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36話 夜半の決闘

「フン……貴様らが最近ウワサになっている褒章狩人(バッジハンター)とかいう連中か。悪いがコイツは見知った顔でな」



「あ……アリウス君!?」



 ダンスパーティーの最中、騙されて襲われていたフエルを助けたのはアリウスだった。



「……! テメェ、ナメた真似してんじゃねぇぞ? あぁ? 俺を誰だと思ってんだ、黄泉の番犬(ブラックケルベロス)のワース・ガドルホルだぞ?」



 あの厳つい男子生徒―ワースはボタボタと鼻血を出しながら顔を抑えている。

 どうやらアリウスに顔面を殴られていたらしい。



「ナメた真似? 貴様らに言われたくはないな、所詮は星褒章(スターバッジ)を手に入れるためにコソコソと裏で小細工ばかりしている連中如きに。……そして俺は貴様など知らん」



 アリウスが煽ると男子生徒の青筋がビキビキと立っていく。



「あ、アリウス君……」



「これはお前の物だ、奪われないよう精々大事に持っておくんだな」



 フエルが心配そうに話しかけるとアリウスは奪われたフエルの星褒章(スターバッジ)を彼に渡した。

 さっきワースを吹っ飛ばした時に取り返していたのだ。



「ちょ、ちょっと……何なのよこいつ。早くあんなの2人とも潰しちゃってよ」



「黙ってろ殺すぞ」



 怒りに頂点に達しているのか、女子生徒の言葉もろくに聞かない。

 ワースは血走った目でアリウスを睨みつける。



「いい度胸だぜ1年坊。後悔すんじゃねえぞ」



「……」



 アリウスも剣を召喚すると互いに武器を構えて睨み立つ。

 静寂は一瞬で破られた。



 ロッドを凄まじい速さで振り回すワース、アリウスがそれを剣で受ける度に激しい金属音が鳴り響く。



「オラぁ! どうした!?」



(コイツ……中々の使い手だ。ロッドの破壊力を地属性魔法で飛躍的に高めつつ、スピードを失わないように絶妙な強化(ライズ)を発動している)



 アリウスは距離をとり、魔法を唱える。



光弾(フォトン)



「んなモンが当たるかよ!」



「!?」



 ワースは素早い動きで至近距離の光弾(フォトン)を回避し、ロッドの打撃をアリウスに直撃させた。



「あ、アリウス君!」



「ぐっ……! ごほっ、ごほっ!」



 吹っ飛ばされたアリウスは口から血を流していた。

 咄嗟に魔力を纏わせて防御したとはいえ、腹部に攻撃がモロに入ったのだ。



「はっ……どうした? もうオネンネか? 言っとくが手加減はなしだぜ、テメェはフザけたことを抜かしすぎた」



「つまらん冗談はよしてもらおうか」



 アリウスは再び立ち上がり剣を構える。






________







 一方その頃の大広間ではあいも変わらず大音量の演奏と共にダンスパーティーが続けられていた。



「よう、我が好敵手(ライバル)。どうだ、今日は女子生徒と踊った人数で勝負というのは?」



 ハルクが陽気な調子で話しかけてくる。

 いつになく上機嫌だ。



「ハルクは何人なんだ?」



「5人だ」



「えっ……」



 失礼ながら、二の句が継げないという状況に陥ってしまった。

 俺はヴェルとローディとしか踊っていない、まさかハルクは意外にもモテる男なのか?

