと首を伸ばし棚の宝箱に食らいついた。



「はいよお客さん、当たったのは"風の腕輪"だ」



 壮年の店長が客に景品を渡す。

 客は儲けたとばかりに喜んで景品を持って帰っていった。

 確かに"風の腕輪"は風の魔力が搭載された、着ければ速く動けるようになるという貴重な高級アイテムだ。



「よし、俺もやってみるか」



「ははは、初心者は中々コントロールが効かないぞ。景品に当てるだけでも難しいからな」



(……この辺かな?)



 早速俺も料金を払い、机に置いてある針をエキサイトディオネアに刺した。

 だがエキサイトディオネアの伸びた方向は景品の置いてある棚ではなく……。



「あ」



 棚の近くにいた店長の頭を食らっていた。



「え……これはまさか店長が景品……?」



「そんな訳あるか!! 痛いわ!!!」



 店長は頭を食われたまま叫ぶ。

 その後何とか外から取り外した。







「あー傑作だったぞユーズ! 幾ら初心者とはいえ俺はあんなことになっている姿を見たことがない」



「もういいだろアレは」



「まぁまぁ。ある意味ユーズの才能なんじゃないか?」



 その後皆でガーネット通りを歩いている途中。

 ヴェルにフォローになってるんだかなってないんだか、良く分からない感じのことを言われた。



 ちなみにハルクは置いてある針ではなく己のパンチで刺激を与えていた、良いのかあれは……。

 上手かったのはアリウスやヴェル、一方でシオンはセンスが皆無らしくムキになって何度も挑戦していた。



「武器屋があるな。見ていかないか」



 アリウスが店を指差す。

 そういえば武器の新調など考えたことも無かった、そもそも零華は替えが効かないというのもあるが。



「いらっしゃい。王立魔法騎士学園(ナイト・アカデミア)の子たちかい、よく見ていきなよ」



 老齢の店主が出迎える。

 店の中の品揃えは豪華で、剣や槍に弓といったメジャーな武器に加えて格闘用の手甲や魔力の出力を上げる力を持つ魔導書なども置いてあった。



「へぇ、結構いいじゃないコレ。見た目もいいし切れ味もよさそう」



 シオンは剣を手にとって眺めている。

 そういえば彼女の普段使っている剣はかなり手入れが行き届いており、武器には拘りのあるタイプなのかもしれない。



「私もこういうの買った方がいいんでしょうかね……」



 赤い魔導書を手に取っていたのはローディだ。

 独り言のようだが聞こえてしまった。



「まぁローディはローディらしく戦えばいいんじゃないか? でもまぁ魔導書持ってる姿は結構似合うと思うけどな」



「そうですか? ふふっ、それなら使ってみようかな……」



 彼女はアッサリと買うことを決めた、何だか微妙に責任を感じるが彼女は嬉しそうだったのでまぁいいだろう。



 武器屋の後は服屋に立ち寄り、束の間のファッションショー。

 ヴェルやローディはどちらかといえば流行には疎いタイプであったが、シオンは得意気に講釈をたれつつ彼女たちに流行の服を着せていた。



「果たして妹がどう思うか、それが重要だ」



「……そうか?」



 アリウスはいつも通りなので半ばスルーである。



「俺としてはもっとワイルドなデザインの方が……」



「前を破くなよ? ハルク」



「ユーズ君はひたすらツッコミ役だね」



 その後俺たちは再び移動し、今流行りだという"わらび餅ドリンク"なるものとフルーツサンドを買った。



「ワラビモチって何?」



「異文化のお菓子みたいですね」



「まぁ気にしたら負けよ。流行なら何だっていいじゃない」



 そして光画魔動機(フォトデバイス)を使って皆と一緒の集合写真を撮影、思い出の1枚だ。







「あー楽しかった。やっぱり皆と遊びに行くのっていいなぁ」



「私は普段は都会で遊ぶということはしないが、こうして皆と来ると違うな。ありがとうフエル」



 日が傾いた夕方、皆と1日遊び終えた充実の時間だった。



「楽しかった」



 俺の自然に出た一言、すると俺に皆が視線を集める。



「友達とこうして遊ぶのは初めてだったから。また皆で来たいな、俺は」



 それを聞いた皆は笑顔で返す。



「そうですね。また来ましょう」



「ど、どうしてもアンタが行きたいって言うならまた行ってやっても……」



 夕日に照らされながら7人はそれぞれの帰路に着いていった。

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