 何かやるせない敗北感を味わい、ショックを受けてしまう。



「アンタどうせユーズを他の女と踊らせないように〜とかくだらないこと考えてたんでしょ」



「い、いや、ユーズはローディとも踊っているし私はそんな心の狭い女ではない……! それにお前こそ何だ? 随分と暇そうにしていたじゃないか」



「ひ、暇ぁ? 私の価値を認めない馬鹿な男しかいないのよここには!!」



 シオンがヴェルに突っかかっていたが、痛いとこを突かれて騒ぎ出す。

 シオンは顔立ちは非常に整っているのだが、普段からキツい態度で知られている上に、その雰囲気をこういうときも全く崩さないせいで男子生徒からロクに誘いがなかったのだ。



「くっ……腹立つわね! ユーズ、アンタ相手しなさいよ!」



「ええっ、何だよ急に……って話聞けって……」



「あっ、おい待て! ユーズも嫌がってるだろう」



 ヤケクソ気味のシオンはユーズの手を強引に引っ張り連れて行った。

 それに対してユーズは先のハルクのこともあってか、押しの弱い嫌がり方をしている。

 反してヴェルは止めようとしていたがシオンからは無視気味である。



「はぁ〜バタバタしてますね、私たちって」



「まぁ、こういうのも悪くない雰囲気だろう。ローディ・アレンシアだったな」



「えっ? は、はい」



 ローディは初めてハルクに話しかけられたように感じる。

 学園に入ってからは何回か会っていたのだが。



「ユーズ、あいつは―不思議なやつだ。何故かやつの周りにはああして面白い連中が自然と集まってくる、もちろん俺もお前も含めてな」



 ギャーギャー騒いでいるユーズとヴェルとシオンを見ながら、ハルクは噛みしめるように呟いた。



「ふふっ……ええ。そうですね、本当に」



 ローディはハルクの言葉を聞くと、急に何だか目の前の騒ぎが微笑ましく感じ、思わず笑みがこぼれた。






________







「オラァ!」



「うぐっ……!」



 クリーンヒット、アリウスはまたその身体を吹き飛ばされた。



「お〜いおい、どうしたんだ? 攻撃もヌルいばかりか避け方も雑になってきてるぜぇ? さっきから4隅にばっか逃げ込むたぁな」



 アリウスは柱のある4方向を中心に移動していたが、動きを完全にワースに読まれていた。

 このままマトモに攻撃を食らい続ければ間違いなく負けるだろう。



「あ、アリウス君……」



(天才と呼ばれてるアリウス君がこんなに追い詰められてるなんて……本当に強いんだ、こいつ)



 フエルはその場から逃げることもせず、かといって手助けをすることもできずにただ目の前の戦いを見つめていた。



「いい加減に飽きてきたぜ。そろそろ、テメェの脳天ぶち抜いてチェックメイトといこうじゃねえか」



「フッ……そいつは無理だな」



 アリウスは血を流して傷を負いながらも不敵な台詞を止めない。

 それを聞いたワースは再び、その怒りが強く再燃した。



「テメェ……自分の立場わかってんのか? あったま来たぜ、完全にぶち殺してやるよ。後悔しても遅いぜ」



 ワースはロッドにこれまで以上の魔力を纏わせた。

 今の破壊力はこの戦いにおいて最強レベルだ。



「何故無理なのか……教えてやるよ。チェックメイトをかけられているのは、貴様だからだ」



 アリウスは魔法を発動した。

 だがそれは通常の魔法とは違う。



『"領域"発動、四柱光陣』



「!?」



 ワースを囲むようにして4本の光の柱が出現した。

 それはさっきまでアリウスが逃げ回っていた4隅の場所それぞれだ。



「何だ!? 何をしやが……ぐわああああ!!」



 4本の柱から光が放たれワースの肉体を包み込む。

 すると光に取り込まれたワースはその内部で、もがき苦しみ始めた。



終わり(チェックメイト)だ。この光に囚われた者はこの俺が解除しない限り、光の魔力でその身を焼かれ続ける」



「ぐああああ!!! なっ、ば、馬鹿なっ! お、俺がこんな……1年にッッ!!!」



 解除された頃にはワースは完全に気を失い、ボロボロの状態で床に伏していた。



(う、ウソ……! ワースが1年生に負けるなんて!? ど、どうなってんのよ……!)



 黒髪の女子生徒はこの場から逃げ出そうとしたが、アリウスに剣を突きつけられて降参する。



「コイツからはもう聞き出せないが、代わりに貴様に聞きたいことが山程ある。怪我をしたくなければ知っていることを正直に話せ」



「はっ…………はいぃ……」



(ぜ、全部あの逃げ方も作戦だったんだ。アリウス君……す、凄い……!)



 アリウスの戦いぶりに思わず感嘆するフエル。

 ブラッククラスの実力者を相手にまさしく天才たる強さを十全に見せつけた。

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